皮一枚 :約500文字 :ホラー
「おう! ああ、いいよいいよ! また誘うわ! じゃあな!」
……暇だ。片っ端から友人に電話をかけたが、今日は誰もつかまらない。こういう日だと思って、あきらめるか。
とあるアパート。男は畳の上に大の字になり、深く息を吐いた。次いで大きなあくび。漏れた息の音が耳の奥で乾いた響きを残す。静寂の中、ただ天井の木目をぼんやりと眺めた。
――ん?
舌打ちをし、静けさを嫌って鼻歌でも歌おうとしたときだった。
どこからか話し声が聞こえた。
テレビだろうか、それともラジオか。このアパート、壁薄いんだよな……でも、なんだ? なにか……。
気になった男は身を起こし、壁に耳を当てた。
音の出どころは隣の部屋で間違いなさそうだ。ボソボソとくぐもった声。年老いた女性のものに聞こえる。
電話か? ……いや、それにしては途切れがない。抑揚もなく、ただ一定の調子で低く続いている。
……念仏?
ふと、男はそう思った。
妙にしっくりきた。仏壇に向かい、手を合わせながら呟く老婆の姿が目に浮かんだ。
……だから、なんだ。つまらない。
男は壁から耳を離し、再び畳に寝転んだ。また大きなあくびをする。しかし――
……ん? さっきより、近い?
妙な違和感に駆られ、男はもう一度壁に耳を当てた。
それは壁一枚隔てた向こう側から、はっきりと聞こえた。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」




