第11話 〜戦闘終結〜
隼人は猿型の異形を良人らに任せて魚頭型の異形と戦っていた。魚頭型の異形は猿型よりも強力だが、隼人の実力ならこの異形をいなすこと位造作も無かった。だがとどめをさすとなると話は別となる。魚頭型の異形は全身が丈夫な鱗で覆われており、有効な攻撃を与えるのは隼人の実力をもってしても難しい。そのため、隼人が魚頭型を足止めしその間に良人と遠藤で猿型を撃破してから3人で魚頭型を倒すという戦略は妥当であった。良人は新人ではあるが実力は十分にある。それに遠藤は隊が違ったがここ1年程は同じ事務所の仲間として戦いその実力は信頼に足るものであった。遠藤レベルの実力であれば新人とはいえ良人のサポートがあれば猿型の異形などすぐに倒せるはずだと隼人は考えていた。だが、2人の様子を伺うとかなり苦戦しており、なかなかこちらの援護に来れないようであった。
隼人は両手に持った2本の剣で魚頭型の異形の喉元を斬りつける。隼人は騎士団の中では珍しい、いわゆる二刀流だ。異形は身体を後退させ、斬撃は異形の顎あたりに当たる。「たく、大人しく斬られてくれよ頼むから」そう愚痴ると隼人は剣に炎を纏わせ、それを振るう。すると炎の斬撃が異形に向っていく。異形はその攻撃を姿勢を下げてかわす。隼人は大きく跳躍して姿勢を下げている異形の頭を炎を纏った剣で上から斬りつける。ガツンという音がなり、異形は顎を地面にぶつける。異形の背中に降り立った隼人は剣を異形のの背中に突き立てようとする。だが異形は地面で身体を横に転がしたため隼人は異形から離れた。「やり辛い」隼人はそう呟く。やはり魚頭型の異形を倒すのには大きな隙きを作らなくてはならない。良人ら2人の助力が必要だ。そう考えていると。「うあーー!!腕が、俺の腕が!」という悲鳴が聞こえてきた。悲鳴がした方に視線を向けると遠藤が猿型の異形に追い詰められ、後退る姿があった。どうやら深手を追っているようだ。(ヤバイ!)焦った隼人は魚頭型の異形に炎の斬撃を連続で放ち、遠藤の方へと向かう。遠藤へと接近しながら猿型の異形に炎の斬撃を放つ。危険を察知した猿型の異形は後方に下がった。良人の姿を探すと離れたところに倒れている。「遠藤大丈夫か!?」猿型の異形を睨みつけながら隼人が問う。だが遠藤は「イヤだイヤだイヤだ!来るなバケモノイヤだ来るな来るな」とうわ言のように呟いているだけだった。非常にまずい状況だ。手負いの遠藤と生きているか分からない良人。この二人を守りながら猿型の異形と魚頭型の異形を隼人1人で相手にしなくてはならない。ひとまず猿型の異形を遠藤らから引き離す必要がある。猿型の異形に炎の斬撃を放ち魚頭型の異形の方へと近付く。猿型の異形は注意を隼人へと移しこちらに向かってくる。猿型の異形の自分の注意が向いたものに執着するという単純な習性は変わっていないようだ。だが遠藤がここまで追い詰められたということはこの異形は普通ではない。おそらくかなり強力な個体だろう。周囲を見ると徐々に異形はその数を減らしており、下手に勝負をかけるよりは他の隊員の援護を待つ方が確実だろう。やることはさっきと変わらない。ちょっと猿が一匹増えただけだ。そう気合いをいれ直す。先に動いたのは魚頭の異形であった。隼人の方へ一直線に進み、その顎で噛みつこうとする。隼人はあえて猿型の異形に近付く。猿型の異形は近付く隼人に横薙ぎの一撃を食らわそうとする。すんでのところで隼人は跳躍し、猿型の背後に回りその背中を斬りつける。隼人の狙い通り猿型の一撃は魚頭にぶつかり、魚頭の異形は吹き飛ばされる。隼人は深追いすることなく、すぐに猿型の異形から離れる。「バカが、同士討ちで死ね」隼人が毒付く。2体の異形は隼人に向き直り甲高く奇声を上げる。どうやら隼人に対し怒っているようだ。「気色悪いケダモノが。キレてんのはこっちだよ。俺の部下をやってくれやがって」隼人は呟く。2体はまた小さく奇声を上げると、2体同時に隼人へと駆け寄っていく。隼人は魚頭型の異形の方から回り込む。猿型の異形は魚頭型の異形のせいで隼人の姿を見失う。苛ついたのか猿型の異形は跳躍して魚頭型の異形を踏み台にして隼人に飛び掛かろうとする。猿型の異形が魚頭の背中から離れた瞬間に炎の斬撃を猿型に放つ。2体共々地面に崩れ落ちる。魚頭型の異形に加え、良人ら2人を追い詰めた猿型を相手にここまでたち振る舞える隼人はさすがである。伊達に前線拠点の事務所長を努めてはいない。隼人の胸に後悔が浮かぶ。(はじめから俺が2体を相手にしていれば...)だがもう遅い。遠藤の腕は戻らないし、良人がもしも死んでいたら生き返ることはない。自分への苛立ちをを織り交ぜながら2体の異形に憎しみの目を向ける。2体の異形は隼人のを睨みつけ隙きを伺っているようだ。その時、何を思ったのか猿型の異形は魚頭型の異形の背後へ近付く。隼人は不審に思い敵の動きを伺っていると。なん猿型の異形は魚頭型の異形の尾を掴み振り回し始めた。そして隼人の方へ近付き魚型の異形で隼人を殴りかかってきた。「そんな無茶苦茶な!!」隼人は後方に下がりかわす。隼人は今まで何度も異形と戦ってきた。戦ってきた中にも魚頭型と猿型のの組み合わせも少なくない。だがこのように仲間を武器のように扱う異形は初めてである。やはりこの猿型の異形は普通ではない。猿型の異形はまた隼人へと襲い掛かる。手にした魚頭の異形を横薙ぎに払う。隼人は上方に大きく跳躍してかわす。猿型の異形は上空にいて、動きの取れない隼人に対して魚型の異形を投げつけてきた。「しまった!」隼人は上方に炎を噴射して落下速度を上げることでなんとか投げられた異形をかわす。落下している隼人に猿型の異形は即座に近付いていく。隼人へと猿型の異形の前脚が迫る。(これはマジでヤバイ..!)
その時、何かが凄い速度で飛んできて猿型の異形に直撃する。剣が異形の腹に突き刺さる。それと同時にバチバチバチッ!雷撃が猿型の異形を包む。どうやら電気の力が込められた剣を誰かが投擲したらしい。「秋風、無事か!」と声をかけながら隊長の巧次が近付く。「俺はなんとか!けど遠藤と良人が!」と隼人は返す。「ああ、分かってる。2人は安村達が対応してる」どうやら周りは戦闘はを終え、続々と隼人達の方へ集まってきていた。隼人が戦っていた異形で最後のようだ。「こいつ普通の猿型よりはるかに強いです!」隼人は巧次に告げる「ああ、そのようだな。仲間の異形を武器にするなんて普通じゃない」と巧次は返す。「秋風!剣を一本貸せ!」どうやら先程剣を投擲したのは巧次のようだ。隼人は自分の剣を1本巧次へと渡す。異形の方へ目を向けると腹に巧次の投げた剣が突き刺さりその周囲に電撃の形をした痣が広がっていた。異形は徐々に集まってくる騎士たちをに視線をを走らせる。すると、ズザー。後ろ脚の掌で地面から土をとり、それを周囲に闇雲に投げ始めた。「くっ目くらましか、強い上に悪知恵が働く!全員気を付けろ!うえっ!ぺっぺっ!」口に入った砂を吐き出しながら巧次は注意喚起をする。だが、その猿型の異形は砂で怯んでる騎士達には目もくれず一目散に逃げ出していた。「な!?」異形は普通逃げることはない。どれだけ傷付こうと人間を前にしたらその人間が確実に生命を停止するか自分が力尽きるまで戦いつづける。だが目の前の異形はその常識から外れ逃げ出している。「逃がすな!」と巧次は叫ぶ。だが異形は既に騎士達からかなり距離が離れている。巧次を始め騎士達は遠距離から攻撃するも不規則に走りながら逃げる異形にはほとんど当たらず、当たっても距離が遠く力を込める時間もなかったので効果が内容だった。
そのまま猿の異形は森へと姿を消していった。




