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たゆたうもの  作者: karon


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前編

 秋晴れの中、私はタクシーを降りた。目の前に石碑が建てられている。

 温泉の起源とその効能を記されている。

 なんとなくそれを眺めていた。そして前方を見れば瓦屋根が見える。これから休日を過ごす温泉旅館だった。

 大きく伸びをして歩き始めた。

 私のような職業は土日曜祝日に休めることはほとんどない。

 過酷な書き入れ時の八月七月を乗り切ってようやく取れたまとまった休日にちょっとだけ張り込んだ高級温泉旅館。

 ここは紅葉を自慢としている庭園があるが、まだ秋は浅くまだ青紅葉のほうが多い。

 もう少し秋が深まってくることが見ごろらしい。だがだからこそ安かった。それにその日付はすでに予約で埋まっているらしい。

 シーズン外れだからこそ私の薄給でもこの高級温泉に宿泊できることができたのだ。

 チェックアウトを終えて部屋に荷物を置いて浴衣に着替え庭園を散策することにした。

 土産物を売る店はここから少しだけ離れた場所にある。騒音を抑えるためだろうか。

 宿泊予定は二泊三日、今日はゆっくりし、買い物は明日にしようと私は庭園を散策することにした。

 庭園の目玉である紅葉の巨木とそのすぐそばに池があった。

 梢が池に映りこんでその間を錦鯉が泳いでいる。

 紅白の魚、金色の魚、黒い魚。それがゆったりと泳いでいた。それが紅葉の枝をすり抜けるように見えた。

 まるで魚が空を飛んでいるような光景をしばらく眺めていた。

 紅葉はまるで爪紅を刷いたようにほんのりと染まりつつある。

 まだ暑さも感じるがそれでも不意に鈴虫の鳴く声が聞こえてきた。

 風はほんのりと冷たく感じた。

 しばらくそうして池のほとりにたたずんでいたが日が暮れるタイミングで湯につかることにした。

 湯上りに夕飯をいただくことにした。




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