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ある漫画家の悪戯

 人を笑わせるのは大変なことだ。

 うん、オカルトライターとしては、「人を怖がらせるのは大変なことだ」と言うべきだろう。

 ただ、今回は「笑い」の話をしようと思う。


 人を笑わせる仕事をしている人は、大抵普段は真面目という人が多い。

 いわゆる二面性というか、普段は真面目だからこそ、そのギャップとして奇想天外なことも思い付くってことなのかもしれない。

 ただ、ある漫画家は普段すら「笑い」にしてしまう人だった。

 直接、話を聞く機会は生憎なかったけど、この方はたくさんの人を楽しませた。実際、私もこの方のエピソードを知る度に何度も笑ってしまった。


 そんな方が亡くなった時、多くの人が悲しみにくれた。

 でも、この方は、自分の死すら「笑い」にしてほしいと思っていたようで、そうした思いは残された人に伝わっただろう。


 さて、この方が立ち上げた事務所は現在もあって、ここでは少々不思議なこと――いわゆる心霊現象が起こっているのだ。


 給湯室に行こうとした時、丁度誰かが給湯室に入っていくのが見えた。

 でも、後を追うように給湯室に入ると、誰もいないのだ。

 そこは行き止まりで、どこか別のところからそこを出ることなんてできないし、隠れる場所もない。

 さっき見た人影は、いったい何だったのか。


 こうしたことが、ここでは時々起こるらしい。

 これに限らず、誰かの気配を感じるとか、視界の端に存在しない誰かの姿が見えるとか、割と日常茶飯事らしい。

 普通に聞けば、心霊現象なわけで、あまりにも頻繁に起こるようならお祓いをお願いするべきとか、そんな話になるのが普通だ。

 でも、ここではお祓いをしようといった話にならないで、

「きっと先生が悪戯しているんだろう」

 といった認識で済ませているそうだ。


 とはいえ、幽霊=怖いと思っている人も当然いる。

 そうした人からすると、こういったことが頻発するのは、勘弁してほしいと思うだろう。

 ただ、ここも悪戯らしいというか、そういった怖がりな人に対して、特に心霊現象が起こるそうだ。


 幽霊になった今も、自分の事務所を訪れ、明らかに幽霊じゃないかといった形で姿を見せる。

 そして、そんな自分の姿を見た人が時に怖がっている様子を見ながら、

「やった! 怖がってくれた!」

 なんて言って喜ぶ姿を想像すると、何だか面白くなってしまう。


 本来は怖い話なのに、それすら「笑い」に変えてしまう。

 人を怖がらせたいと思っている人にとって、本当に怖ろしいのは、この方なのかもしれない。


 そんな雑話でした。

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