表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOセンキ  作者: あなたのお母様
第三章 青空へ向かって
100/151

第十七話 残念/無念の暗殺者

なぜかはさっぱりわからないけど、戦闘不能だった敵は、クリアさんがその耳元で何かを囁くとあっさりと蘇生に応じた。


「お前のプレイヤーネームは【Ami inseparable】か。アミとでも呼ぶか?」


首級を確認してからクリアさんは敵の首元に曲剣を突き付けたまま、敵がかぶっていたフードを乱暴に脱がすした。

敵の正体はエルフ族の女性のキャラクターだった。


「嘘だろぉ……ふざけんなよ! ふざけんな……くそお……くそお……ボクらの最強の戦法が負けるなんて……」


(女性キャラなのに、一人称が“ボク”なのか……)


オレはずっと緊張していた。

予想していた敵の正体は“岩窟で出会ったアイツ”のような恐ろしい雰囲気のプレイヤーだと思っていたからだ。

だけど、目の前のこの敵の反応はなんというか――


(――普通のゲームプレイヤーっぽいな。……“常識の範囲内”っていうか……拍子抜けっていうか……)


クリアさんは無言で空に向かって口だけを動かしている。

どうやら誰かに囁いて連絡を入れているみたいだ。


「さてと……座れ。お前の知っていることを全部教えろ」


クリアさんが突然女性キャラクター――アミの足を蹴って転倒させた。


「……………………」


敵は――アミという名前のアサシンは何も答えない。

クリアさんはかすかに笑っていた。

オレは、“逆にそれが怖い”と思った。


「蘇生する前に言ったよな。お前のやっていることは不正行為なんだ。このまま通報されたら最悪、アカウントを止められることになるが――良いのか?」


「ぐぐ――た、大金を積まれて依頼されたんだよ! 『この時間帯に、ここら一帯で寝ている女キャラが一人居る。そいつを連れ去って、追いかけてくる奴らを全員倒した後に山の下に投げ捨てろ』って!」


「誰に依頼された?」


「わっからないよ! 匿名だった! しかもなぜかボクらの戦い方をぜ〜んぶ知っていて、言うことを聞かないなら通報するって――今のアンタがやっているみたいに脅されてたんだよ! ボクは言われた通りにやっただけだい!」


「本当にそれだけか? 他に何か知っていることがあるんじゃないか?」


「……ボ、ボクはこれ以上何も知らないって! 本当だよ! 勘弁してよ!」


「怪しいな。ひょっとすると――脅しが足りないのかもしれない」


「〔あ、あのクリアさん――とりあえずオレ一人で、今からデモンを迎えに行って良いですか?〕」


どんどん話が進んでいるところに割り込むようで申し訳ないけれど、今この瞬間もデモンが雪の上に寝かされていると思うと居ても立っても居られない。


「いや……レット。その必要は無くなったみたいだぞ」


クリアさんが敵の背後を黙って見つめている。

その先には、目を覚ましたデモンが立っていた。


「――――――あ」


間抜けな声が口から出た。

デモンは何も言わない。

ただ黙って、無表情のままオレのことをじっと見つめている。

まるで責められているようで、オレは思わず目を反らしてしまった。


「…………………………………………」


黙り込んでしまう。

一体何を言えば良いんだろう。あれだけ心配は要らないって言ったのに――オレは結局デモンの隣に居られなかった。

オレは今ここで謝るべきなのか――それとも、デモンが無事なことを喜ぶべきなのか――。


「レッ……ト――――――――」


デモンは瞬きもせずにゆっくりとオレに近づいてくる。

そこで気づいた。……デモンが見ているのは、オレの顔じゃない。















「――――――――――その傷…………………………誰がやったの?」


「――え?」


自分の腹部を見た。

当然痛みなんてあるわけないし、体力は戦闘が終わったから完全に回復している。

それでもオレの胴装備は切り裂かれたままで、血の跡がべっとり付いていた。


「あ……いや、これは……」


デモンはインベントリーを開いて――ゆっくり巨大な剣を取り出して、それをずるずると引きずりながら近づいてきた。

視線はオレの前に座っているアミの方に向いている。

クリアさんの、息を飲む音が聞こえた。


(――――――――駄目だ!)


咄嗟に、剣を抜いて駆け出す。

同時にデモンの躰が消えた。









防御のスキルをすべて費やして構えられたオレの二本の剣が、ぎりぎりでデモンの特大剣にぶつかった。


「ぐぅっ……!」


だけど、真正面から受け止められるわけがない。掠るように受け流して、オレはよろめいて地面に倒れた。

金属の音とは思えない鈍い音が響いて、特大剣の軌道がほんの僅かにズレる。


「――――――――っ‼︎」


驚いた表情でデモンが手を放して、特大剣がアミのすぐ横の地面に突き刺さる。

雪が弾け飛んで山の斜面の本来の地面がむき出しになった。


「ひ、ひぃいいっ……げほっげほっ……!」


顔面に跳ねた雪を受けたのか、アミは怯えながらむせている。

オレが倒れこむ前に、デモンが凄まじい速度で逆側からまるで受け止めるように強く抱き着いてきた。


「ごめんなさい………………ごめんなさいレット………………ごめんなさい――――――――ごめんなさい」


「え、えっと……オレは平気だし大丈夫だよ。オレも――デモンの隣にいられなくてごめん」


「レットは悪くない……謝る必要も………ない。でも……あの女が………………レットを怪我させたのが許せなかった……許せなかったの――――――」


オレに抱き着いたままアミを見つめているデモンは、完全に無表情だった。


「な、何なんだよぉコイツ……どういうことだよ怖いよぉ!! 普通じゃないって! たかだかゲームだろぉ!!」


「黙っていろ。お前は少し下がれ」


騒ぐアミの襟を、クリアさんが黙って引っ張ってデモンから距離を置く。


「大丈夫だよデモン。オレは全然平気だよ。心配してくれてありがとう。だから、今は落ち着いて――――――ね?」


オレがその頭を撫でるとデモンは半目開きになって、抱き着く力が弱くなった。


「う………………ん。わかった……」


緊張が解けて、オレは思わず深呼吸した。


(よかった……なんとか落ち着いたみたいだ)


「〔レット、信用していたぜ。あの娘も加減はしていたみたいだが、良く止めてくれた。お前から心配いらないと伝えておいてくれ。おそらくコイツはこれからもっと“怖い目にあう”〕」


クリアさんがアミの襟から乱暴に手を放す。

そのまま座り込んで、何もない空間に呟いた。


「なるほど……お前の名前は現実でも“アミ”だな。女子高に通う三年生で都内の美術系の進学校に通っている。お前の家の近くの公園で、最近酔っぱらいの暴行事件があったろ? 交番の二つ隣の一軒家に住んでいて、庭には赤いウサギの置物がある。最近"一緒にゲームを遊ぶゲームの苦手な恋人"ができた。画面を見ているのはコイツだな」


クリアさんが何を言っているのかを理解して、オレは背筋が寒くなった。

真っ白になっていたアミの顔が、いつの間にか青くなっている。


「ど、どどどどどどどうしてそんなことがわかるのさ! わ……わかるわけない!」


「進学を目指しているのに、喫煙と未成年飲酒をしているみたいだな。もしもお前が普段ゲームでやっていることに加えて、この情報が外部の掲示板に漏れたら大騒ぎになる。オンラインゲームプレイヤーの恨みは怖いんだぞ。他には……個人規模のゲームの攻略サイトの運営をしている。いつも寝る前に更新しているみたいだな。他には……ちょっと前に家族でクルーズ船に乗って旅行したみたいだな。それとお前――ずいぶんかわいい姪っ子が居るみたいな。信頼されているのか、仲が良さそうで何よりだ。おっと――ログアウトしたり回線を抜こうとするなよ。今から逃げようとしても手遅れだ。…………テツヲゴッデスって名前知ってるか? 俺達のチームのリーダーなんだが」


「え……テツヲって……もしかしてあの“悪い方”のテツヲ?…………」


「もう一度最後に聞く。“お前の知っていることを全部教えろ”」


「は、話す! 話すよ! もしも負けたら素直にこの手紙を、『ボクを倒した奴に渡せ』って言われてたんだよ!」


アミはインベントリーから手紙を取り出すとクリアさんに差し出した。


「なぜ、この手紙の事を黙っていた?」


「ボ……ボクは最強なんだぞお……こ、こんなの自分から敗北宣言したみたいで、かっこ悪いじゃんかよぉ……」


クリアさんはため息をつきながら手紙を受け取って内容を確認する。


「〔あの、何て書いてあるんですか?〕」


「……………………………………」


顔を上げたクリアさんはその場から動こうとしない。

視線をアミにずっと向けたまま、黙って手紙を折って紙飛行機にして、オレに向かって飛ばしてきた。

自分の頭にぶつかって地面に落っこちた紙飛行機を開いて、オレは内容を確認する。








『おめでとう。君は障害を打ち倒し絶望的な状況に陥る貴重な機会を得た。さらなる絶望に進みたければ、絶壁から飛び降りろ』










まるで――黒幕から、警告を受けている気分だった。

“油断をするな”と言われているようだった。

何よりもあの黒幕の意思で、敵の襲撃を受けたということは――




(オレ達の行動をどこからか見られているってことなのか? 一対どこから……)


クリアさんが口元に手を当てて考え込んでいる。

きっと、今のオレと同じ疑問を抱いているんだろう。


「――他にお前が知っていることを教えろ」


「これ以上本当に何も知らないよ!!!! 依頼の手紙はすぐに捨てろって言われてたし! あんた達が“あの”テツヲのチームの所属だって知っていたら今頃まだボクたちは【死壊層】に居たよ、こんな依頼は脅されてても受けなかった! あ……あのさ。冗談だよね? 許してくれるよね? 怒らないでよ! ネ? ――ネ?」


「別に――何も怒っていない。怒っていないものに対して許すも許さないもないだろう……」


「ボクどんな情報だって言うよ! 依頼料のゴールドもそのまま渡すって! ボクがPK始めた理由だって、なんだって言うから頼むよ……ちょっと魔がさしただけなんだってぇ!」


「それは現実の飲酒や喫煙についてか? それともゲームの不正についてか?」


「りょ……両方だよっ! うう……ただボクは弱者に対して一方的にマウントを取りたかっただけなんだよぉ……こんなことになるなんて……許してよお……」


「全く……………………許されたければとにかくその余計な一言をやめろ……」


クリアさんはすでに無表情じゃない。

先程とはうって変わって、心底呆れているようだった。


「〔レット。“こいつら”はシロだ。間違いない。本当に『何も知らない普通のゲームプレイヤー』だ。脅威と言えば脅威だが“ゲームプレイの範疇での脅威”だ。集めた個人情報の内容が間違っている可能性もあるからカマをかけてみたんだが、反応から察するに情報は本物で間違いない。そして、もしもあの黒幕に深く携わっていたら、こんなわかりやすい痕跡は残さないだろう〕」


「〔あの個人情報ってどうやって集めたんです?〕」


「〔テツヲさんにSNSアカウントの特定をお願いしたんだ。あの人はそういう“別口の連絡先”見つけるのが得意なんだ。こういう時、うちのチームに所属していると尾ひれがついて脅迫するのも楽だな〕」


「〔いや、普通に怖いしドン引きですよ! テツヲさんって普段からそういうことをやってるんですか!?〕」


「〔特定した情報を悪用することは絶対にしない。チームメイトを傷つけるだけ傷つけて逃げるようなクズ共を追跡して、自爆覚悟の“話し合い”をしにいくんだ。あの人は陰湿なやり口は好まないが、一方的な言われっぱなしは絶対に許さない性格の人でな。だから、相手を土俵に引きずり出しての殴り合いをしたがるわけだ〕」


(ある意味堂々としているけど、冷静に考えたらめっちゃ怖い……)


オレ達がずっと話し合っていたからかもしれない。

謝罪が通じていないと感じたのか、アミの声のトーンがどんどん落ちていってる。


「お願いだよ……持っているアイテムは全部あげるし……GMに通報しても良いから……もう二度と、切断なんてやらないからさぁ……」


「お前をどうするか決めるのは俺じゃない。というか、切断をやるなとも言わないし言えない。それを昔、一番最初にやったのは――俺自身だからな」


「――へ?」


アミが呆けた表情をした――――――って!










「ああもう! どうせそんな理由だと思ったよォ! やっぱりアンタが一番悪いよ!」













「いやいやいやいや! 流石の俺もほとんど悪用していないし、すぐにやめたさ! ネコニャンさんにバレて本気で怒られたからな! 言っておくが昔の無印の頃の話だから、もう時効だぞ!」


「――全く。クリアさんって、『一人だけ別のゲーム遊んでる』ってよく言われたりしませんか?」


オレの質問を受けて、クリアさんは顔を背けて意味深に呟く。


「……色々あったのさ。その昔、どんな手を使ってでも倒したい敵が居たんだ。切断は、かつて俺がそういった敵を倒すために見つけた“手段の内の一つ”だった。例えばそう――――――――当時のチームのメンバーとかな! ワッハッハッハ!」


クリアさんは可笑しそうに笑っている。

何か深い理由があるのかと思って一瞬身構えたオレは、盛大な肩透かしを食らって肩の力が抜けてしまった。


「それって結局裏切る気満々の屑じゃねえか! アンタ昔からやっていること本当に変わってないな!」


俺達のやり取りを見て、アミが肩を落とす。


「ううう……想像以上に、相手が“悪かった”ぁ……」


「二重の意味でな!」


――ドヤ顔やめろ!


「〔全くもう――。それで、クリアさん。このPKはどうするつもりなんです? まさか……集めた情報を掲示板に書き込むなんてやめてくださいよ!!〕」


「〔当たり前だ! こんな脅し方は“状況が状況”だったからだ。得た情報を流して脅すだなんて選択肢はどれだけ恐ろしくて論外なのかは、お前自身が一番よくわかっていることだろ? オレもテツヲさんもSNSのことはきっぱり忘れるさ。コイツの処遇はお前が決めろ〕」


クリアさんに話を振られて、オレは考え込む。

このPKがオレ達を襲った理由は“ただ頼まれたから”で、デモンのことは“何も知らない”となると――


「そうなっちゃうとうーん。特に何もしなくても良いかもですね。回線切断とかはしない方がいいと思いますけどォ……。“やったことある人”が居たおかげで勝てたのも事実だから、オレもあんまり強気になれないっていうか……やっぱりオレ達のチームメンバーの方が遥かにタチが悪いっていうか……」


「――だそうだ。レットが善いプレイヤーでよかったな。せいぜい感謝しろよ」


「ありがとう……ありがとうううう! 最強のボクの戦い方にハマって、散々甚振いたぶられて半べそかいていたはずなのに……キミっていい人なんだな!」


オレの背後からデモンのやたら響く呟きが聞こえてくる。


「無自覚に………………喧嘩――――――売ってる?」


「ひぃいいいいっ!」


デモンの言う通り、アミがオレに対して本当に感謝しているか怪しい。

なんというかこの人、戦っていた時はすごく怖かったのに、いざ喋ると残念なことになるというか……語るに落ちるっていうか……一言余計っていうか――自分から墓穴を掘るタイプの人なのかもしれない……。


「さっきから一言余計なヤツだな。レット、やっぱりこのままコイツの全身に投げナイフを突き刺して、ストロベリージャムにでもするか?」


「怖っ! 殺意こもり過ぎだよ!」


「……ゲームの中で済むだけマシだろう。若気の至りっていうのは誰でもあるものだからSNSのアカウントは見逃すが、悪用されると危ないから後でちゃんと全部消しておけよ」


そう言ってクリアさんが懐から取り出した見覚えのあるアイテムは、木材をまとめる時に使うしめ縄だった。

右腕のカッターナイフみたいに飛び出している刃はそのままに、クリアさんがしめ縄でアミの両腕を縛る。


「さて、レットはお前を許したがそれはそれ、これはこれだ。レット、こいつをパーティに誘ってくれ。このまま一緒に山を登ろう」


「え゛っ!? クリアさん、“コレ”を連れていくつもりですか?」


「コレって何さ! この“クソ餓鬼くん”、さり気にひどいよっ!」


「……今の発言で“お互い様”になったぞ。とにかく、一緒に来てもらう。朝は温泉に入る予定だったから、専用の水着を持ってきていたのに――コイツのせいで無駄になったからな。最低限、役には立ってもらうさ」


そう呟いて、クリアさんは緑色のブーメランパンツを取り出して人差し指を軸にくるくると回した。

……きわどい水着だけど――何故かすごく似合っているような気がする。


「“役に立ってもらう”って、手を縛っている状態でどう役に立つんです?」


オレの疑問に対して、クリアさんが邪悪な笑みを浮かべる。


「――コイツの“恋人”がいざって時、俺達の役に立つかもしれない」


なんだろう……嫌な予感しかしない。










「〔すみません! レットさんのお姿が見えないのですが! 今、一体どちらにいらっしゃるのですか!?〕」


丁度良いタイミングで、タナカさんが起きてきた。










それからしばらくして――

上から降りてきたタナカさんに事情を説明した後に、リーダーになっていたオレが新しい仲間を改めてパーティに追加する。

緊張が解けたからか、クリアさんがここぞとばかりにパーティ会話でふざけながら宙に向かってアピールするように手を振っている。


[いえーい! 恋人さん見てるぅ~? 今から君の大事な彼女さんと俺らで――――過酷な山に登っちゃいたいと思いまーす!! よろしくなアミちゃん!]


[妙な縁ですが、同じパーティに入ればどんな経緯があろうと一蓮托生ですからね。短い間ですが、宜しくお願いいたします]


タナカさんが丁寧にお辞儀して――


[……ピース]


――デモンがエモートでポーズをとる。

普段の無表情だから、エモートで作られる笑顔とのギャップがすごい。


(……なんか面白い光景だなあ)


そう思ったオレは、リュクスさんから貰った写真機をなんとなく取り出した。

だけど、タナカさんが写らないように咄嗟に距離を置いてしまった。


[あ、タナカさん。動かないでよ。せっかく写真を撮ろうとしたのに]


[いえ、すみません。私がここに居るとお邪魔になってしまうかと思いまして……]


どうやら、タナカさんはオレがデモンの笑顔を撮ろうと勘違いしたらしい。


[……おいおいレット! アミちゃんとの写真を撮るなら、俺とのツーショットで頼むぜ~!]


クリアさんは、いつまでこの変なノリでいるつもりなんだろう……。


[写真撮るなっ! アミちゃん言うなっ! うう……いっつも二人だけで遊んでいたのに……ボクの運が悪いばっかりにぃ……こんな変な見た目の連中のパーティに入っちゃって、ごめんよぉサクぅ……]


[ばっ……馬鹿お前――恋人の名前をこのパーティ会話で言うヤツがあるか!]


その言葉を聞いたデモンが、ピースを取り下げて無表情で呟いた。


[――名前……覚えた……]


[ひぃいいいっ!]


(なんかもう、色々酷いな……)


こうして、予想外すぎる新メンバーを加えて、オレ達のこの日の山登りが始まった。

――と言ってもタナカさん曰くこの辺りはモンスターが少ないらしい。

怪しげなトラップが置いてあるような場所も無いみたいで何事も無く山の斜面を登っていく。


[アミちゃんアミちゃん言われるの癪だから、ボクから説明するけどさ。Ami inseparableって名前にはね――]


こっちから聞いても居ないのに、アミがパーティ会話で突然話し始めた。


[表記がちょっと違うけど――“おフランス語”で“切っても切れない関係”って意味が込められているんだっ]


おフランス語って何なんだろう……。

一番後ろを歩くクリアさんのため息が聞こえてくる。


[お……………………お前な……実際にやっていることは“回線切断して即戻して”なんだが……。お前のその名前は“上手いこと言ったつもり”なのか?]


[ボク達二人の愛は本物だってことを証明したくて付けたんだ。ボクの恋人は、今この瞬間もずっと画面の前で正座で待機してくれてるんだよ!]


[……いやいや、シュールすぎるでしょ! 何で二人で一緒にゲームを遊ばないのさ!?]


[ボクの恋人ってゲームに疎くってさ~。でもボクはボクでずっとゲームやってたいじゃん? だから一緒に遊ぶ方法が何も思い浮かばなくてぇ。この遊び方になったんだ。本当に申し訳ないと思ってるんけど。ボクが現実であまりにも可愛いから、こういうこともついつい許されちゃうんだよね~」


この人……物凄くわがままだな。

そこは恋人に合わせろよ……。


[なるほどな。ひょっとして、“切断の有用性”に気づいたのはその恋人の方なのか?]


[その通り! 不正行為だっていうのは教えていなくて、ボク今までずっと黙ってたんだけどね~]


[大丈夫なのですか? ログアウトをした後、恋人さんに怒られてしまうのではないでしょうか?]


[もう切断はさせてくれないだろうけど、きっと許してくれるよ。ボクの恋人はとっても賢い優等生なんだけど、そんな頭脳をもってしてもボクのかわいらしさには抗えなかったっていう、漫然とした事実があるわけだし……やれやれってところかな~]


話を聞けば聞くほど、反省の色が見られないというか……あまりにも開き直っていてなんか……逆に感心してしまう。


[レット――お前よくコイツの攻撃に長時間耐えれたよな。俺なんてもう話を聞いているだけでダウンしそうだ。やっぱりこのまま簀巻すまきにして、崖からつき落とすか?]


[か、勘弁してよぉ。こんな一方的なPKをしていたのには一応別に理由もあるんだって! 実は――離婚した両親のヨリを取り戻したかったんだよ……]


オレはビックリした。

突然明らかになった重い理由に、パーティメンバーの全員が黙り込んでしまった。


[ボクの両親ずっと不仲だったんだけど、このゲームのおかげで最近とっても仲が良かったんだ。二人とも夫婦仲の“間を取れる良いゲームだ”って感謝しててキャラの名前もそっから取ってたくらいなのに――超悪いPKに無防備な所を襲われて……その時持ってた有り金全部持ってかれちゃって――それが原因で喧嘩して離婚しちゃったんだよぉおおおお!!]


[それは――――流石に…………可哀想]


[事情を知らぬ身とはいえ、有り金を全て持っていくとは……世の中には血も涙もない人間が居るものですね……]


オレもPKには襲われてばっかりだからなあ。

話の前提がおかしい気がするけど、ちょっと同情してしまう。


[だからボク、ゴールド目当てで二人組でPKを始めたんだよ。ついでに課金してそれっぽく名前を変えたんだ! ボクの両親が離婚したっていうジンクスを打ち破るためにね! 今回の依頼で、丁度目標の960万ゴールドに到達する予定だったんだけどな~……]


(相当な金額を持っていかれたんだなあ……)


偶然だろうけど、それは聞き覚えのある金額だ。

だからこそ、大金なのは今のオレにもよく分かる。


[960万――――ん? 待てよ? “夫婦仲の間を取れる”……間を取れる……まぁとれる……………………]


[クリアさん。何をブツブツ言ってるんです?]


[――え!? い、いや……な、なんでもない。気にするなレット!]


この人が気にするなという時は大体の場合は“気にしたほうが正解”なんだけど、疲れているせいかいまいち頭が回らない。


[はぁ……ずーっとお金を稼げてたのに今後切断できなくなるのは心底嫌だよぉ……。せっかく手に入れた最強の戦い方なのに……手間かけて強くなりたくないぃ……楽して無双してお金稼ぎたいぃ……]


[その気持ちはちょっとはわかるけどさぁ、少しは反省しろよォ!! 真面目にゲームをやっている人だって沢山居るんだからさ!」


[でもでもだってぇ、オブラートに包むとさ。“今のご時世”に真面目にゲーム入れ込むなんて馬鹿のやることだよ? だってたかがゲームじゃん? ゲームの強さに、信念なんて必要ないんだって。必要なのは他人を見下してやりたいっていう自己顕示欲とか、妬みとか、恨みとか、そういう後ろ向きの暗ぁい感情でしょ?]


アミはあっけらかんとした表情で言い放った。


[そ、そうかなあ? そんなぶっちゃけた言い方って、無いと思うけどォ……]


答えに詰まって、助けを求めるように振り返ってクリアさんを見つめる。

だけど、クリアさんはバツの悪そうな表情でオレから顔を背けた。


[……………………少なくとも俺は、何かを言い返せるような立派な立場じゃないな。ま――そういう立ち位置に居るからこそ、俺は前向きにゲーム遊んでいるような馬鹿が好きなんだけど]


[え、何~? ひょっとしてゲームにあり得ない理想とか抱いちゃう系の人なの? テツヲのチームの所属のくせに?]


[勘違いするなよ。俺がそんな純粋な人間なわけないだろう。そんなことより、お前はもっともっと自分の素行について反省をするべきだ。ゲームのことは何も言えないが、個人情報を濫りに外に出すのは――]


クリアさんの長ったらしい説教が始まる。

戦いが終わってからしばらく経って、張りつめていた緊張感が緩んでいってしまっているからかどんどん疲れが出てくる。

オレを心配してくれたのか、隣で歩いているデモンが小声で囁いてきた。


「(――レット。大丈夫? ……疲れていない?)」


「(心配ないよ。デモンの方こそ大丈夫? オレのせいで攫われちゃって――寒くなかった?)」


そうだ。オレは大丈夫。

――疲れを感じている役に立てていないどころか、デモンが攫われたのはオレ自身のミスだった。

もう少しオレがしっかりしていればこんなことにはならないで済んだかもしれない。

結局、いつも肝心なところはクリアさんに頼ってばかりだ。


自分自身の不甲斐なさにイライラして思わず唇を噛んでしまう。


「(……私は、平気。でも一つ気になることが――あるの)」


「(ひょっとして、何か思い出したの!?)」


デモンの返事は、オレが期待していたものとは全く違った。












「(……違う。レットの戦い方って――誰に教わったの? ――“普通じゃない”)」


「(え――どういうこと?)」


「(さっき、私が間違って攻撃した時に気づいたの……。手加減したとはいえ私の攻撃を――レットのレベルで受け流せるわけがない。あのPKの攻撃だって――耐えられるはずがない。それに――私が初めて目を覚まして、戦っているレットを見た時も……思い返してみると――やっぱり普通じゃない)」


「(そ、それは――多分教えてくれたクリアさんが凄いんだよ。ずっとつきっきりだったし、教え方も丁寧だったし、自分の身を守るためのオレに最適な技術だって言ってたし!)」


デモンの表情はどこか暗い。

オレの技術を、褒めてくれるような雰囲気じゃなかった。


「(それも――違う。多分……レットのそれは、“守るための技術じゃない”……私――貴方に攻撃を受け流された後に、そのまま倒されるんじゃないかと思った)」


「(そんな! オレがデモンを攻撃するわけがないし――システム的に不可能だよ!)」


「(レットのことは……心の底から信じているし不可能なのも――頭でわかっている。でも、戦い方に隙が無さすぎて、そう感じてしまったの。多分――――レットの戦い方には“続きがある”)」


頭の中で、ハイダニアでの光景が浮かぶ。

そういえば――何度も攻撃を教えてほしいと言ったのに、クリアさんは頑として首を縦に振らなかった。


「(私自身、自分の戦い方が酷いって……自覚はある。でも、レットの戦い方は……それよりもよっぽど酷くて怖い。レットの戦い方は――――周囲の暴力に耐えて耐えて耐え続けて……………………何の躊躇も無く、憎しみを込めて――――無防備になった相手を、一方的に殺すための――技術……………………なのかも)」


「(それって――)」











「〔話したいことを話して、ようやく静かになったな〕」


突然クリアさんから囁かれて、思わず飛び上がりそうになった。

クリアさんの説教はいつの間にか終わっていて、アミは不貞腐れてすっかり黙り込んでいた。


「〔この女、SNSの情報からすると現実でもこの話し方をしているようだ。現実に一人称が"ボク"っていう女はなあ。……偏見かもしれないが、家庭環境が相当歪なのかもしれない。――そもそもこんな戦い方を躊躇なく平気でできてしまう時点で、まともじゃないがわけだが〕」


「〔そう――ですね〕」


『まともじゃない』


クリアさんのその言葉が、オレの頭の中で反響している。

わからないけど、でも――何故か聞いてはいけない気がする。





















(クリアさん。あなたは一体、オレに何を教えたんですか?)

【冷感、温感】

しかし、冷静に考えると外部から個人の脳内の体感温度を弄ることができているわけであり、とても恐ろしい話である。

本作のVR技術はブレイクスルーの発生と共に軍用に転用されているようだが、どのような使い方をされているのか――それは定かではない。


「雪山で滑らない話。暖房を効かせすぎて、雪山で熱中症になったお話」





【今後確実に役に立たないであろう。テツヲのアミに対する個人情報調査結果】


『確実に何の役にも立たないだろうが一応、人目に付かないような場所に記録を残しておく。テツヲさんが調べてくれたアミに関する情報は以下の通りだ。性格が歪で、自己顕示欲がやたら強いのか何なのかは定かではないが……これらは全てSNSの"自動発言システムからの質問に対する返答"だったらしい。つまり、彼女は“誰にも興味を持たれておらず、質問されていないのに自分語りを延々続けていた”ことになる。興味を持たれていなかったのはある意味不幸中の幸いだろう。彼女がゲーム内で目立たないアサシンをソロでやっていたのも運が良かった。それにしても、こんなしょうもない情報をテツヲさんが真顔で調べ続けていたという事実に驚きだ……。頼んだ身として、申し訳なくなってくる……』


≪え、ボクのことについて知りたいの? 生活環境全般?

ニートだと思われても仕方ないような雑な生活環境かもだけど、かわいいから許されるでしょ?

趣味は食い倒れと一人旅。家事は得意じゃないけど、炊事だけはちゃんとできるよ。

どっちかと言えば包丁よりカッターナイフの方が使い慣れてるかも、ゲージュツ家だし(笑)


実際にやると結構辛いけど、その気になれば3日は寝なくても大丈夫。ボク若いからね~。


美味しいごはんとか食べに出かけたり一人で旅行や観光に行ったりをよくしてるから休日限定でアウトドア派かな。

部屋にこもってゲームするのも好きだけどね。

今住んでいる部屋にはVRの機材以外は昔のゲームしか置いていないや。カセットが刺さったままの遥か昔のゲーム機が放置されているけどこれはまあご愛敬ってことで。今の部屋は定期的に綺麗にはしてるけど、それ以上にスナック菓子の袋とか通販の段ボールやら散らかってていつも恋人に掃除してもらってる~。

取るのに手間がかかったけど、パスポート自体はちゃんと持っているよ。

使っている携帯端末は最新型、大体外で音楽聴いたりネットを閲覧する時に使うんだ。


中学生の頃から花粉症を患ってるから、毎年五月頃から目の痒みの症状が現れるのがしんどいよ。

嫌いなことは……通話越しに、延々咀嚼音を聞かされることかな。


ストレス解消?

水に濡らしたタオルあるじゃん。あれを電子レンジに入れて温めてる。

んで、寝ながらそれを顔にかけるとぼわーっとなって目の疲れとか頭の疲れがばーっと取れるのでよくやっているよ。

ゲーマーだからね。眼は大事~。


他人のパーマやりすぎてるのは嫌いで内心見下しちゃうけど、ちょっとしたアクセント程度なら認めてあげてるかな。

あ、でも自分がやる場合は髪にダメージ与えるから論外~。


ぶっちゃけ、髪は寝癖がひどいことがあるから酷い時は父親のハードなジェルをちょっと使って固めていることがあるんだよね。

身だしなみは上下で柄物を合わせないこととか、同じ色にしないように気を付けてるかな。

暑がりだから、夏は家の中だといっつもタンクトップ着てたりするよ。冬は暖房かけながら半袖で過ごしてるかな。何やるにしても楽なのが一番。


上着とかを着た時に、首元からチラっと赤いTシャツが見えるとセクシーさを感じちゃうじゃん?

だから春前の季節だと特にシャツは赤を選びがちかな。


好きな食べ物は白身魚の刺身、サーロインステーキ、ヒレカツ、和風以外のスパゲティ全般、鶏の水炊き、バリカタの豚骨ラーメン、パンケーキ、生ハム、プラム、上ミノ、海老のアヒージョ、抹茶大福、生牡蠣、鰻重、ユッケ、中華粥、白子、くるみパン、ゴルゴンゾーラチーズ、お中元で届くハムとかウインナー、ポテトフライ、ミルクレープ、五穀米、トスカーナ産のサラミ、タルタルステーキ、田舎風パテ、カルパッチョ、寿司、松茸、白玉団子、土瓶蒸し、仔羊肉のロースト、チャンジャ、鰹のタタキ、フルーツのタルト、天麩羅になめろう。

焼肉で最初に頼むのは上塩タンで、好きなおにぎりの具は紅鮭と紀州梅。

寿司の時はガリを口直しに食べているよ。〆は、赤だしを飲みながらコハダを頼むかな。

卵はカチカチだとモッサリに感じるので割っても液が出ない程度の半熟が好きだね。

毎日食べるなら……特段好きってわけじゃないけど、しじみ汁がいいな~。


乙女ゲームのキャラの影響かな? こたつに潜った状態で食べるカップのアイス最高って感じ。

モナカはつぶあん派だよ。皮付きを食べているとちゃんと「小豆」を食ってるんだと実感出来るからね。そういうの大事でしょ。

こしあんは嫌いだな~。

よく分からないペースト状の謎物質を口の中に放っているみたいにみたいに錯覚して、途中で何を自分が食べているのとか見失っちゃうんだよね。


ファストフードのポテトは、フードコート限定品のフライドポテトが味とコスパ共に最高だと信じて疑ってないよ。


食べても太らない便利体質だからコンビニの商品の原材料とかカロリーの情報などはいちいち見たりしないかな。若さって素晴らしいよね~。


好きな飲みものはコーラ、紅茶、エスプレッソ、グァバのジュース、果汁100%葡萄ジュース、後は……ビール、和酒に、シードル、バーボン、杏露酒、マリブミルク、でへへ~。

ホットミルク? プレーンでは飲みたくないな~。蜂蜜かけて飲んだら美味しかったけど今はあまり飲んではいないかな。

コーヒーはブラックに砂糖を入れちゃう派だよ。

ただミルクを入れずに飲み続けると尿路結石を起こしやすいって恋人に聞いてビビっちゃったんだよね。あれで痛がっている動画とかヤバいよ!

好きなことばは『気炎万丈と酔生夢死』かな。

ボク全力とか出さないでも好かれちゃうしね~。努力が必要で頑張っちゃう人って、すごいよねほんとにね~。


贅沢な時間の使い方? 時間に追われないで、自分の好きな事を一日中楽しむことかな。

最近だとVRゲームで必死になっている相手にマウント取るとか。やり方は秘密だけど♪

そういう意味だと念入りにスケジュールを立てて映画館とかレストランに行くのも一日中部屋にひきこもってゲームをするのもどちらも同じように時間を贅沢に使っていることになるのかもね~(しみじみ)。


ネットで滅茶苦茶煽られた時? 煽られないように常に勝てばいいんだよ。

その後は心の中で中指立ててすっきりして寝ると最高なんだよね。

煽り耐性? 低いって自覚はあるよ。煽られるとつい乗っちゃうんだよね。

ボクの母親も煽られると怒るから遺伝なのかも(笑)。


自分を菓子に例えるとぉ……クロカンブッシュってとこかな? しつこすぎるほど甘くって、そしてドロッドロとした自らの濃い「中」の部分を~外から見られまいといびつに成形した「外部分」で身を隠してぇ~、それを繰り返し次第にそびえ立つほど高く積み上がったものって感じで!

それがボクという至高の存在なんだよね。しかも究極的においしいし完ぺきって感じ。


今欲しいもの?

ちょっとVRMMOを出力する関係でゲーミングモニター無いと色々厳しいんだよね…。だから大きいモニター欲しい… 。

後はクルーザーとかかな!


好きな音楽はゲームのサントラやフリー音楽かな。

グループでカラオケに行った時はアニソンとか歌うよ普通に。あ、でもアニソンはアニメ映像が流れるようなのじゃないと歌う気になれないや。

以前アニメのOP歌ってたらゴリラの映像が流れてきて萎えちゃってさ~。


お勧めするアニメ? 数え切れないほどあるし。

あ、でもアニメ好きな男はぶっちゃけキモイと思うな。

特に最近流行っているVRMMOのアニメとか、実際にやっている身からすればああいうのが好きな男とか馬鹿馬鹿しくてホントに笑えちゃうんだよね~。現実見ろっていうか、妄想必死すぎっていうか(笑)。 戦隊魔法少女もの? 好きなのはいっつも大体青かな~。

好きな番組や本は……ありすぎてオーバーフロー起こすかも。今は特に雑誌等は買っていないんだけどね。


生まれて初めて買った単行本漫画は風のティンクルの漫画の第7巻かな。

昔は紙の週刊誌を毎月買ってたけど、あまりにも溜め込みすぎて部屋の4分の1程占めてしまって怒られてから買ってないよ。


好きなブランドはエルメウス――いやそれはブランド物だしね~。まあ、他に知らないんだけどね~。

好きな異性のタイプは『裏切らない人』かなあ。何事も円満なのが一番って感じ。

最近周囲のおばさんから若さを羨ましがられるんだよね。

歳取ると、むしろ好きな人が出来ていないという事そのものを恥じるようになるらしいよ。大変だよね~。

ちなみに異性に対してはアタックせずにアタックさせる派かな。今の恋人も向こうから来たしね。

もしもデートするなら動物園より水族館がいいかな。動物園と違って水族館は天候に左右されないし。臭くないし。その上ヒールを気にする必要もないし。

気温や湿度も関係ないからね。恋人の全力の勝負服を見られるチャンスがある絶好のデートスポットでしょ。

え? ボク自身は何着ても常に完ぺきな勝負服みたいなもんだし~。


アルバイト? プールの監視員のバイトやってたことあるよ。笛吹くのぎりぎりまで遅らせるの楽しかった(笑)。

好きな髪型? あえて言うならエアインテークかな。シンプルなロングとかショートとかも良いけどね。


腕時計? ボクはむしろ付け慣れてるせいで些細な用事で外行くときでも付けてないと不安に感じるかな。バイタルわかるヤツね。


リストバンド? いっつも左腕に巻いてるよ。

理由なんて、なんだっていいじゃん。


乙女ゲーやっていてゲーム性のあるやつが好きなんだけど、ゲーム部分に力入り過ぎて登場人物がどうでもよくなるゲームもたまに出会うんだよね。

よく地元で遊ぶよ。マイブームは中学の制服着て出身校周辺を平日の昼に何食わぬ顔してぶらぶらすることだね。

今一番行きたいところはモルディブが良いな。


Q.SNSのフォロワーと仲良くなりたい?

A.フォロワーとは全員と仲良くなりたいとは思っているよ、しょうもないbot引用してくるヤツは内心めんどくさいからパスー。


Q.SNSのアイコンはどこで手に入れた?

A.SNSのアイコン? 自分で描いたんだよ。本物ほどじゃないけど可愛くかけてるでしょ?


Q.推しのアイドルは?

A.ここに居るボクかな。

 

Q.今、興味があることは?

A.うーん『今のアカウント消してボクという存在ごと抹消した後に他人のフリしたアカウントを作ってボクかバレるかバレないかを試すこと』かな。

ボクカリスマあるからね~ギャンブルになるよね!


Q.大人になるとはどういうこと?

A.クラスにキモイアニオタが居るんだけどある日を境にそのアニメのヒロインは主人公に惚れてるだけでソイツ自身に惚れてるわけじゃないって気付いて発狂してたんだよね。大人になるってそういうことなんじゃない? 

ま、ボクは現実でもモテるから関係ないけどさ(笑)。


『ボク流カルボナーラの作り方』

フライパンにオリーブオイルを入れて火にかける(あ、弱火ね)。

バターを入れてそれが溶けたら厚切りにしたベーコンを入れます。

にんにくをみじん切りにして1、2かけらを入れます。

ベーコンがカリカリになったことを確認したらオリーブオイルと、それと同じ量の白ワインを入れて煮込んでアルコールを飛ばしてね。

茹でたパスタを投入し、よ~く馴染ませてからボールの中に卵黄と牛乳を入れてよくかき混ぜて、そこにパルメザンチーズをばばーっと振りかけておく。

最後にそのボールにソースとよく和えたパスタを投入し、卵が熱で固まらないように素早く混ぜれば完成~。


――っていうのをよくボクの恋人がやってるらしいよ(笑)。≫












「〔クリア、気づいたんやが。コイツ。ひょっとして、敵やないんやないか? あんまこういうこと。言いたかないが。こいつは。そっとしておいてやれや〕」


「〔いや……テツヲさんこれだけ調べて今更気づいたんですか!〕」


「〔とにかく、そっとしておいてやれや。なんなんやこの女……。個人情報だらけや。ネットで玩具にされたら。絶対、ヤバいタイプやで〕」


「〔……わかりました。俺も自分からは極力関わりたいとは思いません。大事おおごとになる前に、彼女のアカウントはこのまま消えて正解だと思います……〕」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「どうせそんな理由だと思った」――レット君と読者の思いが完全に一致するシーンですね。クリアさん、アンタ…… キャラクターとしては凄まじく惹きつけられます。ええ、キャラクターとしては。 リア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ