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偶然と必然

 先日、知り合いのオカルトライターであるナナシから、複数の視点で物事を捉えることの大切さを学んだ。

 それを受け、今回から数回に渡り、逆の意味を持つ二つの視点で怪異やオカルトというものを考えてみたい。


 数多くの怪談において、偶然という言葉が出てくることは多くある。

 例えば、その時は偶然いつもと違った道へ行った。

 その日は偶然遅刻して、別の電車に乗った。

 偶然、昔の友人と出会った。

 偶然知り合った人から、ある怪談を聞いた。


 こうした例を挙げていくと、いくらでも出てくる。

 これは怪談に限らず、そもそも日常生活でも多くの偶然がある。

 人と知り合うきっかけなんて、ほとんど偶然だし、一つ一つの出来事を考えた時も、そのほとんどが偶然と解釈することもできる。


 例えば、先輩であり師匠でもあるエリさんとの出会いは、私がオカルトライターになるきっかけをくれたもので、多くの偶然が重なって実現したことだ。

 まず、心霊好きの男友達Yと学生時代に偶然クラスが同じで、恋人関係になるほど仲良くなったこと。

 大人になった後、Yと偶然の再会をしたこと。

 Yがお巡りさん――後に刑事となるKさんと偶然知り合っていたこと。

 そして、Kさんの同級生に偶然エリさんがいたこと。

 こうして書くと、多くの偶然によって実現したことのように思える。


 でも、ここで視点を変えると、これらすべては必然だったとも捉えることができるのだ。

 学生時代にYと仲良くなり、恋人関係にまで発展したのは、お互いに心霊好きだったからで、クラスが違っていても、多分仲良くなっていただろう。つまり、これは必然だったというわけだ。

 Yは困った人がいると、手を貸したくなるお節介な性格で、一人暮らしを始めた後、隣に引っ越してきた人――Gさんが持ってきた厄介ごとを解決する手助けをしていた。Gさんは様々な人とかかわりたいといった考えを持ち、とにかく多くの人とかかわるようにしていた。その中で私と出会い、それが結果的にYと再会するきっかけになった。つまり、私がYと再会したのも、必然だったわけだ。

 また、こうしたGさんの性格から、Kさんとも知り合い、そしてエリさんとも知り合った。もしかしたら、ほとんどがGさんによって起こされた必然だったといえるかもしれない。


 ちなみに、このGさんというのは、前回紹介したミサンガをくれた友人だ。

 最近、どうしているだろうかと思っていたら、奥さんのHと一緒に家まで遊びに来てくれて、色々と近況を聞くことができた。

 Gさん達が来ることを知らなかったし、雑話で話題に出した直後に会えるなんて、それこそ偶然といえる。

 でも、事情を聞いてみると、案外必然だとも思えた。

 というのも、Gさん達は最近私の雑話を読み始めて、今の状況を理解したらしい。

 そのうえで、Yとその恋人のM同様、私にも万が一のことがあるんじゃないかと、心配して来てくれたそうだ。

 つまり、必然そのものということになるけど、前回Gさんのことを話題に出したところは、まだ読んでいないとのことで、知らなかったようだ。なので、話題に出した直後、会いに来てくれたという部分だけは偶然だったようだ。


 また、亡くなったYとMは、Gさんと深い関係がある二人だ。

 先述した通り、GさんとYは住んでいた部屋が隣で、GさんにとってのYは大親友だった。

 それと、MはGさんの妹で、誰の目からも仲の良い兄妹なんだろうなといった感じだった。

 だから、YとMが亡くなった時、Gさんはとても悲しんだ。

 そんな二人に死を与えたかもしれない「名前を付けられた怪異」=「シロ」という存在に私は近付いているわけで、Gさんが心配するのは当たり前だった。


 Hも同じように私を心配していて、そこには別の理由があった。

 Hは女優をやっていて、最近ホラー映画の撮影が始まった……と思ったら、ある事情で中止になったそうだ。

 このことは公表されていないらしく、少なくとも私は知らなかった。


 撮影中止になった理由だけど、きっかけは共演している女優が、最近不思議なことが起こっているといった話をしたところから始まった。

 その内容は、家で作業をしながら音楽を聴いていると、時々「聞こえる?」という、明らかに曲と関係のない声が聞こえるというものだった。

 すると、他の俳優やスタッフなども似たような体験をしたと言い、何か今回撮影する映画と関係があるのだろうかと話題になった。

 それを聞いた監督が、もしも同じように「聞こえる?」という声がしたら、聞こえていると返してやろうなんてことを冗談交じりで言った。

 その翌日、監督が失踪してしまい、すぐに見つかったものの、精神的におかしくなってしまったそうで、そのまま撮影中止となってしまったとのことだ。


 Hの話を聞いて、まず私は「ボイスレコーダー」と「逆再生」、そして「大学生のD」という雑話で書いたことを思い出した。

 いずれも「聞こえる?」という声がしたというもので、「シロ」と関連がある――もしかしたら、「シロ」の声そのものなのかもしれないと思っていたところだ。

 ただ、何故それと同じような体験を、Hの共演者やスタッフ達がしたのかという疑問が浮かび、私は撮影する予定だった映画の内容を聞いた。

 Hによると、悪魔を生み出すことを目的とした宗教団体の話で、本当に生み出されてしまった悪魔から逃げつつ、館を脱出できるかといった内容の映画だったらしい。

 しかも監督曰く、ある人物から聞いた、実話を基にしているとのことだった。


 そこで、私は何だか嫌なものを感じた。

 それからまさかと思いつつ、「言霊」という雑話で書いた、かつて宗教団体にいたというXの話をHにしてみた。

 すると、Hも私と同じような感覚を持ったようだ。

 もしかしたら、撮影する予定だった映画の基になった話は、Xの話と同一なのかもしれない。

 そんな偶然あるのだろうかと一瞬思ったけど、Xは「このことを一人でも多くの人に伝えてください」と言われた通り、多くの人に同じ話をしている可能性がある。そうなると、私以外の誰か――例えば映画監督にも話した可能性が高く、そうなるとこれは偶然でなくて必然だ。


 ただ、どうして「聞こえる?」という声がしたといった話が、映画にかかわった人達の間で広がったのかはわからない。

 Xの話は、「シロ」と直接関係があるわけじゃない。

 話の中に出てきた少女と、本物の霊能力者と紹介している彼女がどこか似ていると感じたものの、やはり同一人物と考えるのは難しい。

 もしかしたら、そうかもしれないけど、たとえそうだとして、だから何だという話になってしまう。


 とにかく、私は「怪異に名前を付けた少女」という雑話の中で彼女に言われた通り、「シロ」を連想させる怪異に遭遇した時、それは全部、この雑話に戻ると想像してほしいといったことをHに伝えた。

 また、共演者やスタッフなどにも同じように伝えてほしいとお願いして、Hは快く引き受けてくれた。


 こんな話にまで発展したわけで、黙って話を聞いていたGさんは、さらに心配になった様子だった。

 ただ、このまま何もしなくても同じことだろうし、むしろ解決する手段があるなら、それを行った方がいいと話して納得してもらった。

 そのうえで、Gさんは何かの役に立てばと、追加のミサンガを持ってきてくれたようで、テーブルに二十本のミサンガを置いた。

 書き間違いでなく、本当に二十本のミサンガだ。


 言い忘れていたけど、Gさん自身、大量のミサンガを着けていて、リストバンドみたいになっている。

 こうして二十本ものミサンガを渡してきたということは、それをすべて着けろという意味だと思う。

 こんなにたくさんミサンガを着けたら、相殺し合って逆効果なんじゃないかとも言ってみたけど、Gさん曰く多ければ多いほどいいとのことで、Gさんがそう言うなら、このミサンガはそういうものなんだろう。

 願いも同じでいいとのことなので、元々着けていたのと同じ、オカルトライターとしての活動がずっと続くようにといった願いを二十本のミサンガに込めた。

 合計二十一本のミサンガを着けたことになるので、これまでと比べ、二十一倍の効果が期待できるかもしれない。それか、今後流行るかもしれないファッションを先取りしているとか、そう考えないと若干恥ずかしいことになっている気がするけど、気にしないことにする。


 思い返してみると、YはGさんのこうしたところに振り回されていた気がする。

 嫌なら嫌と言えばいいのに、妙に付き合いが良くて、Gさんだけでなく、多くの人から迷惑を受けていたように思う。

 私もそんなYに甘えて、迷惑をかけてしまったことが何度もある。

 以前、ストーカーにあったと書いたことがあるけど、その時もYは助けになってくれた。

 Yだけでなく、Mも私の相談を真剣に聞いてくれて、何とか解決しようと過剰なほど頑張ってくれた。

 最終的に頼ったのはKさんだけど、そうした解決に向かったのはYとMのおかげだ。だから、二人には感謝しかない。

 それなのに、YとMはもういない。感謝も恩返しもできないわけだ。


「ちょっと……ごめん」


 何故かわからないけど、急に涙が溢れてきた。

 いや、わからないというのは嘘だ。

 YとMが今ここにいないのが悲しい。

 それが私の本音だ。

 でも、今になって何でそんな風に思いが溢れてしまったのか、全然わからなかった。


 すると、Hが私のことを優しく抱きしめてくれた。


「大丈夫だよ。アッキーちゃんが二人のことを覚えていて、今も二人の影響を受けている。それは、Y君もMちゃんも、ずっとそばにいてくれているからだよ」


 Hの言葉は、幽霊になってそばにいるとか、天国から見守ってくれているとか、そういうものじゃなかった。

 だったら何だという話だけど、上手く表現することができない。はっきり言って、ライター失格だ。

 でも、私は理解して、ただただ嬉しいと思えた。

 そう書くことしかできないのは、まだまだ未熟だからだろう。

 つまり、もっと私は成長しないといけないというわけだ。


 そうした話をして、GさんとHは帰っていった。

 このタイミングで二人が来たのは、偶然だったのか必然だったのか、結局わからなくなってしまった。

 ただ、会うことができて本当に良かったと思う。

 だから、今回のことは偶然とか必然とは違う表現……ありきたりだけど、運命だったなんて表現を使いたいと思う。


 そんな雑話でした。

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