合宿一日目終了
俺達が宿に戻った時にはすでに三夜子達、そして月乃の後輩2人が来ていた。
何でも偶然出会ったとか、月乃を追ってきたとか、色々な理由があって本音は分からないが、とりあえず来たらしい。
机を囲んだ先ほどと同じ状態に、開いていた一辺に2人を加えた状態で集まった。
「さて、自然を堪能したところで、最初の問題に戻ろうと思う」
最初の問題、そう、まだ明日以降の予定が未決定なこと。
誰か何か思い付いたか? と大和先生が訊ねると、
「あの……」
おずおずと手を挙げたのは、横矢だった。
「えっと、横矢だったな」
「はい。実は先ほどその話をお聞きして、よろしかったらあたし達の案を採用していただけませんか」
あたし達、とは横矢と稲影の事だろう。
「どういう案だ?」
「はい、簡潔に言いますと、あたし達と勝負してみませんか?」
勝負?
「まさか緋鳴、アンタ、アレの事言ってるの?」
知っているらしい月乃が訊ねると、
「その通りです月乃先輩」
横矢は首を縦に振った。
「うわ久しぶりねそれ! 凄くやりたいわ!」
月乃が何やらわくわくしだした。勝負と聞いて喜ぶとは、いったい何をするんだ?
「具体的に申しますと、勝負の内容はチャンバラみたいなもので、頭につけたボールを叩きあうものです」
「おぉ、何か楽しそうだなそれ。皆はどうだ?」
「アタシはやりたいです! 去年出来なかったので!」
月乃は即賛成、
「面白そうだからボクもやってみたいです!」
続いて押川も賛成、
「……全員が賛同するのでしたら、自分も参加します」
早山は多数に合わせ、
「……私もやりたい」
三夜子も少し考えてから、賛成した。
「俺もやってみたいです」
俺も賛成。剣道ではないチャンバラなんて小学生以来だ。
これで自動的に早山も賛成になり、
「よし、じゃあ明日は横矢の案を採用させてもらう、それで良いな?」
パズル部部員が声を合わせて返事をし、こうして明日の予定が決定。
「それで緋鳴、場所とか時間はどうするの?」
「それはこれから決めますけど、やはりあの社の前が良いかと。明日迎えに伺います」
「よろしくね、緋鳴」
明日の予定は、横矢達中学生とのチャンバラ勝負となった。
……side 珀露
「ただいまー」
「お帰りー、お兄ちゃん」
家に帰ってきた僕を、さすがに起きていた緑羽が迎えてくれた。
「どこ行ってたの?」
「緋鳴と一緒に駅に、電車の時間を調べてきたんだ」
「遅れちゃマズイもんね、オープンキャンパス」
「うん、それとさ緑羽」
僕は駅前で出会った月乃先輩達パズル部の皆さんの事を話すと、
「ほんと!?」
緑羽が詰め寄ってきて、玄関との板挟みにされてしまった。
「う、うん、牧津の宿に泊まってるんだって」
「まっつーの所か〜……ここからじゃ一時間くらいかかるね……往復で二時間、その間に晩ごはんになっちゃうだろうし……」
あ、緑羽が行く気だ。月乃先輩と晩ごはんを天秤にかけてうんうんと唸っている。
「緑羽、とりあえず家に上がらせてよ」
「あ! だったらさ!」
何か閃いた緑羽の顔が更に近づく。
「ち、近いよ緑羽」
「月乃先輩が居る内にアレやろうよ! 皆さん呼んで対抗戦とか!」
「あぁ、うん、それならもう緋鳴が提案したから。明日あの社の前に集合するんだよ」
「ひなちゃんナイス! もちろんボクも行くからね!」
「うん、もう頭数に入ってたよ。とりあえず僕を家に入れてくれない?」
「うわぁ〜、うわぁ〜! 久しぶりに月乃先輩と遊べるんだ〜、明日が楽しみだね、お兄ちゃん!」
「うん……楽しみだから……僕を家に上がらせて……」
その後、緑羽の興奮が収まるまで僕は玄関に居続けたのだった。




