第5話(最終話)
「よし!月光力チャージ完了」
探知魔法で魔物の状況を確認し、魔物が集結している場所。つまり次元の裂け目の可能性がある場所を特定した。
さらに、屋台が通る事が出来るルートも確認した。
「戦闘形態にチェンジ」
と、言っても外観がそれほど変わるものではない。
私が座っている所が、本当の戦闘機のようなコックピットに変化したくらいだ。
「よぉ〜し!しゅっぱぁ〜つ!」
気の抜けた号令で屋台は発進した。
◆
森の中を屋台で爆走している。速い!恐るべし戦闘形態。
それに、大きな凹凸でも問題なく走行する。
魔物の屍があっても関係ない。コックピットが揺れる事もない。
進路上の邪魔な魔物を排除しながら進んでいる。
始めは魔法で攻撃していたが、どうも効率が悪い。
森の中で山火事の恐れのある雷や火魔法は使えないし、他の魔法も強力なものは無く、大型の魔物だと一撃で、とはいかない。
唯一氷魔法が強力だが、一体づつしか攻撃できず。複数の魔物がいると、その都度屋台を停止させなければならない。
それで、これだ!
現在、この屋台の最強武器!
12.7ミリ重機関銃だ。
屋台上部から2連装の銃座のようなものが出てきて、コックピットから操作が出来る。
さらに、探知魔法と連動して自動追尾で射撃出来る。
理屈は分からないが、砲身の冷却の必用が無く、月光力がある限り弾数に制限がない。うん便利だ。
ドドドドドドドド!
重機関銃を撃ちながらまた爆走を開始している。
12.7ミリは強力だ。小型の魔物は射殺というより爆散している。
しかし、そのうち12.7ミリでもなかなか倒せない強力な魔物も現れるようになった。
それに、とにかく数が多い。いくら小型や中型の魔物とはいえ、数の力は強大だ。
そんな時。
ピロピロリン♪
『屋台レベルが2になりました』
「情報」で調べると。魔物を倒す事で経験値が増え、レベル上がる。屋台の能力も増え、強くなる。
急いでいるので詳細は省くが、まず、音声指示が可能になった。
今までコントローラーで操作していたが、攻撃しながら、というのはかなり面倒くさい。この機能は嬉しい。
そして、武装も強化された。
「よぉ〜し!ターゲットロックオン!地対地ミサイル、連続発射!」
プシュープシュープシュープシュープシュー
ドガドガドガドガどか〜ん
「よし!一気に殲滅完了!再び発進!」
◆
「ん〜ダメだな」
ミサイルでも処理出来ないほどの魔物がひしめき合っている。
次元の裂け目と思われる場所まではまだ遠い。
しかぁ〜し。
そんな時の為のご都合主義!
ピロピロリン♪
『屋台レベルが3になりました』
ね!まあ、そういう事。あはは...
「飛行モードに移行!エンジン始動!発進!」
屋台が少し戦闘機らしく変形し、カタパルトから射出する勢いで上空へ飛び上がった。
しばらく飛行、旋回しながら魔物の状況を確認する。
◆
ここは、森の深部。
魔物達の進行方向の先に黒い渦のようなものが見える。
上空から見ていると、魔物達はそこへ行こうとしているが、黒い渦より10メートルくらいの所から近づく事が出来ないようだ。
しかし、後続が次々と集まって来るのでギュウギュウになっている。満員電車顔負け状態だ。
「あそこか」
次元の裂け目があるとしたらここしかない。しかし、魔物が邪魔だ。
仕方がない。今の最強武器で、この辺の魔物を一掃するしか無いな。
森を広範囲に破壊する事になるが、現在でも魔物のためにめちゃくちゃになっている。
仕方がない。
まあ、深部だから、街には影響はないし、時間が経てば再生するだろう。
「よぉ〜し、ターゲットロックオン!巡航ミサイル連続発射!」
◆
黒い渦の近くに着陸して、確認した。
「なるほど、異世界へのゲートという感じだ」
半径5キロメートルは巡航ミサイルによって完全に破壊された。何もない。
しばらくは魔物も来ないだろう。
でも、急がないと、何が起こるかわからん!
『月の女神No.7セレーネちゃんコール♡』ポチっと。
『ちわーっス!ユヅキちゃん寂しくなったぁ?ダメねもぅ。お姉ちゃんが「うるさい!」あら、こわ〜い。それで、何かあったの?「たぶん見つけた」え、彼氏!いやだわ。このエッチ!それでそれでどこまでいったの?「だ・か・ら・次元の裂け目みたいなもの、見つけたの!何が彼氏だ、馬鹿じゃないの!」え、ホント!どこ?「近くにいる」分かったわ、すぐ行く!』
ったくお気楽な駄女神だ。
「やっほー」
直ぐに、本当に直ぐに駄女神セレーネがきた。
「誰が駄女神よ!」
あ、コイツは私の思った事が分かるのだった。忘れてた。
「それでどこにあるの?」
「あれじゃない?」
私は次元の裂け目らしい黒い渦を指差した。
「あ、そうそう!これこれ!」
そう言うとセレーネは次元の裂け目に近づいて、手をかざし、私には理解できない呪文のようなものを唱えた。
すると、あ!っという間に次元の裂け目は無くなった。
ポンコツでも女神は女神なのね。
「これで終了?」
「え?」
「え?」
2人でキョトンとなってしまった。
「もう、次元の裂け目は無くなったから、任務完了でしょ?」
「いやいやいや、これはイレギュラーよ」
「イレギュラー?」
「異世界が接触してできた次元の裂け目によって、この辺りの次元も不安定になっていたの、それで、ピリッとちょっと裂けたのね」
「それじゃあ、この近くに本当の次元の裂け目があるって事?」
「ううん。次元っていうのは距離は関係ないの。だからどこかは分からないわ」
ななななんだそりゃ。また探さないといけないのか。がっくし。
ま、でもスキル「屋台」は結構優秀だし、少なくともハズレスキルじゃないな。
なんとかなるか。
「そうそうなんとかなるわよ」
チッまた読まれた。
「そういえばセレーネはどこにいるの?来るのが早かったけど」
「あそこよ」
セレーネが指を差したところを見ると。
「月?」
「そうよ」
まあそうか、月の女神だからな。
「じゃあユヅキちゃん、またよろしくね。ユヅキちゃんの旅は始まったばかりよ」
そう言ってセレーネはヒュンと姿を消した。
「あああ、それフラグ!」
おわり
これにて完結となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。