背水の陣
現在 6人対6人。旗を狙う俺達に相手は全勢力で旗を囲んで挑んできた。
大和先生と押川の前に珀露達、三夜子と早山の前に緑羽達、そして俺と月乃の前には、
「こうしてまた月乃先輩と戦えるのは嬉しいです」
「一年のブランクはあるけど、アタシはそう簡単に負けないわよ」
横矢達が立ち塞がった。
二対二の構図が旗を中心に三ヵ所、横矢達は一人でも進ませたら旗を取られてしまう背水の陣だ。
しかし、バラバラに分かれている辺りやはりあの3人が曲者らしいな。
緑羽は前に立つ早山が持っているような短めの剣を、同じく前に立つ三夜子のように両手に持っている。ただ持っているだけなら構えで分かるがそれが無い。普段から二刀流なんだろう。
珀露は一般的な剣を両手で柄を握って持っているが、緑羽より構えに隙が無い。何か武道でも習っているんだろうか?
そして見た目だけで一番厄介そうなのが、横矢だ。構えも珀露以上だが、その手に持つ獲物が、
「本気で行かせていただきますよ、月乃先輩」
薙刀のような長柄の物だった。俺と月乃が持つ剣よりも倍近い長さの柄があり、リーチはかなり上。そしてあの言葉を言った横矢がアレを持っているということは、普段から使い慣れている獲物だということだ。
「当たり前よ、アタシだって本気で行くんだから」
月乃が剣を構える。確かにブランクこそあるが、『剣の舞』が代わりになるだろう。
「行きます!」
横矢が前へ出た。隣に立つ中学生も横矢の少し後ろをついてくる。
「悪いわね創矢、緋鳴はアタシとのサシを望んでるわ」
「お前が、だろ? もう一人は任せろ」
横矢と月乃の獲物がぶつかる。その後ろから出た俺ともう一人の中学生の獲物も少し離れた場所で交錯した。
つばぜり合いの状態になると素早く後退。下がる俺に大降りな一撃、それを受け流して剣が弾いたところに一線を放つも防がれてしまった。
さっきの相手はコレで勝てたんだが、やはりここの守りを任されてるだけはあるか。
一旦間合いを取る、月乃の方を見ると激しい戦いが繰り広げられていた。更に視線だけを向けて他の二組の方を見る。
大和先生押川組は二対二が続いている。三夜子早山組も同様だが、相手2人を押しているようだ。
どこが勝てば俺達の勝ち確定だが、そう簡単には行かないようだな。
視線を戻し、剣を振り上げながら前へと来たところを再び受け流し、再度紙風船を狙うがまた守られる。
この技は効かないか……長期戦にする訳にもいかない、あちらが技をかけやすい状態になってくれたら……
その時、相手が正面から飛び込んできた。
この軌道なら……行けるか。
俺は剣を縦に構えて攻撃を防ぐ。瞬間、相手の剣と共に手を下に落とした。
急なことに驚いてる間に剣を素早く振り上げ、剣を振り上げたまま足を動かし、一足に相手の右側に移動し、
パァン!
剣を振り下ろして紙風船を割った。
剣道の技の一つで、相手とのつばぜり合い状態から手を下に落とさせるという動きだ。本来ならここから引き面を狙ったり、警戒した相手が竹刀を上げたら胴を切るといった攻撃につながる。
コレで俺達の勝ちがほぼ確定した。しかし簡単に割っては他の皆、特にまだ戦い続けている月乃と横矢に悪いな。この場合、向こうの手助けに行くのが最善か……
次の瞬間、横から気配を感じた。
「!?」
慌てて振り向いた時には相手はすでに剣を振るっていて、俺は慌てて防ぐとそこから連撃が繰り出された。ただ無造作に振るわれるものではなく、全て紙風船に向けられる攻撃。こ、こんな奴がいたのか?
攻撃が止み、相手が間合いを開けてようやくその姿を見た。
そこにいたのは……
……side 珀露
パァン!
大和先生の一撃がこちらのもう一人の紙風船が割った。
「へへ、これでそっちは一人だぜ」
大和先生が剣の先を向けて挑発してくる。
キャリアも、地の利もこちらにあるのに、やはり中学生の僕では勝てないのか。
「スキあり!」
押川さんの声と剣が下ろされ、僕は防いだ。
この間にも大和先生は旗を狙いに行くか、あるいは僕の死角から攻撃してくるか分からない。
向こうの4人は大丈夫だろうか? いや、僕のところが崩れた時点で僕達の負けだ。
僕のせいで……
その時、
トクン
あ……こ、これは……
マズイ……今、コレになるのは……
…………
パァン!
「えぇ!?」
……押川さんの紙風船が割れた。
いや、割ったのは僕だ。でもそれをまるで他人がした事のように僕は見ている。
割ったのは僕だけど、割った僕は僕ではない、僕だ。
「……」
旗には向かわず、後ろに移動していた大和先生を僕が見つけた。
「!? ……お前、まさか」
「もしかして、キミ、オレと同じ……まぁいいや、この体も元々おかしいからね」
先ほど大和先生がしたように剣の先を向け、
そして、ただ一振り、
パァン!
「な!?」
大和先生が気が付いた頃、すでに僕は紙風船を割っていた。
「なんだ、キミはなってないのか。それに、コレじゃないし」
やれやれといった感じに肩をすくめる僕はふと、何かに気付いたように顔を向ける。
「ん? コレはもしかして……」
その方向へ歩いていく、そこにいたのは……武川さん。
「もしかして、あの人もかな」
僕が走り出した。
武川さん! 危ない!
心の声が届いたのか、武川さんは僕の攻撃を防いだ。続く連撃も防ぎ、間合いを取った。
マズイ……早くどうにかしないと。
皆さんを、倒してしまうかもしれない。




