第89話 熾天の座に触れる者
「…さて、こんなもんか」
俺とセツナはニコルを縛り上げ、異形達の安否や部屋を確認し、魔法絡みのものを軒並み壊した。
「……アラタ」
「ん、どうだ? 操られてた人達は────」
静かに、セツナが首を横に振る。
「…そうか」
チラリとニコルの様子を伺う。
彼女は部屋の中央でロープで腕を縛られて座っている。
万理印らしき鉈も取り上げて、その身体には碧い電光が淡くパチパチと流れていた。
その痺れに時折ピクリと肩を震わせるあたり、俯いているだけで意識はあるのだろう。
俺の印章術は効いているはず……であれば、これ以上魔法を使って足掻くことはできない。
「魔警の人が言ってたぞ、カンメラでは"貧富や権利の差に関わらず"人間を操る魔法は禁忌指定になってるって。
お前は魔警に引き渡す……俺や、俺を庇ってくれる人の立場もあるからな」
ニコルの悪行が明るみに出れば、ヴァラトーへの取引材料になる。
俺をダシにして熾天化の調査や実験をヒューガナツでやるつもりなのかどうか、確実な事は分からないけれど……少なくとも先日よりは状況は良くなる筈だ。
「…くく」
「?」
ニコルの俯いた顔から音が漏れる。
彼女は、その唇から笑みを零していた。
「何がおかしい」
「……先代はさァ、やっぱり知らないんだよね」
「…………?」
「解らないか?
テメェの考えてる魔法とは全く違うんだよ……この熾天化って奴は!!!」
コイツ……何かする?!
彼女が叫んだと同時、その胸元から光が放たれる。
その光が軈て一つの印となって顕れた。
「なっ、熾天化!?
嘘だろうアラタ、新しい魔法は魔法を麻痺させるんじゃ────────」
セツナの言葉は、正しい。
魔法を麻痺させる魔法、そう組んだ。
だが、事実として。
目の前のニコルの光は、間違いなく熾天化している前兆のそれだ!!!




