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文武平等  作者: 風紙文
第一章
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変化ナシと変化アリ?

最初にこの河川敷で、まだ共に剣じゃなかった時だ。

七ヶ橋が傘で俺が木刀だった時、2人の剣技は剛と柔で真逆だった……今もそれに変わりはなく。2人が手に入れた剣もまた、それぞれに適していた……つまり何が言いたいのか。

どちらも、一太刀も入らないのだ。

俺は守り。七ヶ橋は避ける。前とは違う獲物、七ヶ橋に至っては二刀流だが、俺は縦横共に拡大した剣で守る、七ヶ橋が能力の風を吹かせれば、空気砲で壁を作って防ぐ。

お互い一向に当たる気配はなく、

「2人共ストップ!」

ついに大和先生が止めに入った。

「もう暗くなるぞ、今日はそれぐらいにしておけ」

辺りを見ると、すでに日は落ちていた。

帰る方向の違う大和先生と河川敷で別れ、俺と七ヶ橋は寮への道のりを歩いてく。

「……」

「……」

……うん、静かだ。

回りに人はいないし、元より車の通りは少ない。吹き抜ける風が一番響いた。

マズイな、この空気。

声を出してないと、身が持たなくなるような時がないだろうか? 今はまさにそれだった。

七ヶ橋が自分から何かを話す事はおそらく無い、となれば俺が何か話題を見つけて…

「……創矢」

…ふいに、名前を呼ばれた

もちろん、七ヶ橋にだ。

「な、なんだ?」

「……明日、勝てるよね」

意外だった。

話しかけてきたことではない。顔に表情こそないが、七ヶ橋が弱気な発言をしたことにだ。

何でそんな事聞くんだ?

と言うのは野暮だと思った。俺だって、不安が無いと言えば嘘になる。必ず勝てるそんな確信は俺にも、もちろん七ヶ橋にも無かった。

確かに相手には体力、剣術共に勝っているだろう。だがそれだけで勝てるのなら、七ヶ橋はあの時にああはならなかった。

剣という獲物を上手く扱い相手の戦う意思を切る。それが、剣による戦い。

別名『剣の舞』

必ず勝てる、という根拠はこの戦いにおいて全く存在しなかった。

だからこそ、俺はこう言った。

「勝つんだ、必ず」

「……え?」

七ヶ橋がきょとんとする。した、と思う。首を傾げたから、したんだと思う。

「勝つという気持ちが無ければどんな勝負でも絶対に勝てない、だったら勝てると思いながら全力で挑めばいいんだ」

俺はそう言われて育った。その言葉を七々橋に、そして自分自身に言い聞かせた。

「……そっか、そうだよね」

「そう、必ず、勝つんだ」

「……ありがとう、創矢」

そう言った七ヶ橋の顔は、恐らく、笑っていたんだろう。


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