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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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保護を求めて        :約2000文字 :宇宙人

「あ! UFOだ!」


 その声を聞いた人々は、つい空を見上げた。その多くは『UFOなんて存在しない』『見たなんて言うやつは飛行機かラジコンの見間違い、あるいは頭がおかしいかだ』と普段からUFOの存在など信じてはいなかった。反射的に空を仰いでしまったことを恥じて、照れ笑いを浮かべた。

 だが、その考えはすぐに変わった。確かに空に何かが飛んでいるのだ。それは動きからして飛行機やヘリコプターなどではない。不規則にフラフラと揺れながら地上へと降下してくる。まるで蚊取り線香にやられた蚊のような動きだ。

 やがて飛行物体が近づくにつれ、その正体が見えてきた。それは小型の円盤型飛行物体――おそらく宇宙船だったのだ。


 宇宙船は広々とした公園に着陸した。他に適当な場所がなかったのだろう。すぐに周囲には見物人が集まり始めた。

 近くで見ると、その宇宙船は思ったより小さく、一人乗りではないかと思われた。だが、人間には未知の技術が使われている可能性がある。内部には我々の想像を超えた仕組みがあり、何人でも乗れるのかもしれない。

 皆、あれこれ想像を膨らませ、好奇の目を向けていた。中には「攻撃されるぞ!」と逃げ出す者もいたが、多くは好奇心が勝り、宇宙船に近づいて触ったり叩いたりし始めた。だが、宇宙船は何の反応も示さない。

 やがて科学者や政府関係者が現れ、見物人たちを追い払おうとした。

 そのときだった。宇宙船の扉が開き、中から宇宙人が姿を現した。

 息を呑み、見つめる一同。宇宙人のその姿は人間とよく似ていた。違いと言えば黄緑色の肌と、頭の上に生えている二本の触角だけ。もちろん、性格や言葉など何から何まで違うだろうが……。


「こんニチワ……」


 驚くべきことに、その宇宙人は人間の言葉を話した。翻訳機か何か使っているのかはわからないが、言葉が通じるなら話が進みやすい。


「えー、ごほっ……こんにちは。ひとまず地球にようこそ。歓迎しますよ。ですが……どのような目的でこちらに?」


 前に進み出た政府関係者が笑みを作り、そう話しかけた。宇宙人はゆらゆらと揺れながら口を開く。


「実ハ……悪い宇宙人に襲ワレテ、何とか逃げてきたノデス。どうか助ケテ……」


 宇宙人はそう言うと、その場にへたり込んだ。弱っており、敵意も見えない。ここで貸しを作っておけば、後の交流に有利だろう。政府関係者たちはそう考え、宇宙人に最高の施設で医療を用意した。

 その甲斐があり数か月後、宇宙人はすっかり元気を取り戻した。


「ありがとうございマシタ。おかげで元気になりマシタ。わたしの宇宙船は壊れて飛ぶことはできませんが、通信システムが正常ダッタので、仲間たちと連絡できマシタ。もうすぐコチラに着くソウデス」


「それはよかった。よいお仲間をお持ちで」


「ええ、アリガトウ。このお礼はカナラズ……あ、お腹が減りマシタ」


「ああ。では、また花を用意しましょう」


「いや、あれで結構デス」


 宇宙人はそう言いながら、その場に生えている雑草をむしゃむしゃと食べ始めた。

 それを見て政府関係者たちは小声で話し始めた。


「最初の頃は何を食べるのか、食中毒にはならないだろうかと心配したが、まさか見舞いに置いた花が好物とはね」

「しかも雑草まで食べるなんて便利ですね。おまけに食欲旺盛。これは奴隷にでもしたら……」


「しぃー、バカを言うな。友好が最優先だ。これだけ手厚く看護したんだ。これをきっかけに交流が始まり、彼らの技術を得られれば、文明の発展は計り知れない。我々の国が特に恩恵を受けるだろう。ほら、お仲間の宇宙船が見えてきたぞ。笑顔をつくれ」

「はい!」


 新たな宇宙船が着陸し、中から宇宙人が現れた。

 政府関係者は笑顔で出迎えたが、しかし妙だと思った。どうもあの宇宙人とは外見が異なる。青い肌に、防護服のようなものを着ている。大きな瞳のその顔からして、明らかに別の種に見えるが同盟だろうか。

 だが質問する時間はなかった。青い宇宙人は、夢中で雑草を食べている黄緑の宇宙人に近づくと、素早く銃のようなものを取り出して撃ったのだ。ピカッと一瞬光ったあと、黄緑の宇宙人は塵になり、風に吹かれていった。


「あ、あ、ああ、な、なんということを! せっかく我々が治療したのに!」


「……なに? 治療だと? 何を馬鹿な、余計なことをしたものだ。まったく、無事駆除できたから良かったものを」


 青い宇宙人は、憤りと呆れたような声で言った。


「駆除……? いったいどういうことです?」


「あれは宇宙の害虫だ。星から星へ移動し、緑を食い尽くす。だから我々の星が大規模な駆除作戦を実行したのだ。うまく追い詰めたと思ったが、群れは散り散りになり逃げて行ったんだ」


「そうだったとは……。その、我々にも何か手伝うことはありますか? どうやって駆除するのです?」


「ふん、君たち程度にできることはないだろうね。まあ、駆除方法は簡単なものさ。集まったやつらをその星ごと焼き払う。今度こそ容赦なく根絶やしにしてやる」

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