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文武平等  作者: 風紙文
第二章
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56/281

短剣道

150cmと、30cm、10センチ。これが変えることの出来る剣の全長だ。目視なので正確にその長さとは限らないが、それぐらいだろう。

俺が普段使っているのは百五十センチ、持ち運ぶ時は十センチのそれで、パズルを動かしてみた結果このように拡大、縮小出来ることが分かった。

150cmのそれは一般なバスタードソードの大きさで、一方の30cm、これは何故この大きさになるかはよく分からない。だが、今まさに役に立った。

キィン!

「獲物が変わったというのに、よく動けるな」

「軽くなったからな」

互いに右手に剣を持ち、つばぜり合いの状態になる、どちらにも鍔は無いけど。

早山が先に動いた、右手を上に振り上げて俺の手を弾き、そこから下へ。後ろへ弾かれた俺は半歩下がりつつ前へと剣を振った。

互いの左肩に刃がかする、下がっていた足で地面に力強く押して前へと突きを狙う。

ギィン!

早山の左手が前へ、そこに作られた見えない箱が盾となり防がれた。

実力と剣の長さでは大差無いが、さすがにアレは真似出来ない、どうにか手を考えないと……

その時、早山が、

「……このまま続けていても長引くだけか」

後ろへと大きく下がり、左手を前に出した。

「だから、次で決着をつけさせてもらう」

右手を上に上げ、手を開いた、持っていたナイフは重力に従って落ち、左手の前で消えた。

瞬間、箱の中に入っていたナイフがこちらへと飛んできた。

正面から来たそれをかわしてナイフの行方を追う、予想通り地面すれすれで消えこちらへと飛んできた。再び避けると、

「悪いが、まだ終わらない」

早山はナイフを左手の箱で受け止め、またこちらへと飛ばした。

「いつまで避け続けられるかな」

そういうことか、打ち出されたナイフを早山の手元でまた打ち出す、避ける俺は次第に疲れ、いずれナイフの餌食に……

だが、これは好機だ。

「……武川」

ふいに、早山が攻撃の手を止めた。

「なんだ?」

「……お前の叶えたい夢はなんだ」

俺の叶えたい夢?

それは……三夜子の両親を見つけるという、三夜子の願いを叶えたいという願い……誰かに話せるようなものじゃない。聞かれて答えるのは、更に恥ずかしい。となれば、

「知りたいのか?」

「あぁ」

「それじゃあ、俺に勝ったら教えてやるよ」

「……そうか」

俺達はそればかりだ、大体は勝負で決める。だからこそ、俺は負けられない。

早山がナイフを箱に装填、打ち出されて飛んできたそれを避ける、と同時に、俺は賭けに出た。

上手く行けばそれで勝てる、失敗すれば……負けだ。

ナイフを避けたのを確認して、俺は一足で前へ、剣の間合いに入った。

下から上へと切り上げるが、

「甘いな」

早山は左手を剣の軌道上へ持ってくる、箱で防ぐつもりか。

この時を待っていた。

「そっちこそ」

パシッ

「な!?」

早山の驚愕の声を初めて聞いた気がする。それだけ、俺の行動が予想外だったんだろう。

「短剣道らしいだろ?」

剣を振る手を一瞬止め、左手で早山の左手首を掴んだ。本来の短剣道においても相手の攻撃を防ぐ技として存在する、片手が開く短剣道ならではの技だ。

実際は短刀を持つ右手なんだが、今早山はナイフを手放しているから、脅威なのは箱の方。その箱を持つ左手の手首を掴んで下げ、剣の軌道を確保。

「はぁ!」

ザスッ!

再び剣を、下から一気に切り上げた。

「っ……!」

だが早山は倒れない。やはり刃が小さい分威力も弱いか。

早山が投げたナイフはそろそろ後ろに仕掛けられた箱に到着して、またこちらへと飛んでくる筈だ。それをこの状況で避ける事は無理に等しい、避けようとしたら今度は早山に手首を掴まれる可能性もある。

だからこれが、最後の好機。

高く上がった右手にある剣、その中にあるパズルを片手だけで動かした。

瞬間、剣が拡大。150cm程の、普段使っている長さに戻した。

その柄を右手だけで握る、重量も戻ったので片手で振れる代物じゃないが……そのまま下に振り下ろすぐらいなら出来る。

「これでどうだ!」

力を込め、剣を下へ、今しがた通った軌道を再び拡大した剣で通過した。

ズバン!!

先ほどより威力の感じる音が鳴り、剣の切っ先が地面についた時、

「くっ……これまで、か……」

早山が右膝をついた。掴んでいた手を放すと、更に左膝と両手を地面についた。

後ろの方で、カランという音が聞こえた。

早山の投げたナイフが帰って来ていたが、どうやら使い手の早山が負けたことにより動かなくなって地面に落ちたらしい。

「……お前の勝ちだ、武川」

これで俺は今日の内で、月乃と早山の2人に勝利し、2勝を手にした。

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