数月前、加入直後と
今回は、本筋より少し離れた話しとなります。
「いいか、叶えようとしている夢がとんでもない奴には負けるんじゃないぞ」
言われたことはそれだけ、それ以降は剣の使い方の話で、俺には不要だ。どうせすぐに忘れて自己流に走る。
一人、その場を後にした。妙に長い廊下を歩いていると、
「そこを行く少年」
何か、聞き覚えのある声に振り返る。だがそこに居たのは予想外の格好をした人。
「君は何処かで見た覚えがあると思ったら……」
俺は初めて見る、少なくとも、そんな格好な人は。
「早山仁史君ではないか」
俺の名前を知っていた、ということはやはりあの人なのだろう。
何故そんな格好を? と訊ねると、「はっはっはっ」と笑ってはぐらかされた。
「まさか君も剣を手に入れたとは、そしてここに入った」
ここに入ったのは成り行きで、別に望んで入った訳では無い、と応える。
「ふむ、しかし共に願いを叶えたい者どうし、仲良くしようではないか」
……仲良くも何も、剣を持つ者どうし、いずれ戦うのは明確な筈、それなのに何故仲良くする必要が?
「簡単なことさ、我々は願いを叶えたくて集まったメンバーなのだから」
……意味が分からない。
「叶えたい願いは様々、それを人に話して共感を得たい、願いとして叶えても良いと再認識したいのだ」
……更に意味が分からない。願いはその人のもの、他人に認められる必要など無い。ただ自分だけが、そうだと認識さえすれば。
「ふむ……君もまた変わった発想を持っているね、彼に似ている」
彼?
「本名は避けるが、彼もまた変わった願いの持ち主でな、この団体には属していない」
その変わった願いとは、この団体におけるとんでもない願いに部類されるのでは?
「いやいや、彼は特別な変わり者だ、だから遠目に見ている」
……それを言うなら、大目、では?
「遠目でいいのさ、遠くから大目に見てるからな」
……元から謎が多い人だとは思っていたが、格好もあわせて更に謎が深まった。言葉の意味もよく分からない。だが、きっとすぐに忘れるだろう。
……しかし、妙に頭に残っているんだ。
……ところで、その話し方はいったい?
「はっはっはっ」
それからしばらくが経ち、偶然剣を持っていることを知った彼女と『剣の舞』を行うこととなった。
ギギィン!!
「くっ……なかなかやるわね、早山」
「……簡単に負ける訳にはいかないからな」
すでに互いに刃が数回入り、おそらく後一太刀ずつで倒れるだろう。
「同感ね、アタシにだって叶えたい夢があるんだから負けられないのよ」
「……」
「はぁぁ!」
月乃の夢……自らの夢のため、願いのため……自分とは違う、誰かの願いのため。
……そういうこと、か。
ザシン!
俺は月乃の剣を受け、膝をついた。
「あ、あんた、今どうして」
油断していた訳でもなく、守る方法もあったのに、だ。
「……」
……なるほど、あの人が言っていた意味が、少しだけ分かった気がする。




