Side1 I was Ai
*女神トークはカットです。
ーーさあ、サイドストーリーの本領発揮ですよ?
目を開けたら、見えたのは、一度見たことのある天井だった。
ーー私はこの世界に、確実に来たことがある。
もう一度目を閉じて、記憶を辿る。私は、アイ。異世界から来た。異世界ってどこ? ここ?
違う。
そして唐突に思い出す。何かに仕組まれたかのように。
そうだ、私はゲームの世界から来たんだ。
名前は…そう、
『ディストピア・オンライン』。
なぜ、今までこんな大事なことも思い出せなかったのだろう。
それは、神が私の記憶を消していたから。じゃあ、なんでこのタイミングで思い出させるの?
他のことは何も思い出せない。自分のしてきたこと。自分がどのように生きていたか。自分がどのようにして死んだか。自分とは何か。
あぁ、まただ。また、この違和感。疎外感。
いつになったら消えるのだろう。
永遠と繰り返す、パラドックスに引き込まれた感覚。そのパラドックスの中心は、何だろう?
私が悪者なの? 私が何をしたって言うの?
ねぇ、神様。教えてよ。
ーー私はこの世界でも…孤独なの?
自問自答。
ーーいや、私は一人じゃない。
もう一度目を開けて、起き上がって隣を見る。彼も起きたようだ。こちらから挨拶を投げかける。
「…おはよう」
少々の間があってから、
「あ、あぁ、おはよう」
「…?…どうしたの?」
ちょっとよそよそしい態度の彼。ああ、照れてしまっているのかな。
ウミカワショウゴ。
私を見てくれた人。私を存在させてくれる人。私を追いかけてきてくれた人。死ぬまで一緒だと言ってくれた人。死んでも一緒だと言ってくれた人。私を好きだと言ってくれた人。
彼は私のことが好き。じゃあ、私は彼のことをどう思うの?
再び自問自答。
私はーーーーーー
「えっと、きみのことを思い出せないんだ。
この世界の人かな?」
突き落とされる感覚。息がつまる。苦しい。胸がつまる。痛い。
えっと、冗談、だよね? ドッキリ、だよね? 君が私のことを忘れたりするはずない。
忘れてほしくない。
もしかして神様の仕業なの? ねぇ、神様。
どこまで私を独りにしたいの? あなたは、そんなに理不尽なの?
ーー結局、私は孤独。
「…私は、アイだ。君といっしょに異世界から来た」
彼に全ての状況を説明した。彼は全てを理解し、とりあえず、周りの探索に行くことになった。
一階に降りると、屈強な男がいた。私たちを拾ってくれたらしい。
「あの、ありがとうございました」
「お、目を覚ましたか! よかったよかった!」
マッチョマンは面白いし、いい人だった。ご飯までご馳走になり、お礼を言ってその家を後にした。
「とりあえず散策しつつ、図書館みたいなとこを探そうか」
まずは、この世界の情報収集ってことか。さすが、異世界研究者だ。手順をわきまえている。
一日中、街を歩き回ったが、それらしきものは見つからなかった。ただ気になったのは、どの店も無料だということだった。お金に困っている私たちにとってはとてもありがたい。感無量。なんちって。
結局日が暮れて、宿屋に行くことになった。
宿屋の前で、彼は何かためらっている。やっぱ成り行きとはいえ、女の子と一緒に泊まるのを躊躇しているのだろうか。私は別に気にしないが。
なにか考え込んでいる。もしかして、お金の心配かな? 看板に無料って書いてあるじゃん。見えてないのかな?
「…あれ見て」
「なんて書いてあるのか読めないぞ?」
そんなに視力悪いの?
「…あそこ」
「もしや、無料ってことか?」
「…たぶん」
改めて聞かれると、本当に完全に無料かどうかは怪しい。なにかの罠かもしれない。
相談した末、入って見ることになった。
「ようこそお越しくださいました!」
従業員は普通そうだ。なんだ、普通の宿じゃん。
彼は恐る恐る受付に向かう。そんなビビることないのに。
そして数分で受付を済ませ、部屋へ。中へ入ってみた。部屋の掃除もなかなか行き届いている。
その後、二人で食堂へ移動した。私は、スープカレーを頼んだ。
一口食べて見ると、辛い。スープカレーってこんなに辛いのか。全部食べきれるかな。
すると、彼のほうから交換を申し出てくれた。
申し訳ないと思いつつも、交換。彼の頼んでいた肉料理は美味かった。
彼は汗だくになりながら、涙を浮かべながら、激辛スープカレーを口に運ぶ。無理しているのかもしれない。
この"一生懸命さ"。この"必死さ"。そこに私は、惹かれてしまうのだろうか?
普通の女の子なら胸キュンポイントなのだろうか。自分が女の子のはずなのに、乙女心が理解できない。自分の感じているモヤモヤが何かわからない。
部屋に戻って、消灯。疲れた。しかし眠くならない。彼は、ランプを点けて、何やら書いているようだ。ただ、起き上がって見に行く気力は出なかった。
眠りに落ちたのは何時頃だったのだろう。気がついたら朝だった。もしかしたら眠れなかったのかもしれない。
〜〜〜〜
翌日。
朝食を終え、昨日とは反対方向を探す。
やっと見つけた図書館はとても広かった。この中から、日本語とこの世界の言語を繋ぐ本を探すらしい。
ああ、異世界だから彼はこの世界の言葉がわからないのか。
ーーなんで私はここの言語がわかるの?
そんな根本的な疑問にぶち当たる。まあ、たぶん一度来たことがあるからだろう。きっと、おそらく。
それにしても本当に本が多い。これは本気でしらみつぶしに探すしかないらしい。本音を言えばこんな一本調子な作業をやるのは不本意だし。
いろんな本があり、日本語の本を探すのには苦労した。ようやく見つけた一冊を彼の元に持っtake。
タイトルから不穏だったが、中身も酷いものだった。これを書いた人の顔が見て見たい。
本を借りて、図書館を後にした。
ご飯を食べた後、この世界の日本人の家を訪れることになった。
林という男はチャラかった。そりゃああんな本を書いてる人だから、だいたい予想はついていたけど。
林さんからいろんな話を聞いた。
私のいたゲームの世界へはこの世界から行けるらしい。よかった、これでやっとこの違和感から解放される。
その後はどうしよう? ウミカワとこのまま探検するのも悪くはない。
ーー少しずつ希望が見え始める。
そして、林さんは話を続ける。
「君、この世界が、何の世界かわかるかい?」
そういえば、何の世界なんだろう。一度来たことがあるらしいが、全く思い出せない。
「この世界はね…… チュートリアルの世界なのさ」
目の前が崩れ落ちる感覚。夢から覚めたような感覚、なのに夢の内容をはっきりと覚えてしまっている、あの感覚。
全てを思い出した。私が誰であるか。ーー俺が誰であるか。俺が何をしてきたか。
全てを理解していく。これが巡り巡る因果か。馬鹿みたいじゃないか。
一つだけ、分からないことがある。
ーー神様、お前は何がしたい?
いや、永遠に分からないのだろう。それが神の気まぐれ。神のみぞ知る。
俺が俺に恋して、俺に恋に落ちて、俺のために死んで、俺を忘れて、俺が消えて、俺のために戦って、俺のために死んで。そして、俺と出逢う。
俺はこんなことを、永遠と続けなければいけないのか。
ーーそんなの、そんなの。
「…イヤ。」
テンポ速くてすいません。どうでもいい本のくだりとかに文字数使ってるくせにね。まあ一度やってる話ですしね。早くいいところまで持っていきたかったので。
小説書くのって楽しい♪