休日の遭遇
休日、それは仕事や学校が休みの日、土曜日や日曜日や祝日のことを指す日。
もっと簡単に言えば休む日。そう、今日は休日、学校が休みの為、登校しない……つまりは月乃に出会う可能性が無い日だ。一年生の時は、そう考えて休日を楽しんだものだ。
それが最近になり無くなったかと思えば、また始まった。そして、再び休日を楽しむ自分がいた。
具体的には、部屋の中で本を読んだりパズルを解いたりしている。今やっているのは、先日大和先生が持ってきた中の部品をこの箱から取り出すという物、キャストパズルのレベルから見て3。低くも高くもない平均レベルだ。
そして……今、
カシャ
「お、解けた」
部品を箱の中から取り出せた。思わず他に誰もいない部屋で声が出てしまうが、最近は色々有りすぎたせいでパズルを解くヒマが無かった為、普通に嬉しかった。
しかし、キャストパズルはこれでは終わらない。解けた物を再び元の形に戻して初めてキャストパズル攻略が成される。
因みに答えの書かれた説明書は入っていないのでパッケージに書かれた元々の形を見て元に戻すしかない……等と考えるが、別に急いでないしな。とりあえず解けたパズルをじっくり見てみよう。
箱の方は正方形、面の全てに一回り小さい四角の穴が空き、辺にはそれぞれ凸になってる部品が2つずつ
それぞれ大きさが異なり、これに部品を通して中から取り出すというパズル。
一方の部品、球体を4等分した形で、箱の中に収まっている。今言った凸部品を理由して中から取り出した素材は分からないが、結構重みがある、部品だけでもちょっとした本より重いかもしれない。
「だから高いんだよな……」
キャストパズルは一つ千円を超える代物だ、迂闊に大人買いなんて出来ない。まぁ、一つを解くのに時間がかかるから、その間にお金を貯めればなんとなかるけどな。
よし、元に戻すか。
「……ふわぁ」
しまった……元に戻すのに夢中になりすぎて思わず徹夜してしまった。
一応、元には戻せたけど、まさか寝るのを忘れる程夢中になってしまうとは……
俺は直ったばかりのパズルを見た。箱の中に斜めに収まった部品、それと箱についた飾りのような物が、まるで人が笑っているように見えた。実際そんな訳ないだろうが徹夜明けのボーッとした頭ではそう理解していた。
一夜明けて……今日は日曜日か、日が昇ったばかりだとすると、昼よりは前だな。
とりあえず外に行こう。
支度を整えて寮を出ると、空は雲一つ無い晴天だった。昨日も似たように晴れだったが、俺は部屋の中で一日過ごしてしまっていたのを少し後悔し、更に良い天気になった今日を歩いていたらどうでもよくなっていた。
「しかし……出たは良いが何をするか」
寮から学校までのこの辺りは住宅街で、特にこれと言った店は無い。
「やっぱ河川敷向こうの駅前まで行かないとダメか」
「……行ってどうする?」
「とりあえず、本屋とか見て回って……て?」
思わず返事してしまったが、今のって……
「うぉ!?」
ふと横を見ると、三夜子が音もなく並んで歩いていた。
「……おはよう」
おはよう、って。
「もう昼だぞ」
現在時刻は十二時二十三分。
「……こんにちは?」
首を傾げながら再び挨拶をした……別にどっちだっていいけど。
「何してたんだ?」
「……そっちは?」
質問に質問で返された。
「さっき言っただろ、駅の方に行こうとしてたんだ」
「……そう」
「で、そっちこそ何してんだ?」
「……散歩?」
この晴天に傘を持って?
「わざわざ傘を持ってなくてもいいんじゃないか?」
「……手持ちぶさたになる」
「そうか」
慣れるというのも考えものだな。
「……私も、行っていい?」
急に三夜子が聞いてきた。付いてきていいか、ということだよな。
「別にいいけど、特にこれといった面白みは無いぞ? ただの散歩だからな」
「……私もそうだったから、問題無い」
「そうか」
という訳で揃って橋を越え、駅前通りに来た。日曜日ということもあり人通りは多く、賑わっている。
俺達はとりあえず当初の目的になっていた本屋へ入った。
その時、ふと思う。
「三夜子って結構本読む方なのか?」
「……(ふるふる)」
首を横に振って否定される予想はしてたけど、やっぱりか。
だとしても、全然読まないということは無いだろう。
「最近読んだ本は?」
「……あれ」
三夜子が指さす方向には、マンガが平積みされていた。
「マンガか」
しかも、結構有名なタイトルのものだ。
「……兄さんのお下がり」
「あー、なるほど」
先生、つまり兄である大和先生が読んでいるものを読んだのか。
「て、どこでそんなことを」
「……兄さんの家。たまに行く」
そういえば、アパートを借りていたと聞いたな。
「……昨日も行ってた」
「へぇ……」
普段の2人を見てると、なんというか……仲はあまりよろしくないように見えるが。実際はそうじゃないんだな。両親を探す為に、そして唯一の家族2人だもんな。
俺達は本屋内をぐるりと一周して、特に欲しい本も無かったので何も買わず、最後にキャストパズルの棚に向かった。
棚には先生が先日買ってきた2つがNEWと書かれたシールが貼られた一番上に置かれていた。出来れば2つ共欲しいが。
「やっぱり、高いな……」
「……先生が持ってる」
「それは分かってるけどな、今まで集めてきた俺としては一つも欠ける訳にはいかないというか、なんというか」
自分で何言ってるのか分からなくなりそうだ。
「……じゃあ、言ってみればいい」
「何を?」
「……パズルをくれるか」
「解き終わったらってことか」
「……そう、元々部活のために買った物」
一理あるが、一つ一つが高いからな、そう簡単にあげられる値段じゃない。
でも、もしもタダで手に入るならそれに越したことは無い……
「ま、聞くだけ聞いてみても損は無いか」
「ん……」
とりあえず、3人があのパズルを解けた頃に話を持ちかけてみよう。そう思いながら、俺達は本屋を出た。
「さて、当初の目的は果たしたようなもんだけど、どこか行きたいところとかあるか?」
「……特に無い」
期待はしてなかったから別にいいが、どうするか……このまま帰るのはかなりもったいないしな。
携帯を開き、時間を見る。午後一時十七分か……
そういや、あのまま支度だけして出てきたから何も食べてなかったな。
「腹減ってないか?」
「……わりと」
「じゃあ駅前広場に行こう、何か出店があるかもしれない」
「ん……」
商店街を抜け、駅前広場へ目の前に駅を見て、その手前、広場の中央に時計台、街の人達の集合場所になる場所だ。
ここにはたまに出店が出ていることがある、大半はたこ焼きだが、クレープや、あげぱんを売っていたのを見たこともあった。
そして今日は、
「あった」
広場の左側に一台の車が止まり、たい焼き、と書かれた暖簾がかかっていた。他に出店が無いので人が列を作っている、その列に並ぶ為に俺達は近づく。
その時、
「な……」
「……」
ある姿を見つけた。
「ん?」
その人が気付き、俺達の方を向く。
「よぉ、お前達か」
黒い服に身を包んだ男。
そして、剣狩りの男。
原良正忠だった。




