降霊術師
前々回から降霊術に関することを紹介したけど、それには理由がある。
実は降霊術師を名乗る人と会う予定があって、私なりに降霊術についてこれまで知ったことをまとめたのが、前々回からの雑話だ。
そんなわけで、今回は降霊術師を名乗る人に会った時の話を紹介する。
降霊術師というのは、その名の通り、降霊術を行う人のことを指す。
ただ、前々回から紹介してきた降霊術と大きく異なり、降霊術師は、特定の霊を呼び出す降霊術を行う。
例えば、急に亡くなってしまった家族が、自分に言い残したことはないか。
伝えたい言葉があったのに、それを伝えることなく亡くなってしまった人に、どうしても言葉を伝えたい。
亡くなってしまった大切な人が今の自分を見て、どんな風に思うか。
人の死というものに直面した時、多くの人がそんな思いを抱く。
でも、亡くなってしまった人と言葉を交わすことなどできないので、こうした思いは決して果たされない。それは、多くの人が理解していることかと思う。
ただ、魂や霊体と呼ばれる存在になったものと話すことができるとなれば、これらの思いは果たされない願いじゃなくなる。
特定の霊を呼び出すことができる降霊術師は、こうした思いをかなえる存在というわけだ。
降霊術といっても、方法は様々あるし、それに伴って降霊術師というのも様々いる。
おそらく、日本ではイタコと呼ばれる人が有名かと思う。
イタコが行う降霊術は口寄せと呼ばれるもので、自らの体に霊を降霊――憑依させたうえで、自らの声を使って霊の言葉を伝えるというものだ。
当然、自らの体に霊を憑依させるというのは危険なことで、それ相応の修行が必要だと言われている。
また、霊能力者や住職の中でも、降霊術ができる人がいるようで、この人達も降霊術師ということになる。
こちらはイタコと違って、自らの体に霊を憑依させるといったことをしない人が多い。
それでは、どうやるのかというと、特定の霊を呼び出して、その霊と会話することで、霊の言葉を代弁するという形を取るケースがほとんどだ。
今回、私が会った降霊術師も、こちらの方法を取る人だった。
早く降霊術師と会った話をしろと思う人がいるのを承知のうえで、もう一つ言っておくことがある。
これは以前から言っていることだけど、私は怪異やオカルトを信じていない。
つまり、降霊術師という存在そのものを信じていない。それが私だ。
以前、「信用できる霊能力者はいないのか?」という雑話で紹介したけど、霊感商法と呼ばれるものを行っている詐欺師は現実にいる。
だから、降霊術師の中にも、そうした詐欺師が多くいると私は考えている。
例えば、亡くなってしまった大切な人の言葉として、「高値の壺を買え」とか「今すぐ仕事を辞めろ」とか、そんなことを言われて信じてしまう人は少なからずいる。
怪異やオカルトと呼ばれる分野は、一般の人に理解できないものだ。だから、あたかも自分より詳しい人が言う意見が絶対だろうと自然に思ってしまうものだ。
そうした理由で、悪意のある詐欺が横行してしまうという問題がある。
失礼を承知で言うと、今回会う降霊術師もそうした詐欺師の可能性があると考えたうえで、私は会いに行った。
待ち合わせ場所にいたのは、若めの男性で、それこそ好青年といった感じの人だった。
軽く挨拶をしただけで、気さくで話しやすい人なんだろうということは十分伝わった。
ちなみに、私は「コールド・リーディング」という、ちょっとした会話から相手の情報を引き出し、あたかも相手のプライベートを言い当てたかのように振舞う話術を知っているので、彼の雰囲気から、そうしたことをしてくる可能性が十分あると感じていた。
どう考えても相手に失礼な考えだけど、こうした疑念を持つのが私ということで、皆さんには理解してもらいたい。
とりあえず、インタビュー形式で彼に色々と質問してみた。
彼は除霊や浄霊といったことをしないで、あくまで降霊だけをしているとのことだった。
降霊ができるようになったのは、自分を可愛がってくれた祖父が亡くなってすぐのことだったそうで、祖父に会いたいと思う気持ちを強く持った時、祖父の幽霊が目の前に現れて、助言をくれたとのことだ。
その後、母親を亡くした親友の相談に乗っていた時、親友の母親の霊体を呼び出すことに成功して、それ以降、降霊というものを勉強して自らの力にしたそうだ。
彼は祖父が亡くなった時、大きなショックを受け、何も手に付かない日々が続いた。でも、祖父の霊体に会ったことで、心が救われたそうだ。
だから、大切な人の死に心を痛めている人がいるなら、少しでもそれを和らげたいと、降霊という形で人助けをしているとのことだ。
先述した通り、彼が本当に降霊を行えるか、詐欺師ではないのかという疑念はあった。
でも、彼の言うことそのものは、とても素晴らしいことだと感じた。
取材の途中で、彼は実際に降霊をやってくれるといった提案をしてきた。
ただ、私は特に降霊してもらいたい霊がいるわけでもないので、そのことを素直に伝えた。
すると、私に自覚がなくても、降霊されるべき霊がいれば、自然とその霊が降霊されるといった説明を受けて、とりあえず降霊をしてもらうことにした。
ちなみに、この辺りの話の展開は、コールド・リーディングでよくあるものなので、私はより警戒を強めていた。
彼の行う降霊術は、比較的シンプルな感じだった。
まず、テーブルの上に占いなどで使いそうな水晶を置いた後、私に目を閉じるように言ってきた。
彼に言われるまま、私が目を閉じると、彼はお経のような呪文のような、とにかく聞きなれない言葉を唱え始めた。
彼の話では、ここで私の頭の中に降霊させたい霊の姿が浮かび、彼がその霊と会話することで、霊の言葉を私に伝えるというものだった。
でも、私の頭の中に浮かんだのは、ただ真っ白な何かだった。
その直後、大きな音がして、私は思わず目を開けた。
「大丈夫?」
「……白」
「はい?」
「すいません、今日はこれぐらいで……」
彼は何だか怯えた様子で、水晶などをしまうと、席を立ち、どこかへ行ってしまった。
あまりにも突然なことに驚いてしまって、私は彼を止めることなく、ただ呆気に取られてしまった。
少しして状況を理解したところで、私は改めて彼に連絡を取ってみたけど、電話に出てくれなくて、今現在も連絡が取れないままだ。
私を怯えさせたうえで、何かしてくるのかと思っていたけど、連絡すら取れないわけで、私は何が何だかわからなかった。
ただ、思い返してみて、私は一つ気になっていることがある。
私はあの時、頭の中に真っ白な何かが浮かんだ。その直後、彼も「白」と呟いた。
それは単なる偶然なのか、何か意味があることなのか、彼との連絡が取れるかどうかという問題があるけど、引き続き追及できたらと思っている。
そんな雑話でした。




