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デイブレイクス〜Daybreaks〜  作者: 煙の物干し竿
第八章 気になる彼は夜明けの団
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立会演説会

 レイが推薦文を完成させた日から数日後、フェルヘイズ国立学校高等部では立候補者と推薦責任者による立会演説会が体育館にて催された。


『生徒会長候補、ミレーナ・デュランさんの推薦責任者、レイ・ヴェナブルズさん、推薦演説をお願いします』


進行役に名を呼ばれたレイが登壇する。

この場所に立つのは春の文化祭以来だが、あの時は魔王サタニエルの役を演じていたため、レイ・ヴェナブルズとしての登壇は今日が初めてとなる。

それ故にあの時とはまた違った緊張があった。だが、ここまで来た以上やり切るより他に道はない。レイは意を決して息を吸い込んだ。


「えっと……推薦責任者のヴェナブルズです。私がミレーナ・デュランさんを推薦する一番の理由は、その責任感の強さです」


使い慣れない形式ばった口調に苦労しながらもレイは演説を続ける。


「デュランさんは、これまで生徒会副会長の他に私たちのクラスの委員長も兼任してきました。どちらも決して楽な役割ではありませんが、彼女はその両方の仕事を怠ることなくこなしています。これはデュランさんが心からクラスを、そして学校をより良くしようという姿勢の表れではないでしょうか」


一呼吸置いたレイは心の臓が口から飛び出そうになるのを抑えて、また演説を再開した。


「私はまだ彼女と出会ってから日も経っていませんが、彼女の下でならこの学校は更に良くなっていくと確信しています。フェルヘイズ国立学校を正しい方向へ導く為にも……治安を維持する為にも、どうかミレーナ・デュランさんに清き一票をよろしくお願いします!」


さりげなく自分の部活の宣伝を差し込み、レイは演説を締めくくる。

自分でも拙い文章だとは思ったが、今はこの大人数の前で演説などという大それた事をやり遂げたのだという達成感が先立ち、聞き手の心情にまで気を回す余裕はなかった。

 レイの演説が終われば、次は言うまでもなく候補者当人であるミレーナの演説が始まる。

壇上から舞台袖に退いたレイは、代わりに登壇したミレーナの横顔に目をやる。丁度レイのいる位置が包帯で覆われている面だったため表情を窺い知る事は出来ないが、その口元は微かに強張っているようにも見えた。

レイは心の中で小さくエールを送り、固唾を呑んで彼女を見守った。





「先程推薦に預かりました、生徒会長候補、ミレーナ・デュランです」


ミレーナが演説を始めると、レイの時と比べて場の雰囲気がどことなく引き締められた。


「私が生徒会長として着手していきたいのは、生徒自身による自治、その地盤を固める事です。知っての通り、当校は生徒の自主性を尊重するという名目で規制の緩い校則が設けられていますが、近頃ではそれをいい事に問題行動や非行に走る生徒も少なくはありません」


これはレイたち治安維持部が発足当初から向き合う問題でもあり、彼ら以外の生徒や教員の多くも常々問題視していたのか、共感の表情を浮かべる姿がちらほらと見られる。


「既に、一部の生徒たちが自ら校内の治安維持に乗り出しているのは、生徒の自主性を尊重した事が功を奏した形ではあります。ですがそれは、先程申し上げたような負の部分があったが故に他なりません。遺憾ながら生徒会長もまた一生徒である事に変わりはないので、校則を変える、取り締まりを強化するといった根本的な解決策を取る事は難しいとは思われますが、こうした呼びかけを継続的に行い、やがては全ての生徒が過ごしやすいと感じられるような学校づくりの基盤を作る事が出来ればと考えています。どうか、ご賛同いただければ幸いです」


既に彼女の賛同者は大多数を占めていたのか、会場からは惜しみない拍手が巻き起こる。

これなら信任は間違いない。レイを含む誰もがそう思った時だった。拍手が止むのを待ったミレーナが、更に演説を続けたのだ。


「もう一つ、皆さんにお伝えしておかなくてはならない事があります。私は……ミレーナ・デュランという人間は……」






「先程ヴェナブルズさんが仰ったような強い人間ではありません」






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