二度と行きたくない心霊スポット
今回は、何度も登場している心霊好きの男友達Sの体験した……といっていいのか少々判断に困る話を紹介する。
ある日ふと、自らがやった過去の行いを反省する瞬間というのは、誰にでもあるだろう。
Sにとってのそれは、心霊スポット巡りをしたことだった。
その時にあったことは、以前「心霊スポット巡り」というタイトルで、三つに分けて紹介しているので、良ければそちらも見てほしい。
Sとその友人達は、心霊スポットで不思議な体験や、怖い体験もした。
でも、そこで大きなトラブルにあうことがなかったのは、とても幸運なことだったんじゃないかと思ったそうだ。
例えば、心霊スポットへ行った後、その帰りに事故で亡くなってしまったなんて話は数え切れないほどある。
命はあっても、そこにいた怪異に憑かれてしまったとか、気が狂ってしまったとか、そんな話もたくさんある。
心霊スポットでは、怪異だけでなく、生きた人とのトラブルも多い。
心霊スポット巡りをしている他の人と遭遇して、暴力沙汰になるなんて話を私はたくさん聞いている。
だから、私も心霊スポットの調査をする時は、生きた人とのトラブルが発生しないよう、注意している。
藪をつついて蛇を出すなんてことわざがあるけど、そんな危険な場所が心霊スポットなわけで、そこにあえて行くというのは、それなりの覚悟がいるということだ。
幸いにも、Sはそんなトラブルに巻き込まれることがなかった。
でも、今後は何があるかわからない。
だから、そうした心霊スポットへ面白半分で行くのは今後やめよう。
何がきっかけかわからないものの、Sはそんな反省をした。
そして、その中でも二度と行きたくないと思える心霊スポットのことを思い出した。
当時、Sが通っていた場所は、本館と別館といった形で二つの建物が並んでいた。
でも、別館の方は既に使用する機会がなくて、閉鎖状態だった。
ある日、Sを含む三人以外、誰も来ていない時があり、適当に雑談をしていた。
その中で、一人が妙なことを言った。
「○○の足って場所、知ってる?」
ちなみに、○○の部分には、某アニメのキャラ名が入っているので、一応伏せておいた。
特定されない程度のヒントを言うと、どら焼きが好きで、未来のロボットという設定のキャラだ。
おそらく、これだけでは特定できないだろう。
Sは当然、○○について知っていた。
○○の足と言われて、記憶を探れば、何となくどういったものかということは思い出せた。
ただ、最後にくっついた「って場所」というのが何なのか、まったく理解できなかった。
Sと違い、もう一人は既に○○の足という場所へ行ったことがあるらしく、何だかSだけが蚊帳の外といった感じで会話が進んだ。
仲間外れにされているようで、Sは知らないと伝えたうえで、○○の足という場所の詳細を二人に聞いた。
二人によると、実は閉鎖されているはずの別館に入る方法があるそうだ。
そして、二人はその方法を使って別館に入り、○○の足という場所へ時々行っているそうだ。
話を聞いているうちに、そこがどんな場所なのだろうかと、Sは興味を持った。
そんなSの心境を二人も察したのだろう。
丁度、今ここにいるのは三人だけだ。
せっかくだから、Sをそこへ案内するといった提案が二人からあった。
当然、Sは二人の提案を受け、○○の足という場所へ行くことにした。
S達は外に出ると、まず倉庫の近くにある塀をよじ登った。
塀の上に立つと、今度は倉庫の屋根の上によじ登った。
この倉庫は、別館のすぐ近くにある。
そして、倉庫の屋根は、丁度別館の二階ぐらいの高さにあった。
一人が別館の方へ近付くと、手を伸ばして、近くの窓を開けた。
二人によると、二階はチェックが甘いのか、元々鍵のかかっていない窓がいくつかあったそうだ。
最初に入った時は、ちょっとした出っ張りを歩いて壁伝いに移動しながら、開く窓を探したそうだ。
でも、一度中に入ってしまえば、他の窓を開けることは簡単だ。なので、二人は最初に入った時、倉庫の近くの窓を開けておいて、以降はそこから入るようにしているらしい。
ここまで思ったより簡単に入れたけど、塀や倉庫の屋根によじ登るというのは、傍から見て不審でしかないので、他に人がいたらできなかっただろう。
中に入ると、二人の案内でSは廊下を進んでいった。
そして、今度は非常階段に続くドアを開けた。
この非常階段は別館の外に設置されているものの、周りを柵で囲まれているだけでなく、出入り口も封鎖されていて、外から入ることはできない。
でも、別館の中に入ってしまえば、この非常階段を利用することも簡単にできてしまった。
S達は非常階段を上がり、そのまま屋上に出た。
この屋上は、別館が使用されていた時でも基本的に立ち入り禁止で、入れるのは作業員ぐらいだったらしい。
周りに柵がなく、落下の危険があるのは一目瞭然で、立ち入り禁止になっていたのも納得だった。
二人によると、この場所が○○の足とのことだった。
何でそんな名前になっているかというと、この屋上にポールが立っていて、ポールの上の部分に、球体を潰して平べったくしたような形のものが付いていた。
それが○○の足に見えるからということで、この場所を○○の足と呼んでいるそうだ。
聞いてしまえば、何ともくだらない理由だけど、Sは何となく居心地がいいと感じて、この場所にまた来たいと思ったそうだ。
その後、多少の危険はあるものの、本館の二階から直接別館の二階へ侵入する別ルートをSは見つけた。
なので、人の目を盗んでは、頻繁にそこを訪れるようになっていった。
来たところで何もないけど、誰もいないし、見つかる心配もほとんどないというこの場所が、Sはとても気に入っていた。
そこでふと、Sはいつ頃そこへ行っていただろうかといった疑問を持ち、順に過去の記憶を探っていった。
そして、奇妙なことに気付いた。
幼稚園、学校、バイト先、職場、友人の家、よく行く店や遊び場所。
そうしたものを思い出していっても、○○の足のある場所と、一致する場所はなかった。
つまり、これまでの記憶を探った限り、Sがその場所を訪れていたという事実は存在しなかったのだ。
考えてみれば、初めてその場所へ行った時、案内してくれた二人がどこの誰なのかすらわからなかった。
それはまるで、自分ではない誰かの記憶を持ってしまったかのような感覚で、Sは混乱した。
でも、いつか見た夢やテレビで見たものを現実に体験したものと勘違いしていたのだろうとか、そんな風に考えて、Sは自分を納得させた。
ただ、そう考えても一つだけ疑問が残った。
Sはその場所を「二度と行きたくない心霊スポット」として記憶している。
それなのに、そこで怖い思いをしたといった記憶は一切ないのだ。
むしろ、その場所を気に入り、居心地がいいと思っていたぐらいだ。
記憶の中にある、○○の足という場所が現実に存在するかどうかはわからない。
ただ、仮に存在するとしても、Sは近付きたくないと思っているそうだ。
私は好奇心旺盛なので、そんな場所が存在するなら、実際に行ってみたいと思ってしまう。
もし、○○の足という場所に心当たりがある人がいたら、是非詳細を教えてほしい。
そんな雑話でした。




