その3
11月14日
帰ってきたと思ったら家の前に職場の同僚がいて、無言で肩を叩かれた。
「用事は終わったのか」と聞かれたので「ご迷惑をかけました」と言うと、
「あぁ、やることは山積みだよ、マスター」
どうやら私が居ない間に療養中だったマスターが腰痛の悪化により辞職したらしい。
そして、くじ引きで次のマスターが決まったのだと言う。
勤続年数じゃないのかと問い質すと、ギルド【サザンクロス】伝統のクジ引きだそうな。
どんな罰ゲームだよ。
良い事:ムラタさんを取り戻した。
悪い事:ギルドマスターになってた。
業務内容は今までと同じでいいから、とりあえずギルマスになってくれと言われた。そんな適当でいいのだろうか。
まぁ今更か。
元々ギルマスも不在だったんだし、何も変わらないだろうな。
どうせ仕事も山ほどあるんだろうし、明日は明日で頑張ろう。
11月15日 朝焼けが綺麗だった
やつらは本気だ 。
11月16日
ギルド対抗の運動会を実施すると、ギルド協会から通達があった。ギルド間の交流を深めるのが目的らしいが、この人手不足の中、やつらは阿保なのか?
残念なことに、我がギルドに登録している冒険者たちは暑苦しいほどに脳筋ばかりだ……
ただの殺し合いになるのは目に見えている。
11月17日
カトリナの海に、巨大な化け物が出るらしい。
絵を描いてもらったら、8本足の軟体生物……
タコだった。
(タコ焼きの絵らしきもの)
たっぷりソースのかかった、タコ焼き食べたい。
塩を振りかけるのもありだな。学校帰りに食べた、たこ焼きが恋しい。おっちゃん元気かなぁ……
11月18日
芋煮会をするらしい。ムラタさんに誘われたが、休日と重ならなかったので断念した。
ギルドを無法地帯にするわけにいかない。
11月21日
母が見合い話を持ってきた。そうか、永久就職という手もあるなと思って快諾し、ドキドキしながら待っていたのだが、相手を見てちゃぶ台返しした。
お相手は勇者でした。最近見ないと思ったら、母を丸め込んでいたらしい。
「どんどん可愛くなっていくから他の男にとられないか心配で……」
勇者の妄言に、思わず白い目で見てしまった。
やつれていく、の間違いだ。
やっぱり、人生って甘くない。
11月22日
(解読不能の字が綴られている)
11月23日
私は昨夜、何を書こうとしたんだろう。気がついたら、机の上に突っ伏して寝てたんだよね……
11月24日
ギルドに行く途中の道に、還暦を過ぎたぐらいのお婆ちゃんがいる。
どうも、頭がボケかかっているのか、いつも同じことを聞かれる。
「あなた、どこの家の子?」
「あそこは幽霊屋敷なのよ」
と、会うたびに言われる。彼女の友人がそこで亡くなったそうだ。
引っ越せと言いたいのだろうか……
11月25日
どんなに忙しくとも、依頼は厳正に審査する。
この間見て却下した依頼はこれだ。
「 彼氏募集中 ※ただしイケメンに限る
当方 魔法使い 容姿端正 18才 」
気持ちは分かるが、ギルドは出会いの場ではない。
11月26日
ムラタさんが、差し入れをしに来てくれた。
新品種だとのこと。
美味しいけど、見た目がグロい。愛情をこめて育てたからとムラタさんは豪語するが、食べたら叫ぶ芋って、見たことも聞いたこともない……
恐るべし異世界流遺伝子操作術……
ムラタさんは時々、とんでもないことをしてくれる。
11月28日
冒険者の通報で、暗闇の洞窟に行ったら、地形が変わっていて愕然とした。
急いでギルドに戻り、寝る暇を惜しんで報告書を作成した。
満月の夜には水晶が青く光って綺麗だったのに、もう見られないなんて、怒りしか込み上げてこない。
12月1日
違法盗掘の犯人が捕まったらしい。
生活が苦しいならともかく、遊興費のためとか、許せん。
今後の見せしめ的な意味でも厳罰を求める。
12月3日
新人が3人きた。
初日で2人辞職。
あと1人は今のところ超元気だけど、何日持つか賭けの対象になっている。
なんとか生き残って欲しくて、頑張っている最中に縁起でもないことはやめていただきたい。
12月4日
ゴンザレス夫人が、「いい男いないかしら?」って言うから、勇者をオススメしてみたが、「年上がいいわ」と言われた。
勇者のハートを射止める猛者は居ないものか……
12月5日
額に傷のあるナイスミドルの凄腕剣士さん、見るたびに生傷が増えているので、どんな強敵と戦っているんだろうと気になっていたら奥さんにやられているとのこと。
女は強いな。
12月9日
天気が急変して、ずぶ濡れに。
せっかく買った大福がベチャベチャになった。
悔しい。
12月10日
漢字ど忘れした。
たしか常用漢字じゃなかったはずだけど、どんなんだっけ。いまさら調べようもないから、仕方のないことだが、やけに気になる。
12月15日
また、衝動買いをしてしまった。色々と物入りな師走だというのに、誘惑の魔の手が多くて困る。




