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序章 壮絶!天才博士の最期

「黒崎容疑者、お前はすでに幾重にも包囲されている。軍は十分以内に自発的に降伏するよう命じる。さもなくば、我々は武力をもって強行突入し、お前を逮捕する!」


濃い緑色の軍帽をかぶり、厳しい表情をした和田中将は、真っ黒な戦車の上に立ち、拡声器を通して、一語一語をはっきりと区切るように最後通牒を発した。後方には、整然と列をなした兵士たちが並んでおり、皆、緊張した面持ちで、まるで大敵を前にしたかのようだった。


彼らが対峙しているのは、四角形の組み合わせで構成された建造物――白銀の輝きを放ち、その壁がすべて金属でできていることを示していた。無機質な外殻は、言いようのない冷たさを漂わせ、まるで孤高の要塞のような印象を与えていた。


これは私的な施設であり、同時に、かつて今世紀最も偉大な科学研究所と称された場所でもあった。ここを所有する黒崎博士は、人類の生活を改善する無数の発明を生み出し、世界に多大な貢献をしてきた天才研究者であった。


「チクタク……チクタク……」


腕時計の秒針が一つ一つ跳ねるたび、息詰まる十分間はあっという間に過ぎ去った。あの鋼鉄の門は、依然として何の動きも見せなかった。


実のところ、これも皆が最初から予想していた結果であった。天才とは、常に常人とは異なる性格を備えている。とりわけ、黒崎博士のような誇り高い天才ともなれば、屈服させるのはほとんど不可能だった。


「時間切れだ、突入せよ!」


腕時計の秒針がちょうど一つ進んだ瞬間、和田中将は、軍人として一度口にしたことは必ず実行するという態度で、攻撃の命令を下した。整然と並んだ軍用車の列の中から、一台の大型破壁車がエンジンをかけ、あの頑丈な要塞へとゆっくりと進み始めた。


「ドン!ドン!」


門の前に到着すると、巨大な鉄の杭が、杭打ちのような勢いで鋼鉄の門に激突し、耳を劈くような衝突音を響かせた。全体が銀色の壁は、激しい衝撃を受けて次第に変形し、滑らかで傷一つなかった平面が、押し潰された廃鉄のような姿へと歪んでいく。


「ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!」


破壁車は攻撃を続け、どうやらそれほど手間をかけずに門壁を破壊できそうに見えた。だが、その次の瞬間、ずっと何の動きも見せなかった要塞が、突然「ゴゴゴゴ」という音を発し、激しく破壊されていた門壁が、内側へと回転し始めた。


あと少しで門を破って突入できるというところだったが、門壁が開くかどうかは、もはや大した意味を持たなかった。しかし、この動作はなおも全員の心を掴んで離さなかった。相手の心の内を探ることのできない状況では、ほんの些細な挙動一つが、誰の感情をも揺さぶり得るのだ。


破壁車は強攻を止め、門壁が開き続けるのに任せた。和田中将を含む全ての者は息を殺し、この世にまたとない天才が、次にどのような驚くべき行動に出るのかを待っていた。


門壁が開ききると、逆光の中に一人の人間が立っているのが見えた。軍の列を前にしても全く怯まないその気迫は、疑いようもなく、和田中将が「容疑者」と呼んだ黒崎博士であった。


破壁車は当然のように後退し、黒崎博士の姿を皆の前にさらけ出した。百戦錬磨の和田中将は、目の前の丸腰の老人を見て、思わず顔に一抹の恐怖を浮かべた。まるでこの人物が、これまでに対峙してきたどんな敵よりも恐ろしいかのようだった。


「黒崎……容疑者……」


黒崎博士は、不敵な笑みを浮かべ、両脚を広げて門の中央に立ち、周囲の状況を一度見回すと、突然、狂ったように笑い出した。


「ははは、俺はいったい何をしたというんだ?名だたる和田中将が自ら出馬するほどの大事になったとはな?」


世界的に名高い黒崎仁義博士と比べれば、和田久太郎など、所詮はただの中将にすぎない。「名だたる」とは、疑いようもなく皮肉にほかならなかった。和田中将は一度深呼吸し、再び拡声器を手に取って言った。


「黒崎容疑者、日本国家安全法に基づき、政府はお前が兵器および大量破壊兵器を隠し持っていると疑っている。今、お前を拘束する!」


「拘束?俺が何の罪を犯したというんだ?どうやらお前たちのお偉い政府は、俺の発明を我が物にしようとしているようだな?穏便にいかないから、力ずくに出たというわけか?」


黒崎博士は軽蔑の口調で唾を吐いた。実際、これより以前、どれほどの政治家が何度も説得に訪れ、そのたびに成果なく帰っていった。そしてついに今日、日本政府は武力を用いることを決断したのだった。


和田中将は彼と論争せず、軍人らしい事務的な口調で続けた。


「お前が法律に触れているかどうかは、法廷が裁決することだ。我々は本日、命を受けてお前を逮捕しに来た。直ちにおとなしく降伏し、我々に従って帰るのだ。」


「俺を逮捕?たかが老人一人に、これほど大掛かりなことを?」


黒崎博士は、次々と並ぶ戦車と厳戒態勢の軍隊を見て、皮肉を込めて言った。しかし、軍の決定を疑う者はいなかった。何しろ、制御を失った科学者というものは、往々にして一隊の軍隊よりも恐ろしいのだから。加えて、研究者を除けば、日本政府すら科学研究所に足を踏み入れたことは一度もなく、その内部にどれほどの強力な武器があるのか、全く未知数であった。


狂人が暴れ出せば、その結果は恐ろしいものになり得る。


「もう一度繰り返す。黒崎容疑者、日本国家安全法に基づき、政府はお前が兵器および大量破壊兵器を隠し持っていると疑っている。今、お前を拘束する!」


和田中将は先ほどの警告をもう一度繰り返した。黒崎博士は答えず、うつむいて笑いをこらすように言った。


「この黒崎仁義が、大人しくお前たちに従って帰ると思うか?俺をあまり見くびるなよ。首相は?八木首相はどこだ?彼に俺と話をさせろ!」


「首相は多忙を極めており、お前のような容疑者と話す時間などない!」


和田中将は強硬な口調で言った。


「多忙だと?俺が今、指先をちょっと動かすだけで、日本はたちまち地図から消え去る。それ以上に日本国民に影響を与える重大なことがあるというのか?」


老人は笑って言った。その通り、これは決して脅しではなかった。黒崎博士にその力があることは誰もが知っており、これこそが日本政府が彼を必ず拘束しなければならない理由でもあった。


「黒崎容疑者、余計な真似はよせ!我々はお前が偉大な学者であり、国家にも多大な貢献をしてきたことを知っている。我々に協力さえすれば、政府は決してお前を困らせはしない。」


黒崎博士の言葉は多少の効果を上げ、和田中将の態度は明らかに軟化した。しかし、このような言葉は、このほとんど狂気に近い科学者の心を打つことはできなかった。黒崎博士はゆっくりと両手を挙げ、一語一語を吐き出すように言った。


「俺にお前たちに協力しろだと。そんなことが不可能だということは、お前たちにも分かっているはずだ。俺のものが欲しいのか?全部中にある。欲しければ勝手に持っていけ。ただし、まずは俺を倒してからだ。」


「黒崎容疑者……」


「そう、日本全体を、いや、世界全体を消滅させることのできるものだ。さあ!取りに来い!撃て!俺を撃ち殺せ!そうすれば、あとはすべてお前たちのものだ!世界で最も偉大な発明だ!」


黒崎博士の目は血のように赤く変わり、嵐のような勢いで皆に向かって叫んだ。


和田中将は歯を食いしばったまま、一言も発しなかった。傍らの将校が電話を受けると、その耳元で小声で言った。


「中将、上から、発砲してよいとの命令です。」


なんと。和田中将はその言葉を聞いて、心が一瞬凍りついた。やはり黒崎博士の言った通り、政府はどのような手段を用いてでも、この天才学者の発明を我が物にしようとしているのだ。


これは本当に正義の行いなのだろうか?目の前にいるのは、ただの老人にすぎない。武器を所持しているとはいえ、実際には誰も傷つけていない。裁判も経ずに、我々に彼を処刑するだけの根拠があるというのか?


軍人の銃口は、本当に市民に向けられるべきなのか?


ましてや、彼は国家に多大な貢献をした人間なのだ。


「和田中将、どうして撃たない?度胸がないのか?お前のその軍人としての気概はどこへ行った?さあ撃てよ!和田久太郎!!!」


黒崎博士は挑発的な口調で、和田中将のフルネームを叫び立てた。


一人のプロの軍人として、和田中将がこのような言葉に心を乱されるはずもなかった。実のところ、命令を受けた瞬間から、彼は自分が歴史に残る罪人とされることを覚悟していた。市民の目に映る、偉大な科学者を射殺した罪人として。


「来い!撃て!俺を撃ち殺せ!今日はこのまま引き揚げるつもりではないのだろう?」


黒崎博士は大声で叫び続けた。


「俺一人を殺せば日本全体を救える。この取引はとても割がいいぞ!」


和田中将の目に殺気が浮かんだ。彼は自らの意志を固めた。軍人にとって、上官の命令は絶対である。今後どれほどの非難を受けようとも、この和田久太郎一人が背負おう!


「撃て!撃て!」


決心した瞬間、和田中将は大声で命令を発した。目標に向けられた無数の銃身が一斉に射撃し、絶え間なく響く銃声が、瞬く間に黒崎博士の声をかき消した。


「ドドドドド!!!」


銃声はしばらく続いた。一人を殺すのに、これほど多くの銃を撃つ必要があるのか?おそらく、和田中将の心の中では、これが目の前のかつて尊敬した偉人への、敬意の表れだったのかもしれない。


驚くべきことに、一斉射撃を受けても、黒崎博士は先ほどの位置に立ったままだった。身体から大量に噴き出す鮮血は、どの一発も外れなかったことを示していた。すでに蜂の巣となった人間が、それでもなお立ち続けているのだ。


黒崎博士の身体は一面の血の色に染まっていたが、その眼差しの鋭さは衰えることがなかった。彼は怨念を込めて、自らの命を奪った者たちを睨みつけ、歯を食いしばって言った。


「結局、日本政府は俺を裏切ったか。いいだろう……ならば、この俺を裏切った世界に、存分に報復させてもらおう!」


この一言は、誰の心にも寒気を感じさせた。皆、この男の言葉が根拠のないものではないことを知っていた。天才を裏切った結果は、極めて恐ろしいものになるだろう。


「十年、お前たちに十年の時間を与える。科学研究所の中のものは、好きに持っていくがいい。そして十年の時間で、俺よりも優れたものを発明しろ!さもなくば、お前たちの世界は破壊される!」


黒崎博士の言葉の真意を理解する者はいなかった。ただ、これが彼が世の人々に与えた最後の挑戦であることだけを知っていた。


「混乱せよ!平和の中に生きる者たちよ!お前たちは地獄を見ることになる!」


狂ったように最後の息を吼え立て、黒崎博士はその場に倒れた。流れ続ける鮮血が川のように四方へと注ぎ出し、惨憺たる光景を描き出した。


誰も思いもしなかった。一人の天才が、まさかこのような最期を遂げるとは。


「お父さん……」


遠くない場所でこの全てを目撃していた女性は、地面にひざまずき、次から次へと涙が絶え間なく顔に落ちていった。


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