指呼の間、玉座前の狩り
玉座の大広間は、重苦しい空気に満ち、水さえも絞り出せそうだった。
コーナは玉座の後方の影に立ち、自らの女王を見つめていた。ミリエルは至上の権力を象徴する華麗な朝服をまとい、冷たい玉座に端座している。しかしコーナには、肘掛けに置かれた、白い手袋をはめたその手が、抑えきれずに微かに震えているのがはっきりと見えた。
(始まる……)コーナの心臓も、喉元までせり上がってくるようだった。
女王の視線が、ゆっくりと階下を掃った。ミゲル・フラッドを筆頭とする南方の領主たちが、恭しく一列に並んでいる。一方、王室の支柱たるべきエグモンド家や、立場が中立の領主たちは、様々な「偶然」が重なり、この極めて重要な集会を欠席していた。
ミリエルは、玉座の冷たさが幾重もの布地を通して、少しずつ自分の体温を蝕んでいくのを感じていた。あの、巨大なプレッシャーから来る、慣れ親しんだ戦慄が、再び全身を駆け巡った。
彼女の目の前に、まるで初めてこの場所に座った時の光景が、再び浮かび上がってくるようだった。あの時の彼女は、階下にいる腹に一物ある群臣たちを前に、恐怖のあまり、まともに話すことさえできなかった。
(駄目……退いては駄目……)
彼女は唇を固く噛み締め、痛みでこの震えを止めようとしたが、効果はほとんどなかった。まさに彼女が恐怖に飲み込まれようとした、その瞬間――
彼女の目の前に、何の前触れもなく、シミアの顔が浮かんだ。
あの、いつもは平静だが、無窮の力を秘めた顔。自分に「あなたのために死ぬことを厭わない」と誓った、自分唯一の騎士。
「シミア……」
自分にしか聞こえない声で、彼女はその人の名を呟いた。
(彼女は遥かな辺境で、私のために血を流して戦っている。私が、ここで、退くわけにはいかない!)
まるで心の底から温かい力が湧き出てくるかのように、瞬時に全ての寒気を吹き飛ばした。ミリエルの体の戦慄は、引き潮のように消え去った。彼女が再び目を開けた時、その銀色の瞳には、君主だけが持つ、絶対的な冷静さだけが宿っていた。
彼女はゆっくりと立ち上がり、今まさに自分を仰ぎ見ている全ての領主たちを、見下ろした。
「本日、領主集会を開いたのは、フラッド家の救駕の功を、表彰するためである」彼女の声は清らかで威厳に満ち、大広間全体に響き渡った。「昨日、フラッド殿が夜を徹して駆けつけた援軍は、ルルト家の反乱軍を撃退し、王宮を危難から救った。王室を代表し、そなたの忠誠に感謝する」
フラッドは、直ちに片膝をつき、その声は朗々としていた。「陛下のお役に立てることは、臣及びフラッド家にとって、至上の栄誉! 臣、万死を以て辞せず!」
ミリエルは歩みを進めた。赤金色の長い絨毯が、彼女の足元に広がり、まるで深淵へと続く華麗な橋のようだった。彼女は一歩、また一歩と、女王と臣下の垣根を象徴する階段を、下りていった。
最終的に、彼女は、一番下の段の上に留まり、居高臨下に、ミゲル・フラッドに向かって、もはや震えることのない手を、差し伸べた。
「そなたの望みを申すがよい、ミゲル・フラッド。私、ミリエル・ローレンスは、いかなる忠実な臣下をも、失望させることはない」
ミゲルの目に、何とも言えぬ衝撃の色が閃いた。彼は、脳内で、この場面を、幾度となく、予行演習してきたが、一度として、ミリエル・ローレンスが、ここまでできたことはなかった――堂々と階段を下り、自ら腕を差し伸べてくるなど。あと一歩で、自分は、あの権力の象徴、あの深紅の絨毯、あの間近に迫った玉座に、足を踏み入れることができるのだ。
彼は、ごくりと唾を飲み込み、わずかに顔を上げ、一種、狂信に近い崇敬の口調で言った。
「女王陛下、臣は、陛下の御偉業のためならば、いかなる代償を払うことも、厭いません! 臣には、華麗な宝物も、肥沃な領地も、美しい女人も、必要ございません。なぜなら、王室の庇護の下、臣は、とうに、全てを手にしているのですから!」
ミリエルは、ミゲルの、その大げさな芝居を、静かに鑑賞しながら、その眼差しの奥で、骨に染みるような、冷たい光を、走らせた。
(そう、あなたは全てを手にしている。この王冠を除いてはね)
「そうは言うが、ミゲル十階領主。功有らば必ず賞す、は、初代国王より一度も違えられたことのない約束。こうしよう。ルルト家の領地は、そなたが、是非とも、受け取るがよい」
ミゲルは、急いで首を振り、誠惶恐恐といった様子を見せた。「いえ! 女王陛下! どうか、これらの土地は、王室がお納めください! 臣は、陛下が、常に、王室領地の税収不足に、お悩みであると、聞き及んでおります。ルルト家の、あのいくつかの肥沃な領地は、ちょうど、陛下の税収の穴を、埋めることができるでしょう!」
彼は、忠心耿々たるふりをして頭を下げたが、その顔にはもはや、勝利へと歩みを進める喜びを隠しきれなかった。続いて、彼は、話の矛先を変え、一種、憂いに満ちた口調で言った。
「ただ、臣は、陛下の御身の安全が、実に、心配でなりません。わずか二日で、王宮の重要な外壁が、陥落したということは、近衛隊の防衛に、巨大な穴があることを、示しております! 臣は、陛下に、懇願いたします。臣の麾下より、最も忠実で、最も戦に長けた将校を数名抽出し、一時的に近衛軍の空席を埋め、さらに王宮の防衛に必要な、いかなる人手も提供することをお許しください。女王陛下、どうか、臣のこの、ささやかな心意気を、お受け取りください!」
コーナは、玉座の後方で、聞いていて、肝を冷やした。これは、どこが「心意気」だ。これは、明らかに、毒蛇の牙を、女王の心臓の、すぐそばに、植え付けようという魂胆ではないか!
女王ミリエルの心中には、冷笑が浮かんだが、その顔には、時宜を得て、驚喜と、感動の表情が、湧き上がった。
(狐が、ついに、尻尾を出したわね)
「ああ……フラッド家は、これほどまでに、忠実であったとは……」彼女は、まるで、その「忠心」に、完全に心を打たれたかのように、声さえも、少し、詰まらせた。「よろしい、ふふ……そなたが、それほどまでに、申すのであれば、わたくしは……そなたの好意を、受け入れよう」
巨大な玉座の大広間の中で、わずか一歩の距離にある二人の顔に、同時に、心の底からの、この上なく晴れやかな笑みが浮かんだ。
一人は、獲物が、間もなく手に入ることに対して、笑う。
一人は、獲物が、ついに、罠にかかったことに対して、笑う。