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ゾンビは治せる病気です~Dr.アピリス診療所~  作者: 長多良
第10章 2~8日後・・・
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第112話 3日後・・・④そこにアイはあるのか

「あ、あのー・・・。何でこんなピリピリした雰囲気になってるんですか・・・?」

「アシハラ先生、気にしないでいいですから・・・」


 財前マシロ先生の後に入ってきたアシハラ先生は、財前マシロとお姉ちゃんのにらみ合いに怯えているようだ。

 私はため息をつきながらも、話を先に進める努力をした。みんなを席につかせておにぎりを勧める。


 おかげでおにぎりを食べながら色々話を聞けた。


「つまり私が眠ってる間に、アシハラ先生と財前先生を中心に、大学と病院が協力してウィルスの研究を進めていたんですね?」

「そういうことだ。まあそもそも、アシハラ教授は九定大学で、俺は九定大学病院だから、身内と言えば身内だ。お互い今回が初対面だったし、九定大学にまさかゾンビの研究をしてる人がいるとは知らなかったけどな」

「わ、私の研究室はマイナーですからね・・・。ゾンビの事はまだ公にしてませんでしたし・・・」


 ちなみに財前マシロは海老おむすび、アシハラ先生は昆布おにぎりを食べている。


「まあとにかく、長い間ゾンビの研究をしていたアシハラ教授と天才外科医である俺様がいたお陰で、研究の方はかなり進んでいるんだ」

「ウィルスの研究に外科医は関係ないでしょ」


 私は思わず辛辣なツッコミを入れてしまうが、財前マシロは全くめげない。


「バカめ、天才外科医は感染症にも天才的だ。その証拠に、感染経路はもう分かっている」

「せ、接触感染と媒介物感染・・・。分かりやすく言うとゾンビの体液に類するものが体内に入ったら感染するんです・・・」

「まあ噛まれたり傷つけられたりしたら感染すると思えばいい」

「すごい!もうそこまで分かってるんですか!」

「まあ、検体サンプルはそこらじゅうで確保できるからな」


 まあ確かに街中に患者があふれているが、それはいいのか悪いのか・・・。ブラックジョークに片足ツッコんでる気がする。


「とにかく。空気感染じゃないだけまだマシ、ですかね」

「そういう事だな。そしてその治療のためのワクチンの目途もたっている」

「本当ですか!?」


 ワクチンが大量生産できれば、街に溢れた患者たちを治療する目途もつくというものだ。さすがアシハラ先生。あと財前マシロ。


「もちろん、まだ研究の途中だ。これから先はゾンビと蘇生術の専門家・・・つまりアピリス、君と、お姉さん、パナテアさんだったか。元気になったなら、二人とも俺達の研究に合流してほしい」

「もちろんです!アシハラ先生と一緒に治療のための研究ができるなら、喜んで!」

「ふん、私もアピリスのためなら協力するわよ」


 お姉ちゃんはツンツンしながらも協力してくれるらしい。良かった!


「よし。ただ、問題もあってだな・・・」


 しかしここで、財前マシロは厳しい表情を見せる。


「最後の1ピースが足りないんだ」

「1ピース、ですか?」

「そうだ。ウィルスの基本構造は解明できたんだが、ワクチンにするには肝心の核の部分。村井ニニカの細胞の『オリジナル』が必要な事が分かったんだ」

「ウ、ウィルスに反映された部分だけでは不完全なんです・・・。元々のニニカさんの細胞情報があれば、治療するためのRNA情報が完全に分かるはずなんです・・・・!」

「そんな・・・!」


 その事実が何を意味するか、その場にいる全員が理解した。


「ニニカさんを助け出さないと、ワクチンは開発できないってことですね・・・」

「そうだ。もちろん村井ニニカを助けるのは当然だが、できれば今すぐにワクチンも完成させたかった。そうすることで、各地のゾンビへの対応の負担が減って村井ニニカの捜索、救出にもより安心して力を入れられる。それに加えて、ダンテ・クリストフ一味へ対抗する武器にもなるからだ」


 財前マシロの言う通りだ。

 ダンテ・クリストフの元には多くの協力者がいる。

 話によると警察に預けていたトカゲ男のような患者も逃げられてしまったそうだ。

 それに加えてルイさん、狼男、骸神佐兵衛、他にもいるだろう。

 今までのような私の治療薬だけでなく、ワクチンもあれば大きな力になるはずだった・・・。


「ニニカさんの細胞さえここにあれば・・・」


 私は悔しさから拳をぎゅっと握る。


「ニニカさんがいなくても、せめて、ニニカさんの体の一部でもあれば・・・」


 でもそんな都合のいいものはない。ここにニニカさんはいないのだから。

 ニニカさんの体の一部なんて、そんなもの・・・。


「あれ、ニニカさんの目玉がまだあるんじゃ?」


 メアリさんがポツリとこぼす。


「え!?」

「確かメアリさん、骸城村に行く前に無駄に目玉を外していたような・・・」

「ええ!?」

「あ!ありましたよ!ほら、生体廃棄用の保冷廃棄ボックスに入ってました!ニニカさんの目玉!」


 そう言ってメアリさんは冷蔵ゴミ箱の中身を見せてくる。

 ちなみに保冷廃棄ボックスとは、手術などで切除した人体の一部は普通に捨てたらダメなので、ちゃんと処理して廃棄するために一時的に保管する場所だ。腐らないように冷やす機能がある。


 とにかくそれを開けて中を見ると・・・。


「うわ、ホントに目玉がある」


 ジョージさんが呻く。


「俺は手術で見慣れているがな」


 財前マシロは無駄にマウント取って来る。


「自分の目玉を無駄に外したって・・・ニニカって人、なんなの・・・」


 おねえちゃんはドン引きしている。

 私もちょっと呆れているが・・・。


「と、とにかく、これでワクチン開発が大きく前進しますね!!」


 無理やり前向きに話をまとめることにした!


 ◆


 とにかくこれでやるべき事はハッキリした。


 私とお姉ちゃん、アシハラ先生と財前マシロはワクチンの研究開発。


 ジョージとメアリさんは、ニニカさんの居場所の捜索だ。


 レイ刑事も、治安維持の仕事と並行して私たちのサポートをしてくれるらしい。

 警察としてもダンテ・クリストフの捜索は急務と考えているらしく、ダンテを見つけだせればニニカさんも見つけられるだろう。目的は同じなのだ。


「それに、警察以外にも『協力者』がいるからな」

「協力者、ですか?」


 ニヤリと笑うジョージに、私が「それは誰か?」と聞こうとした時、またまた診療所の扉が開いた。


「アピリス先生!目が覚めたとね!よかった~!!」


 飛び込んできたのは骸城村で一緒だった『あーちゃん』さんだ。

 都市伝説系配信者ということで、骸城村に取材に来て事件に巻き込まれた女性。

 彼女も無事だったんだ。よかった。


「聞いたばい!アピリス先生の過去。大変なことが沢山あったとよね。でもお姉さんと仲直りで来たみたいでよかった~」


 あーちゃんさんは涙を流しながら抱きついてきた。村ではゆっくり話せなかったが、いい人そうだ。


「私も協力するからね!ニニカちゃんはもう友達やけん!それに、みんなもアピリス先生に協力してくれるって言っとるばい!」

「ありがとうございます。でも、みんなって?」

「これたい!」


 そういってあーちゃんさんはスマホの画面を見せてくる。

 そこには・・・。


『美少女ドクター!呪われた村でゾンビを治療する!』

 というタイトルで、骸城村での私の姿が公開され、沢山のコメントがついていた!!


「ええ!?」

「骸城村で電波は届かんかったけど撮影は続けてたったい。それを配信したら大人気で!ほら、コメントもたくさん!」


 コメントには『かわいい!』『カッコいい!』『これ都市伝説になってたゾンビ専門に医者じゃない?』『これ本当?AI動画じゃない?』『本当です!俺も彼女のお陰でゾンビ治療して友達と野球できるようになりました!』などなど・・・。


「えええ!?何でこんなことを!?」

「いやー、ゾンビが街に溢れて世間のみんな不安そうだったから、安心させてあげようかと思って」

「イヤでもこんな勝手に!」

「大丈夫!顔にモザイク駆けて名前も伏せとるけん!」

「す、すまんセンセイ。俺も知ったのはもう動画アップされた後で・・・。でも幸い好意的な反応が多くて、実際パニックを防ぐのに役立ってるみたいなんだ。それにダンテやニニカちゃんに繋がる情報を探してくれるネット民もいてだな・・・」

「いやあああ恥ずかしいいいいい!!」


 私は頭を抱えてその場にしゃがみ込んで叫ぶことしかできなかった。

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