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文武平等  作者: 風紙文
第一章
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能力の使い方

沈黙を破った帽子の男の開始宣言と同時に動いたのは俺だった。

一足で近づき、横に振るう。とっさに守った飯田の剣と触れ、この音が本当の開始音となった。

「僕は……あの人の為に!」

飯田は柄を回して上に振り上げ、そのまま下へ。俺はバックステップで避ける。

「助けられた礼には、礼で返す……その為に、僕は!」

飯田が前へ出る、バットのように構えて振り被る。ブォン! と空を切って剣が振られた。

能力が来る、とっさに防御の構えを取るがそれは不味かった。

「うわっ!」

剣の能力が発動し、俺は後ろへ吹き飛ばされた。小石が転がる不安定な足場に何とか足をつけて止まると、そこへ飯田が先ほどと同じ構えでの二撃目。

「二度もくらうか!」

後ろへ移動し、攻撃を避ける、飯田の剣は空を切った。

「もらった!」

柄を強く握り、左足に力を入れて前へ飛び出す、飯田の腹を横に薙いだ。

飯田に痛みの表情は無く、俺に切った感覚は無い。つまりは、すぐに次の行動へ移れる。

「くっ!」

飯田が剣を振り上げ、そのまま下へ。

しかし一方の俺は横に薙いだ力のまま、力の向きはそっちにあり、剣の重さもあってすぐに動けない……それがただの剣ならば。

柄を伸ばして刀身に空気を送る、それにより軽くなった剣で飯田の一撃を防いだ。

ギギン!

よし、吹き飛ばされない。飯田の能力は横に振った時だけにしか発動しないようだ。

そんな分析をしていると、


ギン! ガキン!


鉄と鉄がぶつかる音が聞こえた。

音のした方向に目だけを向けると、双剣どうしの『剣の舞』が行われていた。

「へっ、なかなかやるじゃねぇか」

「……負けない」

「だが、お前とは扱ってる期間が違うんだ。剣も、そして、能力もな!」

原良の双剣が伸ばされた。七ヶ橋はその場に立ち、伸びてきた刃を避ける、

「甘ぇぞ!」

瞬間、刃が円を書いて横に流れ七ヶ橋の手に触れた。

あの時と一緒だ、ただ伸びるだけがあの剣の能力じゃないらしい。

「っ……」

七ヶ橋は剣を交差に構え、風を放った。

「うぉ!?」

傷つける刃ではなく、ただ吹き飛ばすだけの強い風を浴びた原良が後ずさる。

刃の長さを戻しつつ、

「はっ、これが最近まで隠れてた奴の力かよ。いくら何でも手強すぎねぇか」

七ヶ橋を称賛していた。

「だが、だからといって俺は仕事をこなすだけだ……行くぞ!」

……出来ればこのまま見ていたいが、今はそれどころじゃなかった。

飯田が手を返して剣を横に構える。能力の発動条件が揃ったまま、

「はぁ!」

横に振る。俺はそれを防ぐ。

ガキン!

音と共に剣の能力が発動。俺は後ろへと飛ばされた。

「二度はくらわないと言ったじゃないですか?」

分かっている、自分で言った事だからな。

だが、これでいい。後ろへと飛ばされる中、俺は軽くなった剣の刀身を背中に回す、ちょうど刀を鞘に納めたような形になる。左手で柄の中心部分を持ち、右手は柄の頂点を持つ。

考えた事があった。七ヶ橋のような魔法のようなことが出来るわけではないこの剣、しかしこの能力を使って技を考えることは出来るのではないか?

考えはまとまった。

結果は……今試す。

吹き飛ばされ地面に落ちる寸前、俺は右手で柄を押し込んだ。

ガコン!

最初に使った時には飯田を、誤作動で出た時は俺と大和先生が宙に浮いたこの空気砲の威力。

それを、利用する。

ブォン!

空気の塊が地面へと放たれた反動で、俺は宙に舞い押し出される形で、吹き飛ばされた距離を詰めた。

「なっ!?」

驚いた飯田の顔を見つつ、俺は再び柄を伸ばして軽くなった剣を振り上げる。

飯田は咄嗟に剣を上に持ってきて防御の姿勢をとるが、

「隙ありだ!」

振り上げた剣を降ろしつつ手首を返して剣を横に、押し出された勢いのままで飯田の腹を横に薙いだ「え……? 今、のは?」

遠くからの飛び込み面、に見せかけた飛び込み胴。

剣道で使われる技の一つで。いかにして相手へ面をうつように思わせるかがポイントだな。

熟練者だと効かないんだよな、コレ。飯田が初心者で助かった。

「……僕は……僕は…」

着地して飯田の方を見ると、何か呟いていた。

今の一太刀が強力ではあっただろうが、剣の斬撃には痛みは無い筈だ。しかし何故か飯田は剣を杖代わりにつき、足をふらつかせていた。

「あの人の……為に、役に……礼には……礼は……剣を、望んだ……あの人…」

だ、大丈夫かコイツ?

次の瞬間、

「僕は……僕はぁぁぁ!」

飯田はその場で、剣を横に構えた。

能力か!

だが近づいてくることなく、つまりその場から動くことなく剣を振った……地面に向かって。

ガッ!

地面に触れた剣は、足元の小石を巻き上げ、それらがこちらへ飛んできた。

そういう使い方もあるのか! けどあの小石は飛ばされたもの、なら防げるだろうと防御の姿勢を取る。

カン! カンカン!

小石が剣に当たる、なるほど、あの能力にはこういう使い方もあるのか。

こちらに飛び道具は無い。となると遠間はダメだな、近づいてもう一度飛び込み胴を当てるか…

防御の姿勢を解いて前を見ると、飯田は俺の前にいた。

「!?」

まずい、懐に入られた! と驚く俺を横目に、飯田は俺の横をすり抜けていった。

その先には…

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