鬼と機械 sideアレン(part35)
眩く煌めく光芒の中で。
二つの影が、黒き魔人たちを圧倒的な速度で、かつ徹底的に切り伏せていっていた。
「ハバキリちゃん、頑張ってついてきてねー!」
「は、はい〜っ!!」
エデン率いるアレンたちの部隊から離れた位置にて。
挟撃の作戦通り、二手に分かれたデンドロビウムとハバキリは、集落跡のもう一つの入り口側を鮮やかに制圧しつつあった。
デンドロビウムの足元に仕込まれたホバリング機構と背中から生えるように伸びている背中のバーニアが奏でる滑らかな推進力と圧倒的なスピードに、ハバキリは必死の足取りで食らいついている。軽やかなハバキリの足運びと柔軟な身裁きは、いかにも溌剌とした鬼の少女といった風情だ。
まるで風の様に滑らかかつ鮮やかに敵を切り伏せていく。
なお、フェリクセンには集落の外周にて待機と警戒を頼んである。本陣からの矢文が再び届くかどうかを確認しつつ、戦場に異変があれば即座に通信が入る手筈になっていた。あとは単純にバギーが自由に走り回れるほどの道幅が無かったというのもあるが。
ハバキリ本人は「ついていくのに必死だ」と言わんばかりの表情を見せているが、そこは流石の鬼族。少々幼い容姿からは想像もつかないほど、種族固有の強靭さと直感を遺憾なく発揮していた。
「速いです! デンドロビウム殿〜!」
デンドロビウムの背後を守りながら、迫り来る魔人たちを鋭く一閃。腰に差した二本の太刀をスピードに乗せて振り抜き、黒い肉塊へと変えていく。そして例のごとく霧散していった。
無論、先行するデンドロビウムも四方八方から飛来する魔素の弾幕や刃を軽やかにかわしながら進んでいる。
時には腕部のブレードやブラスター、時には脚部から展開される半月状の可変機構を刃へと変え、近・中距離の交戦領域を完全に支配してみせている。
「ほう……!」
戦場で敵を撫で切りにしながらも、未知の技術と兵器にハバキリは目を光らせていた。
それは、武の極みを目指す鬼の戦闘哲学とは根本から異なるものだった。
如何に無駄なく、如何に効率よく敵を滅殺するか。全てが綿密な計算と物理的法則に基づいて弾き出されているように、ハバキリの目には映っていた。
直線的な超加速、直後に行われる機械的な急旋回。
およそ生命体には不可能な慣性を無視した立体機動。
これが外の世界が誇る科学技術なのかと、必死に食らいつきながらも、内心で感動に心を躍らせていた。
「……ッ!」
その直後、ハバキリの目をさらに丸くさせる光景が繰り広げられる。
デンドロビウムが見せたのは、まるで鬼の族長たるマテン様と同等か、それ以上の感知精度だった。
恐ろしいことに、完全な死角である筈の真後ろからの不意打ちでさえ、まるで背中に目があるかのように軽々と回避してみせるのだ。
後ろを振り返ることもなく、右腕部をカチャリと即座にブラスターへと変形させると、背後から忍び寄っていた敵を正確無比に撃ち抜いたのだ。
迫り来る雑魚を叩き斬りながら、ハバキリはその圧倒的な背中を感嘆の眼差しで見つめていた。
やがて、辺り一帯を埋めていた黒い群れを蹴散らし終えると戦場の喧騒が一瞬で静まり返った。
「そっちはどう〜!? 怪我はない〜?」
機械機構をチャキチャキと小気味よい音を立てて格納しながら、デンドロビウムがトコトコとハバキリのもとへ歩み寄ってくる。
「え、えぇ……! おかげさまで、無傷です……!」
ハバキリの無事を確認し、デンドロビウムはにっこりと可愛らしく口角を上げた。
「よかった〜!お預かりした鬼の子をケガさせるわけにはいかないからね!」
安堵しつつも、ハバキリの背中をバシンと叩いた。
だがきちんと彼女の頭部に装着されたリボンやルーペ状のセンサー周りが、カチャカチャと細かく微駆動しているのがわかる。デンドロビウムは細やかに彼女の身体をチェックした。そしてもう一つ、システムを立ち上げる。
デンドロビウムの袖口から飛び出すように、透き通ったホログラムウィンドウが展開される。
「いや〜、やっぱり事前シミュレーション通りにいくと気持ちいいね〜!」
『はい……っ! 無事に目標の魔素溜まりを撃滅できて……本当によかったです……!』
そこに映し出されたのは、水色の髪を可憐に揺らす少女——ピピの姿だった。
「な、なんと……!?」
空間に浮き上がる光の映像という未知の技術に、ハバキリは驚愕の声を漏らした。
「これは一体……!姿が透けておりますぞ……!?」
「あはは、矢文みたいなものだよ〜。ピピちゃん、そっちに敵の攻撃はいってない? 大丈夫?」
『は、はい……!ですが……おも、思っていた以上に……エネルギーを……っ!』
ノイズ。
バサッとウィンドウが乱れたかと思うと、ザーッという波音に似た静寂が空間を支配した。
「あれ?」
「ありゃりゃ。想定以上に長距離砲でエネルギーを使っちゃって、回線が落ちちゃったのかなぁ」
デンドロビウムは特に焦る様子もなく、プツンと消えたウィンドウを見つめて言った。
「ま、無事であることを祈ろう。……次、行ける?」
さらりと何事もなかったかのように話題を変え、デンドロビウムがこちらへ視線を向けてくる。
「い、良いのですか……? 今のお方は、お知り合いでは……!?」
ハバキリはあまりの切り替えの早さに狼狽を隠せない。遠くで孤立しているかもしれない仲間を、心配に思わないのだろうか。
「う〜ん、心配っちゃ心配だけれど……今は確かめる術がないし。それに……」
「それに……?」
ハバキリはゴクリと唾を飲み込み、続く言葉を待った。
「今はどっちかっていうと……自分たちの心配をした方がいいかも」
デンドロビウムの視線が、戦場の奥——崩れた屋根の上へと注がれる。
ハバキリがハッと息を呑んでそちらを見上げると。
立ち上る硝煙の向こう側。
瓦礫の上に腰かけ、ニヤリと不気味な歪んだ笑みを浮かべる漆黒の魔人が、静かに二人を見下ろしていた。
皆様、どうも&初めまして
みゃ〜むら、と申します。
お読み頂きありがとうございました。
感想、レビューお待ちしております。
申し訳ない!!
なかなか投稿出来ずにお待たせ致しました!!
リアルが中々に忙しくなってきて執筆の時間を確保するのが大変で、、、!
ペースは落ちますが、皆様にきちんとお届けしていくのでご安心下さい!!
次回もよろしくです。




