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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第一章 誕生『神速の配信者』
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第9話 『蒼氷の聖女』と『龍殺の守護者』

 

 青羅・バーンシュタイン。


 この国に所属する、もう一人のSランク冒険者だ。


 ――とはいえ、正確には少し事情が違う。


 冒険者登録こそ日本で行っているものの、基本的に自由気ままに活動しているアイリーンさんとは対照的に、青羅さんは日本政府と正式契約を結び、専属冒険者として活動している。


 政府公認のSランク冒険者。


 そういう意味では、彼女こそ唯一無二の存在と言えるだろう。


 その圧倒的な実力と、誰よりも人命を優先する戦いぶりから授かった二つ名が――『蒼氷の聖女』。


 ダンジョンで彼女に命を救われた冒険者は数え切れない。


 感謝と尊敬の念を込め、人々がいつしか彼女を『聖女』と呼び始めたことが、その由来らしい。


 一方で、アイリーンさんの二つ名は『紅蓮の魔女』。


 こちらは、強力すぎる範囲魔法で敵ごと周囲の冒険者までまとめて吹き飛ばしてしまうことが多く、その被害者たちが半ば恨みを込めて『魔女』と呼び始めたことが由来だ。


 ……うん、見事なくらい正反対である。


 ということは、もしかして――。


 「あらあら、セイラさん。突然現れてグランドダンジョンへ同行するなんて、どういう風の吹き回しですか?」


 「いえいえ、鏑木支部長から直々に依頼をいただきましたの。厳重に管理すべきグランドダンジョンへ、道理を弁えない野良冒険者が挑もうとしているから、ぜひ補佐してほしいと。ですから、仕方なくご一緒させていただこうかと思いまして」


 「へぇ……道理を弁えない野良冒険者、ですか。それを鏑木支部長がおっしゃったんですねぇ」


 笑顔……確かに笑顔なのに、部屋の空気が一瞬で冷え込んだ気がした。


 アイリーンさんがそのまま鏑木支部長へ視線を向ける。


 「なっ!? 私はそんなことは一言も言っていないぞ!」


 鏑木支部長が慌てて否定する。


 その様子を見て、セイラさんは口元を押さえながら楽しそうに笑っていた。


 ……なるほど、間違いない。


 この二人、仲が悪い。


 いや、かなり悪い。


 「お嬢様、その辺りになさいませ。これからはアイリーン様とも共に戦うことになるのですから」


 そこで、隣に控えていた男性が静かに口を開いた。


 「ああ、申し遅れました。私、轟清十郎と申します。青羅・バーンシュタイン様の執事兼護衛を務めております」


 深々と一礼するその姿には、一切の隙がない。


 ……轟清十郎。


 その名前、どこかで聞いたことがあるような――。


 「ちなみに、清十郎は冒険者としても活動しておりますの。Aランク冒険者、『龍殺の守護者』と申し上げれば、ご存じではありませんこと?」


 「り、『龍殺』!? あの龍殺ですか!?」


 思わず身を乗り出してしまった。


 「そう言われれば……ああっ! 本当にご本人だ! お、俺、ファンなんです!」


 「あらあら。清十郎、ファンの方ですって。後でサインでも差し上げたらいかがかしら?」


 「かしこまりました」


 「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」


 思い出した。


 伝説の動画――『ダンジョンから這い出た地龍を討伐する守護者』。


 再生回数一千万回を突破した、あまりにも有名な配信だ。


 巨大な地龍をたった一人で迎え撃ち、最後には見事討ち果たす。


 あの映像を見たからこそ、俺は配信者を目指そうと思った。


 人々の心を震わせる映像を、自分も届けたい。


 そう強く思わせてくれた憧れの人物が、今まさに目の前にいる。


 興奮しないわけがなかった。


 「そういう君が最近話題の『神速の配信者』だね。名前は確か……」


 「草薙ハヤトです! よろしくお願いします!」


 「うん。よろしく」


 「草薙さんですわね。こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ」


 改めて二人と握手を交わす。


 「よし。これで顔合わせは済んだな」


 鏑木支部長が場を締めくくる。


 「色々と思うところはあるだろうが、グランドダンジョン攻略は、この四人で挑んでもらう」


 その言葉に、アイリーンさんだけが少し不満そうな表情を浮かべた。


 ……やっぱり気になる。


 二人の間には、一体どんな因縁があるんだろう。


 いつか本人たちから聞ける日が来るといいのだが。


 ◇ ◇ ◇


 その日の話し合いは、それで終了となった。


 グランドダンジョン攻略の詳細は、後日【ダンジョン統括省】から正式に通知されるらしい。


 俺たちに伝えられたのは、それまでに各自準備を整えておくことだけ。


 結局、なぜこの四人が選ばれたのか、その理由は最後まで明かされなかった。


 ……まあ、多分、アイリーンさんの暴走を止める人員なんだろうな。


 そこまで警戒されるグランドダンジョンとは、一体どんな場所なのだろう。


 ダンジョンデビューして、まだほんの数か月。


 そんな俺には、周囲の状況があまりにも急激に変わりすぎていて、正直ついていくので精一杯だった。


 それでも――ここまで来た以上、立ち止まるつもりはない。


 アイリーンさんと一緒なら、きっとどこまでだって行ける。


 俺は静かに拳を握り締め、新たな決意を胸に刻んだ。


 そして数日後、


 【ダンジョン統括省】は緊急記者会見を開き、グランドダンジョン【星崩の大魔宮】へ挑む攻略メンバーを正式に発表した。


 選ばれたのは――


 【『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』】


 そして、


 【『蒼氷の聖女』と『龍殺の守護者』】


 この二組、四名による合同攻略チームだった。

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このパーティー編成は期待しかありませんね(笑
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