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小さな巨人の魔法使い~最強魔法は全長数十メートルの物理攻撃!~  作者: 十一屋 翠


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第8話 新人冒険者爆走する

「おはようレインちゃん!」


「おはようございますミーニさん!」


 翌朝もミーニはレインの家で目を覚ました。

 というのもレインがたった一泊ではお礼した事にならないとダダをこねたからだ。


「ミーニさんは町で暮らした事はないのでしょう? だったら町に慣れるまではウチに居た方が良いです。一人暮らしを始めたばかりの頃程悪い人が寄って来やすいってお父さんも言っていましたから!」


 こう言われては素直に育ってきたミーニも思わずうなずいてしまう。


「レインちゃんがそう言うなら」


 といういきさつがあって、ミーニはレインの家に厄介になり続けていた。


「今日はどうするんですか?」


「冒険者になれたし、お金を稼ぐ為にも依頼を受けるよ!」


「頑張ってくださいね! ミーニさんのランクが上がったら是非ウチの店の護衛依頼を受けてください!」


「うん、任せて!」


 護衛依頼を受けるにはある程度の信用が必要な為、鉄ランクからしか受ける事は出来ない。

 ただミーニは準鉄ランクなので信用が必要な依頼は冒険者ギルドの許可が無いと受けられないのだ。


 ◆


「うわー、凄い人」


 冒険者ギルドにやってくると、無数の冒険者達がフロアの一角に殺到していた。


「あらアンタ、また来たって事は本気で冒険者としてやっていくことにしたのね」


 声のした方向に視線を向けると、昨日出会った女冒険者の姿があった。


「あっ、おはようございます。昨日はありがとうございました」


「気にしなくていいわよ。それよりも依頼を受けるなら早く行かないと良い依頼を取られちゃうわよ」


「あっ、あれって依頼を受けてたんですね」


「そんな事も知らなかったの? 依頼は朝一であそこに張られるから、割の良い依頼は早い者勝ちなのよ」


「なるほどー、でも今日は割の良い依頼よりも確実に成功できる依頼を受けようと思ってるんです」


「あら良い心がけね。新人はとにかく金を稼ごうとして報酬の高い依頼を中身もよく見ずに受けるから酷い目に遭うのよね。でもね」


 と女冒険者はニヤリと猫のような眼差しを向ける。


「割の良い依頼の中にはね、信頼できる依頼も含まれてるのよ」


「信頼ですか?」


 女冒険者の意図が分からずミーニは首を傾げる。


「そう、依頼の中には詐欺まがいの依頼も多いわ。そんな中で悪質な依頼を見抜いて信頼できる依頼を探すのも冒険者の実力よ。今あそこで争奪戦をしてる連中の中には、多少安くても信用できる依頼を探してる連中だっているわ。つまり早く行かないとまともな依頼が無くなって禄でもない依頼だけになっちゃうわよ」


「成る程!」


 これにはミーニも目からウロコだった。

 割の良い依頼だけでなく、信用できる依頼も奪い合いの対象になるのかと。


(言われてみればその通りだよね。誰だって安心できる仕事をしたいもん)


「教えてくれてありがとうございます! それで質問なんですけど、信頼できる仕事ってどんな仕事ですか?」


「……くくくっ、正直じゃない。でも、タダで情報が手に入ると思わない方が良いわ。そうね。酒の一杯でも奢って貰おうかしら?」


「え!? こんな朝から飲むんですか!?」


「……酒代を寄こせって事よ。特別に一杯分で良いわ」


「一杯分って……いくらですか?」


「……本気で言ってる?」


「はい」


 女冒険者はミーニが酒の値段も分からないのかと目を丸くする。


「はぁ……ホント騙されても知らないわよ。安酒なら銅貨2枚ってところね。情報収集するなら相場は覚えておいた方が良いわ」


「分かりました!」


「……」


 ミーニが銅貨を二枚差し出すと、女冒険者はますます以って呆れた顔になる。

 それもその筈、安酒の値段は銅貨1枚だからだ。


「確実に信用できる依頼は依頼主が冒険者ギルドになっているものね。次にその町で商売をしている店からの依頼。ただし店の評判をあらかじめ知っておくこと。依頼の詳細を聞く場所が店以外の場所の場合はニセモノか後ろ暗いウラがある可能性があるからやめておきなさい。他には貴族からの依頼もお勧めしないわね。受けるにしても顔見知りで信用できる貴族か領民から人気がある貴族の依頼だけにしておきなさい。で、最期に……」


 一息にまくし立てるように教えたのち、女冒険者はこれこそが一番大事とばかりに言葉をタメる。


「酒の値段くらいは店で調べておきなさい」


 それだけ告げると女冒険者は大きく溜息を吐いて去って行った。


「はわー、色々教えてくれていい人だったなぁ」


 が、当の本人には微妙に警告が通じていなかったりする。


「よし、せっかく教えて貰ったんだから私も依頼を探しに行こっと!」


 無数の荒くれ者達が押しのけ合っている場にミーニは躊躇うことなく突っ込む。

 その光景を見た冒険者が慌てて止めようとするが、間に合わずミーニは飛び込んでゆく。

 直後、もみ合っている男の肘が勢いよくミーニに叩きつけられた!


「すいませーん、私も見まーす!」


 が、成人男性の鍛えられた腕がぶつかったにも関わらず、ミーニは全く痛がる様子も見られずに人の波を潜ってゆく。


「痛ってー、何だ今の?」


 逆にミーニに肘をぶつけた男の方が痛がっていた。

 明らかに体格も体重も上の男達の中をミーニは進む。

 まるで重量級の岩が進んでいるかのような安定感で。


「よっと、やっと前に出られたよ」


 依頼が張りつけられたボードを見ながらミーニはどんな依頼を受けようかと考える。


「確か長老が人間社会で働くときはいろんな仕事を見ろって言ってたっけ。仕事の種類、給料と相場、あと働いている人達は不満をもってないかって。それが分かればそこが良い町か分かるって」


 だが町にやって来たばかりのミーニはこの基準がまだなかった。


「そう考えると冒険者っていろんな仕事が出来るからうってつけだよね!」


 張り付けられた依頼を上から下まで流して見る。


「えっと、上の方は高ランクの冒険者が条件になってるからそもそも無理だよね。あと鉄ランクも私は準鉄ランクだから受けられないものがあるだろうし……そうなると銅以下のランクの仕事かな」


 条件を満たせず依頼ボードと受付を往復しないように、確実に受ける事が出来る仕事を見定めようとするミーニ。

 その間にも何枚もの依頼用紙がはがされてゆく。


(今剥がされたのは条件が曖昧だったから気にしなくていいや。あっちは報酬は良いけど失敗した時の違約金ってのいうのが高そうだからアレもいらない。やっぱり教えて貰った通り冒険者ギルドからの依頼が良さそう)


 結局、ミーニが選んだのは銅級の薬草採取の依頼だった。


「すみませーん、この依頼を受けたいんですけど」


 依頼用紙を剥がしたミーニは、先日冒険者登録を頼んだ受付嬢の所に持ってゆく。


「はい、薬草採取の依頼ね。採取する際は綺麗に採ってねって、貴方には言うまでもなかったわね。十本一束で受け取るから、キリの良い数字で採って来るといいわ。でも取り過ぎると次に採取可能になるまで時間がかかるから、採り過ぎに注意して。ウチが受け付けるのは一日に五束までよ」


「分かりました!」


「あと、薬草採取は常設依頼っていういつでも募集している依頼だからわざわざ申請しに来なくて良いわ」


「え? そうだったんですか!?」


 依頼の申し込みを完了すると、ミーニは町を飛び出した。

 そして一番近くに見えた森に向かい薬草を探す。

 が、ここで問題が発生する。


「あれ? 薬草が無い」


 なんと森の中には薬草が一本もなかったのだ。


「あっ、そうか。薬草採取は常設依頼なんだもんね。って事は町から近い場所は皆が採取してないんだ! だからもっと離れた所に行かないと! ふんっ!」


 魔法で巨大化するとミーニは森の奥へ向かって駆けだす!

 街道をゆく旅人が驚く声が響いたが、ロムスの仕事が増えるだけなので大した問題ではない。


「ブギャア!」


「グギャア!」


「ギシャアア!」


 森の中を駆けてゆくと魔物達が半狂乱でミーニに襲い掛かってくる。


「うわわっ、何々っ!?」


 急に襲い掛かって来た事に驚いたミーニは反射的に魔物達を吹き飛ばす。


「ビックリしたぁ。この辺りの魔物って随分好戦的なんだなぁ」


 別にそんな事はない。

 寧ろ突然巨大な生物が自分達の縄張りに凄まじい歩幅と速度で飛び込んできたことに驚いて反射的に襲い掛かってしまっただけだ。


「あっ、そういえば狩った魔物は依頼を受けてなくても冒険者ギルドが買い取ってくれるってトマスさんが言ってたっけ。せっかくだし持って帰ろっと」


 ミーニが倒した魔物を腰のポーチに入れるとスルスルと入ってゆく。


「よーし、それじゃあ薬草探しを続けるぞー!」


 その後、突然の侵入者によって幾匹もの罪のない森の魔物達が被害を被ったのは言うまでもない。

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