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第43話 闘いのセンス

「せえいっ!!」


 気合を込めた焱の塊がクリスティナから放たれる。



 しかし、レプティは鋭い身のこなしで木に登ったり降りたりをしながら軽々と避けていた。



「くぅ、高低差がここまで狙いづらいだなんて……!」



 ロザリアと俺が構える後ろでクリスティナが悔しそうな声を漏らす。



 (このレプティ)の厄介さは、森への適応力だった。



 細身の身体を滑り込ませるようにしながら、強靭な後脚で跳躍し鉤爪で枝や幹を捉え、地上と木の上を自在に飛び回る。



 そして────────



ヴォンッッ!!!



「右だミアズマッ!」



「っ、ちィ!!」



 木の中に潜り込んだと思った矢先、レプティが枝葉を切り裂いて唐突に飛び出してきた。



 セツナとクリスティナの方に寄らないよう横にステップ。



 長めに引き抜いた槍を薙ぎながら避ける。



 しかし、レプティは着地直前に大きく地面を蹴り、そのまま俺の雷槍のすこし上をくるりと一回転しながら避けた。



 直後、轟音。



 着地先にあった樹木に奴のチェーンブレードが刺さる。



「くっそ、なんだあの物騒な遺物は────」



 レプティが身構えながらチェーンプレードを引き抜いた。



 そこにはくっきりと木を抉った跡がつき、その抉った部分は幹の繊維がグズグズになっている。



 切れ味のいい剣で斬られる方がまだマシだ。

 あんなので身を抉られたらでちゃいけないものが飛び出て即死するぞ……。



「ッ!」



 レプティが俺との間合いを素早く詰める。



 クリスティナはセツナとともにマギビークルの障壁の範囲内だから、こちらを狙っているんだろう。



 ロザリアの時を思い出して、槍を構える。



 レプティの基本的なコアの位置は後脚の付け根の下あたり。



 頭からコアが離れていてよく動く脚に邪魔されるから厄介だが、知能は低いと言われている。



 下手なことはしないと信じたいが……俺やロザリアに狙いを定めているあたり頭が弱いってのは望み薄だろう。



 槍を2本に分割して短槍二刀に切り替え、チェーンブレードの連撃に備える。



 間もなく、その禍々しい音と共に凶刃が迫った。



(右、左────突きッ!!)



 槍を前に構えて牽制しながら隙を見て横に回り込む。



 それに追従するようにレプティがチェーンブレードを薙ごうとするが……。



「死ね──────ッッッ!!!」



 殺気を感じ、大きく跳ねるレプティ。



 後ろから迫ったロザリアの拳がジャリッと鈍い音を立てて奴の尻尾を掠めた。



「助かった、ロザリア」



「礼は要らん。

 ……それより貴様、その闘い方は態とでは無く癖なのだな」



「は?」



 ゆっくりと俺たちの周りをまわりながら様子を伺うレプティを睨みつつ、ロザリアは続けた。



「いちいち見せ物臭いんだ、特に一対一の動きがな。決闘でもしているつもりか。



 もっと狡猾に動け。投擲の距離でやれているはずの罠や戦法が、近付かれた途端に近接しか頭に無くなるのは愚策だぞ」



「……そう、か」



 言われて気づく。



 そうだ、確かに俺は近付かれたらそれに合わせた戦い方で返していた。



「相手の戦法に律儀に合わせるな。

 路上の喧嘩(生き残る為の闘い)は、狡賢さが王道だ」



「……それは、ロザリアの経験からか?」



「ふん、女の素性を直球で探るな。

 お嬢様にしたら削ぎ落とすぞ」



 いつも通りの軽口を叩かれる。

 優しいんだか怖いんだか……いまだに掴めない。



 けど、狡猾に、か。



 気持ちを入れ替える。

 小刻みになった呼吸を、少しずつ引き伸ばす。



 そうだ、これは"決闘"じゃない。



生きる(かつ)為の、闘い────!」



 槍をもう一度抜き直す。



 考えろ。

 策を張って、俺の舞台で勝負する。

 奴に主導権を渡さない。



 考えろ。




 コイツを、どう仕留めるか────!!

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