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デイブレイクス〜Daybreaks〜  作者: 煙の物干し竿
第六章 南風に誘われて
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水面に映る姿

 治安維持部がテントを張り終えた頃には太陽が頭上まで上がり、気温も高くなって来ていた。

持参した弁当で昼食を済ませた彼らは、男女に分かれてテントに入る。

休憩しようという訳ではなく、川に入るに当たり水着に着替える為だ。


「若くん、覗いちゃダメよ」


ベルリッツがテントから顔を出して言う。


「なんで俺だけなんだよ!」


一人そう叫んだフェーゴを尻目に、彼以外の男性陣は顔を見合わせて頷く。『確かにフェーゴが一番覗きそうだ』と。






 辺りに人の姿は無く、その一帯はほぼ治安維持部の貸し切り状態と言っても過言ではなかった。

フェーゴやジオスと競泳し、泳ぎ疲れたレイは岸辺の岩に身を寄せる。そこからなら休憩も兼ねて部員達の様子が見渡せた。


「はっ!」


「負けるかよ!」


ジオスがその巨体を振るって波を起こし、フェーゴがそれに抗う。


「うわあぁぁぁぁぁ……」


イーノは耐え切れず、10メートルほど流されて行った。

反対側に目をやると、クオンが恐ろしく長い時間の素潜りを終えて水中から顔を出し、隣にいたベルリッツと共にこちらに手を振る。川底の魚でも取っているのだろうか。

クオンの水着はキャンプ前にレイと選んだものだ。

『派手な柄は好かん』という意見を尊重した彼女の水着は泳ぐ事に特化し露出は控えめだが、スレンダーなラインがくっきりと現れたその姿はレイの目には十二分に眩しかった。カメラでも持ってくれば良かったと、密かに思わせる程に。

因みにレイの水着は学校指定の海水パンツだ。

レイがクオン達に手を振り返すと、彼の影にもう一人の影が重なった。


「みんな楽しんでいるようだね」


「先生……」


振り向くと、顧問のゼプターが太陽を背にしてレイの後ろに立っていた。彼はそのままレイに歩み寄ると、その隣に座る。


「僕もついこの間までは若いと思ってたけど、やっぱり三十を過ぎると無理が祟るみたいだ。それに比べて君たちはあれだけ辛い山道を越えて来たのに、まだあんな元気が残っている。羨ましいね」


「俺はもう疲れましたけどね。あっちも」


イーノも同じようで、岸に流れ着いた後は岩場に寝転んでいた。それを見たゼプターは表情をほころばせるが、すぐに真剣な眼差しになり視線を移す。彼が視線を向けた先では、水着に着替えていないセシリアが一人、膝を抱えて岸辺に踞っていた。






 ゼプターからの無言の後押しもあり、レイはセシリアの下まで足を運ぶ。彼女は浮かない顔をしたまま俯き、ただ川面を眺めていた。


「セシリア、泳がないの?」


レイは後ろからセシリアに声を掛け、その隣に座る。先程のアベルの様に。


「あ、先輩……」


彼女は踞った姿勢のままこちらを振り向く。


「暑いんだし、泳いだらどう?」


「いいんです。水着、忘れちゃいましたし……」


「そっか……それは残念だね」


セシリアは再び川面へと視線を移す。

おそらく彼女は水着を忘れたのではなく持って来なかったのだろう。

気が滅入って遊ぶ気分になれないのか、或いは傷付いたその身体を見られたくなかったのか。どちらにせよレイは本心から残念だと思った。ここにはそんな事を気にする人間は一人もいないというのに。

しかしながら、自分達は彼女と出会ってからまだ日が浅い。そこまでの信頼を得る為には、もう少し時間が必要なのかもしれない。






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