氷点下の温もり(新しい内容)
薄暗いランプの灯が、二つの、重なり合った、痩せた影を、旅宿のまだらな壁に映し出していた。
湿った木材が黴びる匂いと、ランプが不完全に燃焼する煤の匂いが混じり合い、この、狭い部屋に充満している。骨の髄まで沁みるような冷たい風が、窓の破れた穴から吹き込み、部屋全体の温度を、さらに数度、引き下げた。
「シミア……様……寒い……」
ベッドの上で、少女が、夢の中でも、その寒さを感じ取ったのだろう。彼女は無意識に呟き、その体を、さらに内側へと、固く縮こませた。
その軽やかな寝言に、ベッドの傍らに座っていたシミアは、我に返った。彼女は窓の方向を一瞥すると、二人の、数少ない荷物の中から、一枚の、清潔な古い布切れを取り出し、丁寧に折り畳むと、歩み寄り、あの破れた穴を、きつく、塞いだ。風の音が、ずっと小さくなった。
それを終えた時、彼女自身の体もまた、とうに、冷たい空気に浸透されていた。彼女は、部屋と呼んでいいのかさえ疑わしい、この小さな部屋を見渡した。一つの小さなベッドが、ほとんど全ての空間を占めている。彼女は、無意識のうちに、ポケットの中の、あの、数枚の、孤独な硬貨に触れ、その口元に、一筋の苦渋がよぎった。
――これこそが、彼女たちの、全財産だった。
シミアは、抜き足差し足で、あの、さほど広くはないベッドへと、登った。敷布団は、哀れなほどに薄く、氷のような感触に、彼女は思わず、身震いした。彼女は掛け布団を引き寄せ、自分を固く包もうとしたが、寒気は、依然として、体の下と、二人の間の隙間から、絶えず、染み出してくる。
彼女は、横向きになり、同伴者の、あの、安心して熟睡している顔と、微かに震える、長い睫毛を、見つめた。
「シャル……」彼女は、ほとんど聞こえないほどの声で、その名を、心の中で、繰り返した。これこそが、彼女の唯一の家族。この世界における、彼女の、唯一の温もり。
シミアは、一瞬、躊躇った。随即、もはや迷うことなく、あの、温もりの源へと、寄り添っていき、背後から、そっと、シャルを抱きしめた。
二人の体の間の隙間が埋められ、その温もりが、ようやく、最後の寒気を、追い払った。
彼女は、顔をシャルの首筋に埋めた。鼻腔に満ちるのは、同伴者の体から香る、あの、安心させる匂いだった。この寒気が、彼女に、幾つもの冬を、思い出させた――両親が去っていった、あの冬。前世で、ネットカフェの中で、虚無の栄光を追い求めていた、あの冬。そして、遥かな前世で、両親に見捨てられた、あの冬。
だが、今回だけは、どこか、違うようだった。
眠りの中のシャルが、彼女の震えを感じ取ったのだろう。無意識のうちに、自らの両手で、シミアの、あの冷たい手を、包み込み、覆い被さるように、まるで、自分の全ての温度を、伝えようとするかのように。
この温もりこそが、彼女が、この、氷のように冷たい世界全体と、対抗するための、唯一の武装だった。
窓の外では、風雪が、次第に強まり、王都の輪郭が、夜の色中で、ぼやけて、はっきりとは見えない。だが、この、ただ一つのベッドと、一人の家族しかいない部屋の中で、シミアは、初めて、思った――
おそらく、本当に、生きていけるだろう、と。シャルと一緒に、この、寒い冬を。
皆様、きっと驚かれたことでしょう。本日、これが四回目の更新となります。
新しい物語の展開を読者の皆様に一刻も早くお届けしたい、その気持ちが逸り、旧来の章を、全く新しい内容とエピソードで直接差し替えるという形をとってしまいました。