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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第17話  規格外の『大賢者』


 ――とある超級職の話。


 この世界の冒険者は基本的には下級職から始まり、上級職になり、そこから厳しい条件を経て最終的には超級職を目指すことになる。


 前述の通り、通常ならば困難なレベリングや実績を要求されるため、超級職にまで至れるのはほんの一握り。

 そのため、冒険者たちにとって超級職は憧れの存在となっている。


 そして、超級職になれる者たちの中にも振り分けが存在しており、就くことが可能な候補として提示されるのは、本人の適性や経験によって左右されるのは前述の通り。



 ……しかし、中には例外も存在している。



 それは、生まれた時から超級職となることが決められている存在。


 ある者は生まれながらに凄まじく強靭な肉体を誇り、またある者は生まれた時点で規格外の魔力を宿している。


 そうした者たちを世間ではギフテッドや天才と呼ぶことも多い。

 超級職の中には、このような選ばれた者たちのみが就くことが可能なものも存在している。


 『勇者』や『大神官』、『大賢者』などといった一部の超級職は、なれる資格の所有者が生まれながらに決められてしまっているという残酷な事実が存在しているのだ。


 アイリーン・スカーレットは生まれながらに『大賢者』となれるほどの魔力を持っていた。

 それこそ、他の冒険者がどれだけ努力を重ねても、足下にも及ばないほどに。


 そんなアイリーンが何故、超級職『大賢者』に就きながら、『紅蓮の魔女』という通り名を持つSランク冒険者となるのかは……


 まだ明かされる時ではない――


 ◆


 

 俺は、アイリーンさんのジョブがまさかの『大賢者』だったことに驚きを隠せなかった……


 だって、『大賢者』といえば、あらゆる属性の攻撃魔法や回復魔法を自在に使用することが可能な、魔導士系統の最高峰に位置するジョブだ。


 さすがの俺でもその存在くらいは知っている。


 しかし、アイリーンさんは『紅蓮の魔女』だ。


 炎系統の魔法を使用し、その規格外の威力で全ての敵を駆逐する。


 その姿は、俺が知っている『大賢者』のイメージとは凡そかけ離れているように感じる。


 「あの……びっくりしましたか?」


 「え?」


 「私のジョブが『大賢者』だと聞いた反応が、ちょっと意外そうだなと思って」


 俺の反応を見て、心の中を見透かされてしまったようだ。

 やはりアイリーンさんには隠し事はできないな。


 「そうですね。僕が知っている『大賢者』のイメージと、アイリーンさんの戦い方があまりにも違ったので、少し驚いてしまいました」


 俺は観念し、心の内を正直に話した。


 「つまり、私の戦い方が間違ってると?」


 「い、いえいえいえいえ!そんなことは全く考えてませんよ!」


 「ちょっとちょっと、そんな意地悪な言い方しないの。ハヤト君、困ってるじゃない」


 「ああ、はい、そうですね。すいません」


 俺の狼狽ぶりを見て助け舟を出してくれたかすみさんに嗜められて、笑いながらペロッと舌を出すアイリーンさん。

 あれ?ちょっとからかわれたかな?


 ちくしょう、小悪魔ぶりも可愛いじゃないか……


 「でも、ハヤト君の考えもあながち間違いじゃないのよね。確かに普通の『大賢者』の戦い方ってハヤト君が抱いているようなイメージ通りのものなんでしょうね。だけど、アイリーンの場合は、なかなか特殊な使い方っていうか……『大賢者』の全ての能力を火力に全振りしてるって感じ?」


 「なるほど……でも本当にそんなことって可能なんですか?確か『大賢者』って全ての魔法を使えるジョブだって聞いたことがあるんですけど、一体どんな使い方をしてるんですか?」


 「うーん、アイリーンの場合は、炎系統以外の魔法を覚える気がないっていうか……彼女の馬鹿みたいな魔力で無理やりルールを捻じ曲げてるっていうか……簡単に言えば、他の魔法に割くはずだったリソースを全てそっちにぶっこんでるって感じかな……それで合ってるわよね?」


 「はい、まあ大体そんな感じですね、説明ありがとうございます」


 そういうことか……

 それならアイリーンさんの規格外の火力も説明がつく。


 ……というか、それってかなり恐ろしいことじゃないだろうか?


 本来の『大賢者』の理を無理やり魔力で変更している……


 そんなことが可能な人間が存在しているんだな。


 本当だったら全ての魔法をバランスよく使役していたはずのアイリーンさんが、現在の火力専門になった理由は……


 やっぱり先日教えてくれた、『全てのダンジョンを破壊する】という目的が関係しているのだろう。


 今の段階では、さすがにそこまで踏み込んで聞き出す勇気は持つことはできない。

 しかし、いつかもっと深い部分まで聞くことが出来れば……


 アイリーンさんの表情を眺めながら、そんなことを考えてしまった。


 「やだなぁ、ハヤトさん。さっきから私の顔に何か付いてますか?そんなに見つめられたら照れちゃいますよ」


 「……!?い、いや!そういうわけじゃ!ちょっと考え事をしてまして!……す、すいません!」


 狼狽する俺を見ながらクスクスと笑うアイリーンさんは、いつも通りの平常運転だ。


 「あはは、変なハヤトさんですね。それはさておき、早くもう一つの検証に移っちゃいましょうよ!」



 「……あ。は、はい!それじゃあもう一つの……最高位神器グランドレガリアの検証を始めます!」



 アイリーンさんに指摘されて、アイテムボックスから『七星剣・セプテントリオン』を取り出す。


 世界に数えるほどしか存在しない最高位神器グランドレガリア


 俺は緊張しながら新兵器を検証することにした――

 

次回、いよいよ七星剣のお披露目です!


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