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ゼロから始める軍神少女  作者:
第一巻:二つの戦場、二人の将軍 (だいいっかん:ふたつのせんじょう、ふたりのしょうぐん)
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偽りの凱歌

将軍の天幕の中は、まるで燃え盛る炎のような熱気に包まれていた。伝令兵が絶えず前線から最新の情報を運び込み、その巨大な地図の上では、味方の勢力を示す青い矢印が、阻むことのできない勢いで敵方の赤い印を一つ、また一つと飲み込んでいく。


「アルヴィン将軍、我々の騎兵は間もなく敵の大本営に突入できるはずです」シミアは指揮杖を掲げ、地図上の敵の野営地と攻城兵器の位置を指し示した。アルヴィン将軍はその細いがこの上なく断固とした指揮杖を見つめ、力強く頷き、その顔には間もなく果たされる復讐への快哉が満ちていた。


「見事だ、小娘! 敵の攻勢を解くだけでなく、一挙に奴らのあの厄介な攻城兵器を破壊できるとは! 痛快だ! 実に痛快だな!」


シミアは指揮杖を下ろし、目の前の地図を丹念に見つめた。


早朝の誘い出しからこの瞬間の側面奇襲まで、全てが……あまりにも順調すぎた。順調すぎて信じられないほどだった。まるで目に見えない手が盤面の向こう側で自分に協力し、全ての駒を最も完璧な位置へと並べてくれているかのようだった。


「小娘、また何を心配している?」アルヴィン将軍の朗らかな笑い声が、彼女を深い思索から引き戻した。


彼女は頷いた。


「どうも、順調すぎるような気がして……時々私が心配しすぎなのは分かっているのですが、でも……」


「結果から見れば、お前の心配の多くは正しかった」アルヴィン将軍の表情が真剣なものになった。「何か思いついたのなら言ってみろ。我々で一緒に考えれば、お前が一人で思い悩むよりずっといい」


「将軍、目の前の敵が……まるで囮のように感じられるのです」シミアの声は少し乾いていた。「彼らはこれほど猛烈な攻城の構えを見せることで、我々が総力を挙げて打って出るように誘い出した。そして……」


「そして?」


「しかし、これほど貴重な主力を囮にするとは、彼らは一体何を企んでいるのでしょうか? この代償はあまりにも大きすぎます……ずっと、それが分からないのです」


シミアは一陣の気落ちを感じた。彼女は自分が真実に限りなく近づいていると感じながら、いつも一枚の目に見えない薄い霧に阻まれているようだった。


まさにその時、一人の伝令兵が猛然と垂れ幕をめくり飛び込んできた。その声には抑えきれない興奮が満ちていた。「将軍にご報告! 我が騎兵、敵陣への突入に成功! 敵の野営地は大火に包まれ、全線が潰走、後方へとなりふり構わず撤退しております!」


アルヴィン将軍の目に瞬時に灼熱の光が爆発した。彼は猛然と振り返り、拳で天幕内の机を重々しく叩いた。


「追え! 全軍に伝えよ! 追撃せよ! 一人も逃すな!」彼はシミアの手をぐいと掴み、有無を言わさず彼女を天幕の外へと連れ出した。「小娘、わしに続け! お前の戦術がいかにして我々に勝利をもたらしたか、その目で見せてやる!」


「はい!」シミアは心中の最後の一筋の不安を努力して振り払い、力強く頷いた。


揺れる馬の背の上で、シミアは全力でアルヴィン将軍のがっしりとした体ににしがみついた。戦馬が疾駆し、狂風が耳元で唸り、周りは味方の兵士たちの興奮した鬨の声で満ちていた。将軍の広い肩越しに、彼女ははっきりと、遠方のかつて敵のものであった野営地が天を突く炎に飲み込まれていくのを見ることができた。


まだ慣れない血の匂いが草木の焦げる匂いと混じり合って鼻腔に流れ込み、彼女は一陣の眩暈を感じた。しかしそれ以上に、采配を振るい千里の先の勝敗を決する、あの陶酔するような満足感が彼女を包んでいた。


「伝令!」アルヴィン将軍は手綱を引き、朗々とした声が戦場に響き渡った。「全軍に伝えよ、その場で陣形を整えよ! 敵の詐術に備えよ!」


角笛の音が鳴り響くと、追撃していた軍は直ちに停止し、再び陣形を整えた。そしてまさにその時、遠方の敵陣から一面の密集した矢の雨が唸りを上げて飛来した。


「盾を構えよ!」


最前列の歩兵たちは直ちに手の中の盾を掲げ、矢の大部分は隙間のない盾の壁に阻まれ、わずかな死傷者を出しただけだった。そして敵軍もまた、この反撃の援護を借りて完全に地平線の彼方へと消え去った。


「見事だ!」アルヴィン将軍は興奮して大声で叫んだ。「各小隊、追撃を止めよ! 戦場を掃討し、周囲を警戒せよ!」


命令を下し終えた後、彼はようやく背後の少女の少し青ざめた顔に気づいた。彼は馬から飛び降り、そしてシミアに手を差し伸べ、彼女を馬の背から抱き下ろした。


「すまんな、少し興奮しすぎた。お前がまだ戦場に慣れていないことに気づかなかった」アルヴィン将軍は少しばつが悪そうに頭を掻きながら言った。


「い……いえ、大丈夫です」シミアは首を振った。彼女の両足はまだ少し震えていたが、心中のあの勝利の喜びが全ての不快感を圧倒していた。「大切なのは、私たちが勝ったということです」


アルヴィン将軍は彼女の興奮でわずかに赤らんだ頬を見て、朗らかに大笑いした。彼は一方の手で馬を引き、もう一方の手でシミアについてくるように合図し、あのまだ黒煙を上げているかつての敵の野営地へと向かった。


……


夕暮れ時、シミアが重い足取りで学生たちの野営地に戻った時、一股の濃厚な焦げ臭い匂いが猛然と彼女の鼻腔を突き、その疲れた精神を瞬時に再び警戒させた。


彼女は焦げ臭い匂いの源に目を向けた――カシウス先生の天幕は、すでに焼け落ちてただ漆黒の骨組みだけが残っていた。


本来なら賑やかな夕食の時間のはずが、野営地は静まり返り、学生たちは三人、五人と集まり、その顔には驚きと不安が満ちていた。


一種の不吉な予感が、まるで冷たい毒蛇のように瞬時に彼女の心臓を締め付けた。


「シミア!」


トリンドルは彼女を見て、急いで人込みの中から飛び出してきた。レインもその後ろに続いていた。二人の顔には、彼女が今まで一度も見たことのない沈痛な表情が浮かんでいた。


シミアの視線は彼らを越え、その後ろの……あの荒れ果てた空き地を見た。


シメルがそこに片膝をついていた。彼女のあのいつもぴかぴかに磨かれている長剣が、今、彼女によって目の前の泥土に深く突き刺され、その柄は主人の抑えきれない怒りによって微かに震えていた。


シメルの手の中には、一本の……


一本の、彼女が見慣れすぎた、シャルがいつも髪に結んでいた、今、暗赤色の血痕に染まった髪留めが固く握りしめられていた。


「シャル……?」


シミアは自分の声がとても遠い場所から聞こえてくるように感じた。あのいつも晴れやかな笑顔を浮かべていた顔が彼女の目の前で一瞬きらめき、随即、水に投じられた墨のように急速に滲み、消えていった。


「これは……カシウスが残した手紙よ」トリンドルの声は泣き声交じりで、彼女は一通のくしゃくしゃに揉まれた手紙をシミアの手に渡した。


シミアは震える手で手紙を受け取った。


手紙の一字一句が、まるで赤く焼けた針のように容赦なく彼女の眼球に突き刺さり、彼女の脳裏に深く刻み込まれていった。


……おめでとう、君自身の初めての勝利を収めたこと……


……君の最も重要な戦略目標は、失われた……


……君がずっと苦心して探していた間諜――つまり、この私、カシウス先生は……


……君は二度と、君が最も大切にしている、あの女中に、会うことはできなくなるだろう……


……これが、師である私が、君に授ける、最後の授業だ……


「ブゥン――」


世界は一瞬にして全ての音を失った。


続いて、無数の光景、無数の声が、まるで決壊した洪水のように、彼女の脳内で狂ったように順序もなく炸裂した!


なぜ彼女の言うことを聞かなかったの? 深夜の王家図書館で、女王ミリエルのあの心配に満ちた瞳はあんなにも真剣だった。「カシウス先生には気をつけなさい」と。なのに私はどう思った? あれは女王が嫉妬からくるいわれのない疑いだなんて。私は本当に救いようのない馬鹿だ。


なぜ彼を信じてしまったの? 歴史の授業の教室で、カシウス先生が私の見事な弁論に拍手を送ってくれた。あの眼差しには称賛と肯定が満ちていた。「君のような知を渇望する学生を持てたことは、私にとっても一種の幸運だ」と。あの「師」からの承認が、私をこの上なく温かく誇らしい気持ちにさせた。しかしそれは、ただ餌を与える時の偽善の微笑みだったなんて。


なぜ彼女の言いつけを忘れてしまったの? 王都の賑やかな街角で、シャルが私の手を引き、あのいつも心配そうな目で私を見ていた。「貴族の世界は……とても残酷なのです」と。私は気をつけると彼女に約束したはずなのに。結果的に私は自らの手で、彼女を最も残酷な深淵へと突き落としてしまった。


なぜあんなにも傲慢だったの? 軍事戦略の授業の後、私は「黄金回廊」の構想を全て打ち明け、カシウス先生のあの称賛と激励の眼差しに酔いしれていた。私は自分が全てを掌握する棋士だと思っていた。しかし、まさか最初から最後まで、自分が手玉に取られた最も愚かな駒だったなんて。


なぜもっと早く気づかなかったの? あのズボンの裾をまくり上げ、笑いながら学生たちのために魚を捕っていた、まるで近所のお兄さんのようなカシウス。あの温和で何のわだかまりもない様子、全てが演技だったなんて。私だ、私が、あの束の間の温情に目を眩まされ、最も致命的な軍事機密を戦利品のように敵に見せびらかしたんだ。


なぜ行動を起こさなかったの? 漆黒の夜、ルルト家のミリエルが自らの危険を顧みず、カシウスの裏での行動を全て話してくれた。なのに私はそれでも彼女の言葉に疑いを抱いた。彼女がかつて私をいじめたから? 違う、彼女が正しいことを言っているのは分かっていた。私は自らカシウスの嫌疑を隠蔽し、私に成長の機会を与えすぎてくれたあの「先生」を見逃してしまったんだ。


なぜ将軍の前で沈黙したの? アルヴィン将軍が間諜の存在を疑った時、なぜ私は最後まで主張しなかったの? なぜ何度も何度もあった機会の中で、あの馬鹿げた慎重さと不確信のせいで、彼を暴き出す可能性を見逃してしまったの?


あの誇りが、まだ心に焼き付いているかのようだ。学院の森で、トリンドルが胸を張り、まるで全世界に宣言するかのように言った。「シミアは、私の運命の騎士よ!」


あの信頼が、まだ耳元で響いているかのようだ。シメルの寮で、彼女が真剣に自分に言った。「あなたの力は私たちを勝利へと導くことができます。どうか心ゆくまで私たちを頼ってください」


あの喜びが、まだ胸の中で高鳴っているかのようだ。アルヴィン将軍の天幕で、彼が自分の肩を叩き、朗らかに大笑いした。「小娘、お前の戦術がいかにして我々に勝利をもたらしたか、その目で見せてやる!」


あの温もりが、まだ舌先に残っているかのようだ。野営地の篝火のそばで、シャルが一杯の熱いスープを差し出し、少し恥ずかしそうに自分に言った。「シミア様、どうぞ、熱いうちにお召し上がりください」


あの安心感が、まだ体を包んでいるかのようだ。あの古びた旅籠で、シャルが背後から自分を固く抱きしめ、その体温で全ての寒さを追い払ってくれた。


違う……そうじゃない……


私だ……


私の傲慢、私の無邪気さ、私の野心、私の幻想、私の独りよがり、私の沈黙が、自らの手で……


トリンドルの期待を打ち砕き、シメルの信頼を裏切り、自らの手でシャルを、私の最も大切な家族を、魔物の手に送ってしまった。


「シミア! 私の話を聞いて!」シメルの焦った声がまるで水の底から聞こえてくるように、ぼんやりと遠かった。「シャルのことは完全に私の油断よ! 私が……私が全力を尽くして彼女を取り戻してみせる!」


シメルの顔の申し訳なさ、トリンドルの目の涙、レインの固く握られた拳……全てが彼女の目の前で歪み、回転し、まるで巨大な暗い渦のようだった。


彼女には何も聞こえなかった。


彼女が感じたのは、ただ目が回るような吐き気を催す眩暈だけだった。


彼女は戦術上の勝利のために、戦略上の全てを犠牲にした。


カシウス先生の言う通りだ。


これが、彼が彼女に授けた、最後の授業。


「私が……あなたを……シャル……」


彼女は口を開いたが、何の声も出なかった。目の前のあの炎に焼かれた野営地が、友人たちの焦った顔と共に、果てしない冷たい暗闇へと落ちていった。


「シミア!」


「シミア?」


「駄目!!!」


仲間たちの驚愕の叫び声の中、シミアの意識は、完全に冷たい海の底へと沈んでいった。

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