一話 空島落っこちた
短編にはちょっと長くて書きずらかったので、連載にしました。だらだらと書きそうなので、キリがいいところまで頑張ります。
とりあえず一章分(五話)書きましたので、順次一時間くらいずつ、投稿していきます。
「我がラクト王国は、ニホンの蛍村を交易相手と認め、この地にて交易を正式に許可する」
「「「おおーっ」」」
ラクト王国スタング男爵領館の広間にて皇太子が高らかに宣言する。
「一つ、取り引きはここスタング領のみで行うこと。
一つ、仲介はスタング男爵家または王家御用達カルマン商会のみとする。直接の商いは認めない。
一つ、特殊な事情がない限り、ニホン人はスタング領以外のラクト王国の土地に一歩も入ること罷りならん。ゆめゆめ忘れることなかれ。
一つ、同様にこの地からニホンへの入国を禁じる。王と蛍村の合意で特殊に認めたもの以外を対象とする。破りたる者は相応の罰を覚悟すべし!」
その条約にサインをするため、僕の隣にいた青がすっと前にでる。
これで村への不法侵入が減ればいいんだけど。
あの騒動から半年。
大変だったけど、楽しかった日々を僕は思い返した。
「おはよう、太一」
「おはよう、青」
僕はいつも村外れの大樹の下で青と待ち合わせしている。一緒に登校するためだ。
大樹は小高い丘にぽっんと立っている
大樹は登ると結構遠くまで見渡せ、その絶景は素晴らしいし、大昔の大震災でも倒れなかった縁起もあり、村の守り樹として扱われている。
僕らの村には僕と青しか子供がいない。
村長が限界集落だって言ってたけど、皆じじばばだらけだけど元気だから、限界じゃないぞと僕は思っている。
そういうことじゃないんだと青に言われたけどまぁいいか。
とにかく子供は僕と青だけだから、山を降りた町にある中学校まで行かなきゃいけない。
僕と青は今年から中学生。まだ二ヶ月しかたってないから、着なれない制服に少してこずっている。
「今日は知らんおばちゃんについて行くなよ」
「ついていってないよ!飴もらっただけだから……飴ちゃんはおいしかったけどね」
僕は唇を尖らせて文句を言う。
僕だって青みたいにすらりとした若鹿のような体躯なら、小学生に間違えられないよ。
筋肉がつきにくいからわからないけど、僕だってそこらのアスリートに負けないくらいにいろいろなことができる。
山や田畑、その他修行で鍛えた僕らの足で大樹から学校まで、大体三十分。
でもこれは村の外では内緒の話。
だって普通の人は車を使って二十分かかる距離だから。
なんでそんなに早いかって?それは道なき道、山の森林や斜面、そして渓谷を通っているから。
危ないって?大丈夫だよ。なんせ三歳くらいから山歩きを始めてるんだから。もう十年選手よ、僕ら。
「行くよ、太一」
「あいよ」
僕らは一気に道なき道に突っ込んで行く。
「昨日の雨で少し斜面が脆い。ちょっと迂回するよ」
「ラジャー、ラジャー」
「了解は一回」
「はーい」
えっとどこまで話したっけ?なんで危ない道を使うのかだっけ?
まずうちに車も自転車もない。だから時間がかかる曲がりくねった道路は使わない。
ということで山を突っ切って下山して町にでる。これも修行の一つ。
僕らの村の祖先は忍者。すでに主君はいないけど、いざと言うときに備えて修行している変わり者が多い村。
修行しているおかげで、爺婆は健康的だし、キビキビ動けるので、とても嬉しい。
長生きのために無理せずこのまま続けてほしいね。
「このまま山奥を通って……なんだあれは」
青が木々の隙間からみあげたものは、みたこともない大きさの岩?の塊。
かなり大きく、そいつのせいで陽が遮られ、隣の山の半分に暗い影をおとしている。
大きさがかなりあるので全体像がわからないけど、昔みたアニメに出てくる空に浮かぶ島みたいだ。
いつから上空にこれが浮かんでいたのだろうか?
僕らの誰一人気がつかないなんてあり得ない。どう考えても今突然に上空に現れたとしか思えない。
上空といっても高度は低い。今は一番高い木々のスレスレ上を飛んでいる。
と思ったら、グンっと少し高度が落ち、ミシミシと木々とぶつかり嫌な音をたてる。
「ねぇ、あれ落ちてきてない?」
「ほんとだ。少しずつ下がってきてる。くそっ!退避だ!このままじゃこっちに落ちるぞ」
「ま?」
「いいから走れ!」
バシッと背中のリュックを青に思いっきり叩かれ、追い立てられらように村に逆戻りする。
村に着くと村中の皆が一番高い大樹に登ってた。
僕と青も天辺までシャカシャカとのぼった。
空島(仮定)はここから二つ先の山から、こちらに向かってゆっくり近づいてくる。木々をなぎ倒しながら。
高度がまた下がる。
それにより空島の上部の姿が初めて見えた。
空島には草木が生いしげる草原と、畑や家屋らしきものが見える。人や家畜の姿は見えない。
「太一、あそこ!小さな城もある」
「ほんとだ。お城を中心に綺麗な青い幕みたいなもので覆われているね。ほらアニメでみる球体のバリアみたいじゃない?」
「なに呑気なこと言ってるんだい!ついに墜ちるよ」
青ん家の婆ちゃんの言う通り、空島は横移動を止め、そのまま下にゆっくり墜ちていく。
落下位置は村からおよそ五キロ。
「全員飛び降りろ!落下衝撃に備えろ!」
村長の指示で大樹に登ってた村人達はそのまま地面に飛び降りた。学校の三階くらいの高さだから婆ちゃんでも余裕で着地する。
僕と青も続いて飛び降りた。
グガガッッ!バリバリッ!ドコゴコッ!
ついに空島が隣の山に落ちた。
僕と青は地面に屈み、その周りを爺婆たちが円陣を組んで僕らを守る。
大地は激しく揺れ、隣の山の半分の木々は島に潰され、隣の山では土砂崩れが発生し、土砂が凄い勢いで流れていく。
山鳴りと地鳴りが同時に起こり、凄まじい轟音が鳴り響く。
すごく長い時間だった気がしたけど、実際は二分ほどの時間だったみたい。
揺れがおさまったので、半分ほどの村人が被害の確認をするために散らばっていった。
「墜ちたところは村から五キロってところか?畑のない山ん中でよかったわ」
村長が再び大樹に登って、墜ちた島を観察していた。僕もするすると隣に登って行く。
墜ちた島の中心に小さな城。周りに民家らしきものが四、五十軒。
あとは畑と牧場。全体的に青々した草原地帯ようだ。
落下中にバリアみたいに光ってた城はもう光ってない。
二時間くらい経つとポツポツと調査に出ていた村人達が戻ってきた。
「村の周囲に土砂崩れは無し。村の被害は西の空き家以外大きく倒壊した家屋なし。神社の御神体も無事。
ただ揺れたからな、家ん中すっげーものが散らばってるから大掃除やな」
「めんどうやのぅ」
「家畜、家畜小屋問題なし。鳥達が興奮して暴れちょるけど、時間が経てば落ち着くやろ」
「村の全部の井戸問題なし、今んところこの山の川や地下水路も大きく変わっとらんようや。
きちんと山全体調べなきゃあかん」
「わかった。皆戻り次第手分けして明るいうちに山ん中調査する」
「ふもとの町までの1本道(車道)は無事。町でも地震で大騒ぎやった。
ただし、町では空飛ぶ島の目撃情報はゼロ。
そうそう、青と太一は今日学校休むと連絡しといたわ」
「サンキュー、川爺!」
今から学校に行けと言われても気になって勉強できないもの。
「さてと、全員戻ってきたな。大きな被害は今のところ見つかっていない。ひとまず安心ってこった。
アレだけ大きな島が墜ちてき割りに静かなもんやった。
落下も重力無視して、なんか車みたいにブレーキ踏んでゆっくり減速して墜ちてきたしな。
物理的にありえん。怪しい島やな。
ということで、今から班を三つ分ける。
一つ、家の片付けと炊き出し
一つ、山の調査
一つ、墜ちてきたアレの監視」
村長がそう宣言したとたん、まずはジャンケン大会だ。みんな家の片づけ班に入りたくないもんだから。
僕は監視班希望!空島をもっとよく見てみたい。
「やったね、青!二人とも監視班だよ!」
「単にほかの二つの班から邪魔扱いされたんだよ。村長、隠形で監視?」
「おまえらは普通でいい。期待しとらんから、適当でいいぞ。なんなら、島の連中に見つかってもいい。相手の出方の確認になるしな」
期待してないんだって。なら気楽だね。一応何かあったときは、呼び笛でみんなを呼べばいい。
とりあえず村長のキム爺をリーダーに僕たち6人で空島の監視に向かった。
メンバーの紹介をするね。
僕と青、村長を除いた三人。
一人目は遠目の竜爺。村長と同じ歳の六十二歳。年金は六十から受け取りの慎重派。
老いても鍛え上げた視力が脅威の4.0。
二人目は情報屋のキク婆。ピチピチの六十四歳。年金は長生き予定なので七十からの予定。
キク婆は脅威の地獄耳の持ち主。三十メートル離れた会話すら聞き取ることができる。
三人目は賢者のゴンゾウ。ゴンゾウさんは今年五十五で、村では若いほう。
アメリカのいい大学でて、語学堪能でいろいろ物知りなんだ。
本人はズーズル先生のおかげって言ってるけど。まさかその先生って検索サイトのズーズル先生じゃないよね?
僕らは島の手前あたりの雑多に生えた木を隠れ蓑に、六地点に分かれて監視することに。
僕の担当は牧場らしき建物。遠すぎて豆粒くらいにしか見えないけど。
微かに鳥の興奮した鳴き声が聞こえる。うちの村と一緒で鳥が興奮しているのかな?鳥以外に他に動物いるのかな?
ワクワクしながら豆粒な牧場をじっと見つめる。
そして島が落下してからかれこれ三時間経過。
ちょっと眠くなってきた。なんにも景色が変わらないんだもの。修行中なら切り替えてやってるので、眠くならない。
でも今日の監視は見つかってもいいみたいだし……。睡魔と戦いながら、カクンカクンと揺れる僕の頭。……おやすみなさい。
ペシペシと頬を叩かれる。
感触としては肉球。僕はよく家猫のみかんに起こされる。
僕を叩くそのうでを寝ぼけながら握って、クンクンと匂いをかぐ。
「獣くさぁい」
「悪かったな、獣なんだからいいんだよ!」
と怒られポカッと頭を殴られた。
目の前にはふさふさの銀色毛の大きな狼がいた。たぶん僕か背中に乗れるくらいに大きい。
「あれ?どこの子」
「……しいて言うならスタングんちのイーズだな」
「あ、狼がしゃべってる!えーっ!」
「気づくの色々おせえよ!!」
タンタンと狼が長い前足で僕の近くに倒されている大蛇を叩いた。
「うわーおっきいヘビ!死んでるよね、これ」
「お前、魔物に丸のみされるところだったんだぞ。なんでこんなところで呑気に寝こけてるんだよ!!」
「こんなおっきい蛇この辺にいないはずなんだけどね。おかしいなぁ」
危険がある山じゃないから僕は遠くからの監視なら許されたんだよね。
「もしかしたらイーズが助けてくれたの?ありがとね。
僕はね蛍火 太一。十三歳です。よろしくね」
「お前呑気だな。とりあえず教えろ。
ここはお前のような子供が寝こけても、人や魔物にも殺されないのが常識の国ってことか?」
「魔物なんていないよ。本の中しか。
殺人鬼もほどんどいないし、子供が安全に暮らせるところ。日本は世界で一番治安いいんだっけ?たぶん?」
「ニホン?この国の名前か」
「うん。ところでイーズはあの島の人?」
「あの島はスタング男爵領。そして俺は半分人だから合ってるな」
「獣人?」
「正解」
僕はイーズから他の仲間を呼ぶように言われた。僕はよび笛を吹きみんなを集める。
その間イーズはあの中央にある城に向かった。代表者を連れてくるんだって。
先に集まったのは僕らの村の監視隊。僕の説明を聞いてから、近くに転がっている大蛇の頭を、村長が棒で転がす。
「これが魔物か。俺のほうにも角生えたウサギに似た動物出たわ。めっちゃ弱かったけどな。あれも魔物だったかいな?」
「わしんとのにも出た。猪やった。弱かったし、晩飯ように血抜きしとった」
「大体太一だってぐっすり寝てなきゃこんなの倒せただろうに」
プンプンと怒りながら青が言う。
とりあえず謝っておく。
「しかしよく言葉が通じたな。ファンタジーな狼だからか?
誰か他にこの島でしゃべってる声を聞いたやついるか?」
ゴンゾウさんにそう聞かれたけど、魔物以外で見かけたものがなかったんだって。
「なんかきたぞ」
竜爺が目をすぼめて島の中央を指差す。
だんだんと近寄ってくるそれはイーズで、その背中に誰かが乗っている。
それから少し遅れて馬に乗った人が追いかけてきた。
これがスタング男爵と初めての出会いだったんだ。
「すまんな、皆城に避難しているのでたいしたものが出せない。モーモーのミルクでも飲んでくれ」
「いただきまーす」
ごきゅごきゅと音をたててカップに入ったミルクを飲み干す。
ずっと外にいたから喉乾いてたんだよね。
「うまぁい!あれ?みんな飲まないの?美味しいよ」
監視隊の皆は唖然と僕を見てる。
「口にあったようでよかった」
スタング男爵が僕を見てニコニコと笑う。
あの後、イーズが連れてきたこの島の領主であるスタング男爵、そして護衛の人と一緒に、牧場にある食堂で話すことになった。
「変なものなんて入れてないぞ。それとも目の前で乳しぼったほうがいいか?」
テーブルの近くの床に寝そべったままのイーズが、くわっと大きく口を開けて言った。
「いや、わしもいただこう」
村長もグビグビとミルクを飲み、全員が口をつけたところで、イーズは大きな口を閉じた。
「さて、どこから話すべきか……」
スタング男爵はカリカリと豊かな水色の髪が生えた頭を掻いた。
こっち側の一番偉い人だからイーズみたいに獣人かと思ったんだけど、まだ若い男の人だった。
うちの村にいない三十代の若い大人。
護衛の人もたぶん同じくらいかな。その人は見事な赤毛で碧眼なの。こっち側の人はカラフルだ。
「この島はもともと浮き島であってな。何百年も空にぷかりぷかりと浮いておったのだ」
「空島だったんだ。すごいなぁ。見てみたかった」
アニメみたいだと僕が目を輝かせると、ぽそりと青が突っ込む。
「浮いてたのはちょっと見ただろう?」
「見たってすぐ落ちちゃったじゃん」
落ちたと僕が言ったら男爵が渋い顔をした。
「そう、落ちた。残念ながらな。
出来るだけ影響がでないように城にあった魔道具全部動かしてな……。
なんとかゆっくり落ちたので、うちの領民は全員無事だった。
そちらの被害は?」
「まだ調査中じゃが、人はみんなぴんぴんしとるし、建物は空き家が倒壊したぐらいじゃ。こっちの山は土砂崩れが起きてるが、人は住んでおらんから大きな問題はない」
「土砂崩れか…迷惑をかけてすまん」
「お互い人的被害がなくてなによりじゃ。おかげで落ち着いて会談ができる」
「そうだな。本当によかった」
村長の話を聞いて男爵はほっ息を吐いた。
「ところでお主たちどこから来た?この世界に空島なんぞ、空想の産物しかないぞ」
「想像の産物か。
たぶん私たちは別の世界に住んでたいたのだろうな。
イーズから聞いたが、この国はニホンというそうだな。我らの世界では聞いたことがないし、黒目黒髪の民も初めて見たわ。
なぜ異世界に島が移動したのか?なぜ墜落したのか?こちらも把握できていないのだ。
気がついたときには落下が始まってな。先祖がつけた念のための保険であったはずの魔道具が作動して、落下速度を押さえることができたのが本当によかった。さすがに焦ったわ」
やっぱり異世界か。
はやってるから僕でも知っている。
ワクワクするね!
「ちょっといいですか?
それならなぜ言葉が通じているのかな?」
村長と男爵の会話にゴンゾウさんが割り込む。
むむ。僕も聞きたいこといっぱいあるよ!
「この指輪の魔道具で、貴方がなにを話しているかわかる。異世界の言葉まで翻訳されるとは思っていなかったが、大変助かっている」
「魔道具?いや、なるほど。その魔道具は住民全員が持ってますか?」
「いや、数が少ないのでね。私の家族とイーズだけだ。貴方達との話し合いの窓口は基本的に私かニーズで対応する」
「わかりました。魔道具ついでに質問します。あなた達は魔法を使える?」
ゴンゾウさんいい質問!魔法気になるよね。
「使える。この島では。ただし、島を出ると使えないようだ。そうだろう?イーズ」
「ああ、使えないことを俺が確認した。さっきそこの坊主を助けたときにな。魔物に使おうとしたが、魔法が使えなかった」
「じゃあここなら僕も魔法が使えるかもしれないの?」
「太一、その話は検証も絡むし、長くなるから後で」
「はぁい」
気になって思わず口に出しちゃったよ。さすがに僕もここで魔法のうんちくを聞く気はないよ。落ち着いたらね。
あとで青に教えてもらった。ゴンゾウさんが空島の人が魔法が使えるか確認したのは、脅威度をはかるためだったんだって。魔法って未知なものだからね。
僕は不思議いっぱいな新たな隣人に浮かれてたけど、皆は厳重警戒体制だった。
男爵やイーズは悪い人に見えないけど、全員がそうかわからないから。調査にきているの忘れてるだろうって怒られた。
それからお互いの街や村の規模や住人の数。軍隊の有無の確認に入る。
男爵領はいままで空島だったから、国境を守る騎士団とかなかったんだって。
その話しぶりから騎士団をたぶん作るんだろうなと僕は理解した。
「さて、次は魔物について聞きたい。どのような魔物がいるんじゃ?動物との違いは?」
「魔物と動物の違いは魔力を使うかどうかだ。
身体強化したり、風魔法を使ったり。
あとどちらかというと、魔物の方が動物より攻撃的だ。もちろん普通に攻撃してくる動物いるし、おとなしい魔物もまれにいる。モーモーとか」
「その魔物の危険度がどのくらいのものなのかピンとこない」
「我が領いる魔物はそれほど強くはない。
そしてそちらの土地では魔法が使えないので、魔物本来の力は出せず、ただの動物と変わらないだろう。
そう考えると一番厄介な魔物はレッドベアになる。赤毛の体長三メートルの熊の魔物だ。
その魔物だが、イーズからそちらに何匹かまぎれこんだと聞いている。
申し訳ない。
まずは魔物避けを渡すので、そちらの村の手前辺りで焚いていただきたい。大抵の魔物はそれで近寄ってこない。
それと早めにこの領の境界に城壁を作るつもりだ。それができれば、我が領に空飛ぶ魔物はおらんので、魔物の流出が止まるはすだ。
貴方とは仲良くやっていきたいと思っている。
もしそちらの地に立ち入り可能であれば、すでにそちらにまぎれこんだ魔物を、責任をとって我らが探しだして討伐する。どうだろうか?」
男爵は深々と頭を下げて謝罪した後、村長にそう尋ねた。
「謝罪は受け取る。魔物避けはいただこう。だがこちらへの立ち入りはしばらくは遠慮してもらおうかの。熊が一番厄介であるなら、ワシらで倒せるしの。
ところで城壁なんちゅうもんは、作るのに時間がかかるのではないかい?」
「総員して魔法で作るので三日程でできる」
「ふむ。便利なものよの。
まずは魔物避けをもらおうか。一度村に戻って設置したい。魔物は思ったより弱いようやし、城壁はそんなに急がんでええ。他にやることがたくさんあるしな。
わしらも詳細な被害状況の確認もあるし、次の話し合いは明日でよいかの?」
「では明日昼にまたここで話し合おう」
とりあえずはじめての顔合わせは、こんな感じでは終わったんだ。
僕は魔法とかいろいろ聞きたいことがあったんだけど、今日はまだやることがお互いにいっぱいあるから我慢した。
村に戻った僕らを待ち構えていたのは、知らないおじさんだった。




