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聖女様と騎士様

お待たせしました、最終回です!

 

「つ、疲れた……」


 私はよろよろとソファーにかけより、すぐに力尽きたように倒れ込む。そんな私の隣にノアが腰を下ろす。さらには頭まで撫でられて。


「ふふ、お疲れさま」


 私はそれにはあえて返事をせず、伏せたままだ。

 両思いになったとはいえ、私の忙しさは変わらない。王妃教育は相変わらずだし、むしろ結婚まで残り1年となって拍車がかかってるようにすら思う。

 今だって重鎮たちが集まる会合に参加してきたばかりなのだ。


 しかしこれ以上のことをこなすノアには文句なんて言えない。むしろ増していく輝きと好きという気持ちに押しつぶされそうなのだ。


「いつまでもそうされていると悲しいなあ」

「……距離がね、距離が近いと思うんです。人前でやられるとせっかくぼろが出ないように頑張っているのにだめになってしまいます!」

「別にいいんじゃない? むしろ見せつけたいからやってるんだし」


 ノアは全く悪びれる様子もなくそう微笑んだ。


 あの日ノアが言った「愛の重さ」は尋常じゃなかった。お偉いさんたちや生徒の前であっても平気で「可愛い」などと惚気を言い、いちゃつくことも気にしない。

 初めこそ女子たちの嫉妬の対象だったけれど、今ではノアのイメージと違いすぎる溺愛っぷりに私を応援する声が上がるくらいになった。

 オードリーとクララには「頑張れ」と言われ、ケイトには惚気るノアからいつも匿うよう頼まれてしまう。


「照れているエラも可愛いよ?」

「すぐそういうこと言うんですから……」


 いじわるなことを言うときは、相変わらずノエルの雰囲気が強くなる。ノアは完璧イケメン王子だけでなく、やんちゃな一面すら持ち合わせているらしい。


 それと、ノアはどうやら私が振り続けたことをけっこう根に持っているようだった。ことあるごとにその話を持ち出してくるから困る。


「いいんですけどね、私も好きですし……」


 それでもやられっぱなしみたいで納得がいかない。




 ***




「ノエル! シールドをお願い!」

「任せてよ!」


 分厚いシールドが張られて、私が祈る。

 あっという間にシャドウは消えて私たちはほっと息をつく。


 あれから数時間後、ノアとはお互い用事があり分かれたのだけど。


「ふふ、嬉しいな。今日はもう会えないかもって思ってたのに。ノエルになれるって最高」


 ノエル――ノアは私の髪を手に取ってキスを落とす。相変わらずの流れるような動作に、今では少し慣れつつある。本当に幸せそうに笑っていて、その気持ちは真実なのだと私まで嬉しくなってしまう。


「私も。会えて嬉しい」

「え、ちょっと……その顔は反則」


 見ればノアは顔を赤らめている。普通に笑ったつもりなのだけど、どうやらよく効いたらしい。

 私はそうだ、と閃いてそれからによによ笑う。


「はあーあ。私、もっとあなたと一緒にいたいのに。だって私、あなたのこと大好きなんだもの」

「待って、追い討ちかけてこないでって!」

「ノア様大好き」


 顔を覆い隠すノアを見て私はくすくすと笑ってから、ダメ押しで耳元で囁いてみた。

 鼻血を出して倒れるノアを想像してちょっと面白くなっていると、がっと手首を掴まれた。


「ちょっとそろそろ我慢できなくなるけど、いい?」


 にこやかな笑顔にさっと青ざめ、大人しく調子に乗ったことを謝った。ノアは「わかってくれればいいよ」とぱっと手を離す。


「でも、今言ったことは全て本心よ?」

「ううーん……これだからエラは……」


 ノアはどこか呆れたようにしながらも、仮面越しでも照れているのが伝わってくる。


 私も、やられっぱなしってわけではないのかも。

 くすっと笑えば、ノアは少しもじもじしながら私を見る。


「その、不意打ちじゃないなら、いつでも言ってほしい……だめ、かな?」


 全くこれだから……そんな風にそんな顔で言うなんてそっちの方がよっぽど反則だと思う。

 けれど、私だってノアが大好きなのだ。だから、本人が言っていいならいつだって言いたい。


「私も人前でじゃないなら……いつでも」

「本当に? 言質とったよ?」

「人前はだめだから!!」


 ノアは食い気味に尋ねてから、「ううん、どうしようかな」なんて私をからかう。


 そんなこんなでいつものように軽口の言い合いになり、しばらくしてノアが「そろそろ時間だ」と呟いた。


「もう行かないと。君と明日まで会えないなんて辛いよ」

「あら、考え方を変えてみたら? 私は明日も会えると思うと頑張れるわ」

「そうだね、そうか」


 ノアはそう納得してから私の手を取った。例の如く流れるような動作で私の手の甲に口付けをする。


「またね、愛しの聖女様」

「ええ、また明日ね、私の騎士様」



 私は未来の王妃で、国を守る聖女様。

 そんな私の旦那様は未来の国王様で私を守ってくれる相棒の騎士様。


 正体を明かしあってますます絆が深まって以前よりも格段に強くなった私たちは、明日もまた国を守るために奔走する。


 ただ、もうちょっとだけ、いちゃつくのには勇気がいる……かも。


本編は完結となります。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!

何話かおまけ話を用意しています。そちらもお付き合いいただけると嬉しいです!

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