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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第16話 検証


 「あああああアアアアアアアア!!!!!イライラする!!!!糞が糞が糞が糞が糞がぁあああアアア!!!!」


 ここはとあるダンジョン内部……


 このダンジョンは幾つもの廃墟が連なった巨大都市で構成されている。


 その都市部の最奥部に聳え立つ一際巨大な城のような建造物……その内部にある玉座の間。


 朽ち果てた玉座にもたれ掛かるようにしながら、モンスターが苛立ちの声を漏らし続けていた。

 そのモンスターは大柄な体躯に巨大な一本角を携えた、屈強な鬼のような風体をしていた。


 その玉座の傍らには、モンスターがもう一人、こちらは一見して優男風の美少年のような姿をしているが、その頭部には角が生えている。

 云わば玉座にいるのが大鬼、その傍らに控えるのが小鬼と言ったところだろうか。


 先程からヒステリックに騒ぎ続けている大鬼の様子を見つめながらため息を吐いている。


 「あの……さっきから一体何を苛ついているんです?我らが王たるあなたがそんな苛々をぶつけて……見てられませんよ、全く……」


 「うるせえんだよぉおおお!!!!糞が糞が糞が糞がぁあああアアアアアア!!!!!」


 「ああああ!!!うっさいなぁもう!!!!ったくよぉ!!!!不満があるなら言ってくださいよ!訳も分からず隣でギャアギャア騒がれたらうるさくて仕方がない!本当にあんたは迷惑な王ですよね!?」


 「だってよぉ!こんなに暇で暇でよぉ!せっかくやっと出番が回ってきたと思ったのに、戦えるのはまだまだ先だときやがった!これが苛々せずにいられるかよぉ!糞がぁああああ!!!!」


 小鬼はやれやれとまた一つため息をついた後、自らの主君である大鬼の苛々が止まらないばかりか、どんどんエスカレートしていく様子を冷めた視線を向けた。


 「はぁ……超めんどくさいんですけど……こんな分からず屋に無理やり遣わせられるなんて、本当についてないや……」


 自らの不幸を存分に嘆いた後に、咎めるような真面目な声で。


 「あなたは、曲がりなりにも我らの一族の王なんですから……もうちょっとしっかりしてもらわなければ困ります。『修羅皇・大凶丸おおまがまる』様」


 「……うるせぇ!じゃあさっさと相手を連れてきやがれ!ったくよぉ……」


 「心配せずとも、そのうち存分に戦えますよ!だってあなたは、世界中の敵……『統率者』なのだから」


 「……ふん!」


 「ああ、また拗ねた!本当に面倒くさい王だなぁ……」


 玉座にドカッと座り直し、宙を見つめる大鬼はいずれ出現するであろう強敵を待ちわびるように呟く。


 「……ああ、早く来やがれ……ウズウズして溜まんねぇなぁ!」


 まだ見ぬ『統率者』の一柱たる屈強な大鬼が、冒険者たちと相まみえるのは、もう少し先の話となる……



 ◆


 

 そして舞台は冒険者ギルド第二支部内部の応接室へ戻る……


 「……というわけでSランクダンジョンへ乗り込むのは明日の朝になるわ。疲れてるところ申し訳ないんだけど、あなた達には今日中にダンジョンが出現した沖縄の方へ向かってもらう必要があるわ」


 たった今、無事に超級職『配信王』となった俺は、今後の予定に関してブリーフィングに参加していた。


 現在この場にいるのは、俺とアイリーンさん、そしてかすみさんと陸奥さんの四名だ。

 鏑木支部長は、何やら怒りながら応接室を出て行ってしまったので、残ったメンバーでブリーフィングを開始したというわけだ。


 かすみさんの説明によると、俺とアイリーンさんは明日の朝から沖縄に新たに出現したSランクダンジョンに挑戦するらしい。

 本当は、今日一日はゆっくりこっちで休んでから明日沖縄へ向かう予定だったのに……


 色々とイレギュラーが起きたせいで、予定が早まったらしい。


 さすがにもう少しくらいは休みたかったんだけどなぁ……


 雇われ冒険者はつらいぜ全く。


 ちなみに、隣のアイリーンさんは見るからに不機嫌な表情でむくれている。


 先程のブチギレ案件に加えて、貴重な休暇を削減されてしまったのだ。

 怒るのも無理はない。

 頬っぺたを膨らませながら怒っているアイリーンさんは正直可愛いが……


 「はい、それじゃあ時間が来たら迎えをよこすから、それまで自由時間にするわね。飛行機はおおよそ五時間後には出発するから、迎えが来るまでは逆算して四時間くらいはあるわね。二人が休むための部屋は用意しといたから、ゆっくり過ごしてくれるかしら」


 今後の予定を簡潔に述べ、部屋を出て行こうとするかすみさんを……


 「ちょっと待ってください!」


 済んでの所で呼び止めた。


 「ん?ハヤト君、一体何かしら?」


 「あの、それだけ時間があるんだったら冒険者ギルドの訓練場を貸してもらいたいんですが……『配信王』とかグランドダンジョンの報酬なんかの検証をしておきたくて……」


 正直、疲れは残っているが、新たな能力や装備の検証くらいならば問題無いだろう。


 俺の言葉に、少し嬉しそうに微笑んだかすみさんの案内を受けて、冒険者ギルドの訓練場へ向かった。



 ◆


 

 「はい、ここがこのギルドの訓練場よ、今は誰もいないから好きに使って良いからね」


 かすみさんと陸奥さんに案内されてやってきたのは、だだっ広い野原のような場所だった。

 

 なるほど、ここならさまざまな検証を行うのに最適だな……


 よし、ここで『配信王』の能力と、『星崩の大魔宮』踏破で獲得した神器なんかの検証をやってしまうか!


 ちなみに、アイリーンさんも付いて来てくれている。

 かなり睡魔に襲われているようだが、さすがに新たな超級職と最高位神器グランドレガリアへの興味が勝ったみたいだった。


 まあ、俺も自分の新しい力をアイリーンさんに見てもらいたい気持ちは大きかったので、ちょうど良かったと思う。


 「さてと、まずは『配信王』の能力を見てみるか」


 自らが就いているジョブのスキルや能力は端末で確認可能だ。


 

 ――――


 草薙ハヤト


 ジョブ: 配信王(超級職) レベル 18


 スキル: 配信精度補正(極大)

      配信中ステータス上昇(極大) 

      ドローン精製

      真・配信術

      ???? 

      ????

      ????


 おお……何か色々と尋常じゃないスキルが……


 それぞれのスキルの詳細を端末で確認することにした。


 配信精度補正(極大)……配信時のブレ、ラグ、音声のムラ等が一切無くなる。


 ……うん、これぞまさに『配信王』。

 ある意味俺からしたら最高の能力だな。

 これで視聴者の皆もストレスなく俺の配信を楽しんでくれるだろう……


 ……うん、わかってたさ!だって俺は『配信王』だもの!

 こういう能力もあるさ!


 次いこう!次!



 配信中ステータス上昇(極大)……配信を行っている間に自らの全てのステータスが超大幅に上昇する。



 ……おおおお!!!!


 こういうのを待ってたんだよ俺は!

 やればできるやんけ!


 このスキルならば戦闘にも配信にも絶大な効果を発揮することが出来るだろう!


 いやぁ、これぞ超級職だな。


 さて、次行ってみようか!


 ドローン精製……配信用ドローンを自らの魔力を使用して精製可能となる。ドローンの性能は魔力量に比例する。


 真・配信術……配信用の機器を使用せずとも、自らの視界を使用して配信が可能となる。ドローン精製を使用して作成したドローンに限り、配信映像の切り替えが可能。



 ふええ……


 この二つは配信者としては神の領域に達したと言えるほどのスキルだな。


 ドローン精製があれば、もう高価なドローンを購入する必要が無い。

 破損や紛失の心配も無くなる!


 今は『神式配信セット』なる最高級配信機器を使用しているので、少々もったいなく感じるが、将来的には間違いなくこのスキルに頼り切りになるのは間違い無いだろう。


 真・配信術に至ってはもはや原理がわからん!

 俺の視界を通じて配信が可能だとか……


 まさに人間配信マシン!略して『配信王』ってことか!


 駄目だ!

 神スキルがてんこ盛りでテンションがおかしくなってきてるぜ……


 危ない危ない、ここで一度深呼吸をしておくか………………よし、落ち着いた。



 ここまでは文句なしの性能だった。

 戦闘に関しても配信に関しても間違いなくパワーアップしていると言えるだろう。



 ……問題は。


 残りの三つのスキルだった。


 ????ってなんだろうね?


 恐らく何らかの理由で解放されていないってことなんだろうが。


 解放トリガーは一体何になるんだろうか?


 かすみさんやアイリーンさんに一度聞いてみようかな?


 

 ……とりあえず、『配信王』のスキルに関しては一通り確認できた。


 ????という不可解な部分はあるが、これもいつかは解明されるのだろう。


 それを除けば間違いなく大幅なパワーアップに繋がっているので、大満足と言える結果だった。


 俺は端末で得た情報をアイリーンさんたちに伝えた。


 「へえ、凄いじゃないですか!これでハヤトさんの配信もさらにパワーアップしますね!」


 「『配信王』なんかになって一時はどうなることかと思ったけど、そこまで悪くはないじゃない。ちょっと安心したわ」


 アイリーンさんとかすみさんにも概ね好評を得ることが出来た。

 よし、じゃあこれで『配信王』の方の検証は終了だな……


 じゃあ次に獲得した報酬の方に移ろうかな……


 と考えたその時に、ふとアイリーンさんのことが気になった。


 そういえば俺、アイリーンさんのジョブを知らないや。

 超級職なのは間違いないのだろうけど、不思議と今まで聞いたことがなかったことに気が付いた。


 これまで確認しなくても何の問題もなかったので、知らなくても特に問題もないのだが……


 気になってしまったものは仕方がない……


 ちょうど良い機会だと思い、一度聞いてみることにした。


 「あの、アイリーンさん。一つ聞いて良いですか?」


 「はい?何でしょうか?」


 「アイリーンさんのジョブって何なのか……聞いても良いですか?」


 「…………」


 俺の問いかけに対して、笑顔のまま何も答えないアイリーンさん。


 しまった……ひょっとして地雷だったか?


 何て考えていると……


 「うーん、全然教えても良いんですけどね……そうだ!ハヤトさんは私のジョブは何だと思います?」


 「え!?俺が当てるんですか?」


 「はい!その方が面白いと思って!」


 ……何とまさかのクイズ方式とは。


 えーと、俺が抱くアイリーンさんのイメージからして……


 『爆殺王』とか『焼死王』とか……


 「何か凄いひどいこと考えてません?」


 「い、いやいやいやいや!そんなことないですよ!」


 危ない危ない、心を読まれるところだった。


 こっちの方面の答えは危険だと考え、別の方向で真剣な答えを出すことにする。


 「……えーと、『紅蓮の魔女』だから『紅蓮王』とかですかね?」


 「うーん、違いますね」


 違うかぁ。参ったな、となると本当にわからんぞ。


 暫く頭を捻って考えてみても全く良い答えが浮かばなかった。


 「やっぱり難しかったですかね?」


 そんな様子を見かねてアイリーンさんはヤレヤレといった風な表情で話し始める。


 「すいません……正直わからないです」


 「『大賢者』……」


 「え?」


 「だから、私のジョブは『大賢者』です!ハヤトさんがお手上げみたいなので、もう答えを言っちゃいました!」


 アイリーンさんが俺の様子を見かねて答えてくれたジョブの名前は、俺の想像を超えたものだった。

 

????に関しては、また追々と情報を出していきますね。


次回はアイリーンの『大賢者』について!


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