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Another2 全てが平等な"ゲーム"で決まる世界 3

【異世界研究活動記録4】

〈1日目〉


 ここは、"ゲーム"で全てが決まる世界。その"ゲーム"とは、神聖にして、崇高にして、平等なるゲーム。

ーーじゃんけんだ。


 ルールは日本と同じ。グー、チョキ、パーの三つ巴。石、はさみ、紙の三すくみ。ロック、シザーズ、ペーパーの三角関係。


 地球のじゃんけんは、国によって違うと聞いたことがある。フランスやアメリカでは4種類以上の手があるらしい。手の代わりに、体を使ってジェスチャーでじゃんけんをする国もあった。


 ここに来た転生者が伝えたのだろうか。あるいは神が創ったのだろうか。


 それにしても、全てをじゃんけんで決めていいのだろうか。


 私自身も、小学校の頃の給食の揚げパンのおかわり争奪戦や、デュエルの前の先攻後攻決めなど、多くの場面でじゃんけんを経験してきた。


 もちろん、この上なく平等だ。出せる手は3種類。

勝つ確率も同じ。なにより、勝敗がはっきりしている。勝つか、あいこか、負けるか。あいこでも、勝敗が決まるまでやり続ける。

 そして、平和だ。武力も使わない。道具も使わない。知力も(一部例外を除き)使わない。運が全てを決する。



ーーだが同時に、

味気なくはないだろうか。


 全ての論争が、運任せに帰着する。これまでの努力が、右手一本にかけられる。楽をしてきた人にも、チャンスが与えられる。平等に。


 戦争だって、じゃんけん。国を、民を、給食の残り物と同等に扱うのか?


 地位も財産も、じゃんけんに勝てば手に入る。何十年努力しても、たった十何秒かのゲームで終わる。これが、本当に平等な"ゲーム"といえるのか?




 否定ばかりしていてはいけないか。


 ここからは研究成果を書くことにする。


 まずは、気候。夜である現在、少し涼しい。昼間も上着がいらないくらい、過ごしやすかった。また、前述の通り昼夜の区別がある。太陽や月は見当たらないが、明るさが時間によって変化している。今後も気候の周期的変化などについて、観察していきたい。



 次に、食べ物。夕食には、ヌルズブという麺料理を食べた。あれ、ズルヌブだったっけ。ズブズブだったかもしれない。まあ、いいや。

 ネーミングはともかくとして、味は日本の塩ラーメンに近い。ヌルヌルしているわけでもなく、あっさりしていて食べやすい。



 そして、街について。道路には車やバイクが走り、高層ビルなどはなく、低い建物が軒を連ねる。ヨーロッパの街並みを想起させる見事なものであった。

 また、法制度なども整えられているらしい。歴史がどれだけ深いかはわからない。明日協力者に聞いてみることにしよう。


 街で見つけた面白いものは、お菓子屋の前に置いてあった、ガチャポンならぬ、ジャンケンポンだ。お金を入れてレバーを回すと、グーかチョキかパーのストラップが出てくる。欲しい人はいるのだろうか。いや、いないだろう。可愛くもないし、使い道もない。

あるいは、これも運試しのひとつなのかもしれない。まあ、コンプリートする分には苦労しなさそうだ。絶対買わないけど。日本にもよくあったなぁ。それ誰が買うの?というガチャポン。





 結局、ここで述べておきたいことは、異世界も現実世界も、一見違いはないように見えてしまう、ということだ。ある数カ所を除けば、我々の住んでいた地球となんら変わりない。



 私に課せられた使命は、この"違い"を見つけていくことだ。


 まだまだ、世界について知らないことがたくさんある。何年かかったとしてもいい。この世界を知り尽くそう。中年になっても、老人になっても、私は研究者であり続けたい。いつか、その研究が認められるその日まで。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「こんな感じかなあ」

一人でつぶやいてみる。


 世界に対するクリティカルシンキングから始まり、途中からは研究成果というより、感想のようなものになっている。まあ、大いなる発見には、小さな気づきが大切だと、高校の時の化学の先生が言ってたし。




 ベッドに入り、明日のことを考える。

ーーじゃんけん大会が、始まる。

 今まで経験してきた中で一番多くの人の思いが乗ったじゃんけん大会だ。まあ、俺は代表になんかなりたくないので気楽だが。



「あ、そうだ。遅れないようにしなきゃ」

 大会は、明日の朝9時からだ。しかし、俺は早起きが苦手だ。日本でも不規則な生活をしてきたし、最近も気を失う系睡眠ばかりだったし。


 携帯の目覚まし機能をセットし、さらに買ってきた目覚まし時計のアラームもセット。朝に弱い俺でも、二重アラームなら大丈夫だろう。




目を閉じる。



 こうして、一日一日と俺は老いていく、のか?一度死んでるけど、年齢とかどうなるんだろう。体が実体を持つ以上、老いることは避けられないのだろうか。


そのあたりは、次にめがみんに会った時に聞こう。





〜〜















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