第4章 辿り着くは理想郷か 4
ーーーーもう、限界だ。
なんで、こんな単純作業ばかり、なんで、こんか地味な作業ばかりしなくてはいけない?
同じモンスターを、何度も何度も何度も何度も何度も。同じ景色、同じ技、同じモンスター。
しかも、そのどれもがまるで何度も空気を咀嚼しているかのよう。要するに、歯ごたえがない。喉越しもない。
疲労もmax。もううんざりだ。十分にレベルは上がっただろう。
装備を整えて、俺は、最前線組に参加した。
現在最前線は第34層。
周りのプレーヤーたちを見てみると、自分よりもレベルが高い。自分より強そうな装備を身につけている。いったいこの人たちはどれくらいやり込んでいるのだろう。
しかし、俺にはどこからか湧いてくる謎の自信があった。
ーー俺には何かしらの力がある。
それと、早くアイに会いたいという、焦りがあった。
普通ならパーティで挑むであろうフロアボス。そこにソロで突入していく。周りのプレーヤーは驚いたことだろう。俺が一番驚いている。
大きな扉を開け、中に入っていく。
相手は暗黒騎士。
「よくぞ参った」
「言葉が通じるのか?」
「騎士の戦いは、礼に始まり礼に終わる。故に、言葉は必要不可欠だ」
こういう時は名乗るべきなのだろうか。
「俺の名前は海川翔悟だ」
「…ほう。我が名はクレーゼ」
暗黒騎士クレーゼ。ただならぬ雰囲気を持っている。
「女単身で乗り込んでくるとは、なかなか見込みがある。少しは楽しませてくれたまえ」
そして、暗黒騎士は剣を握った。
「いざ! 勇ましき女騎士よ!」
暗黒騎士は勢いよく突っ込んできた。この殺気。
やはり、少しは歯ごたえがありそうだ。
ーーそう思っていた。
"少し"なんかじゃなかった。
強い。速い。一撃が重い。一発が正確だ。身のこなしがプログラムされたものとは思えない。
「…ほう少しはやるみたいだな」
余裕の表情を見せる暗黒騎士。
「お前こそ」
息切れしてバテバテの冒険者。
ーーでもさ、俺が負けるはずがないだろ?
俺は何かしらの才能がある。俺は神に選ばれた。
こういう転生者にはチート級能力が宿るんだろ?
研究しまくったよ。力が湧いてくる……ってなるんだろ?
なあ、神様よ。早く能力覚醒させろよ。
無敵の鎧でもいい、無限の魔力でもいい、
唯一無二の魔剣でもいい、無双の技でもいい。
さあ! 今こそ!
なあ、何でだよ。なんでだよ!
早くしろよ。
早くクリアしたいんだよ。早く会いたいんだよ。
回復薬、切れちまうぞ?
なんか相手、大技出そうとしてるぞ?
あー、わかった。
死に戻りの能力だろ?
目が覚めたらリスポーン地点なんだろ?
リスポーン地点てどこだ?
セーブなんてなかったぞ?
また、初めからやり直しなのか?
「ふっ、まだ修行が足りんな。海川よ。我が一撃で沈める!」
暗黒剣を闇が包む。
「 "ダーインスレイブ!!!"」
暗黒剣が振り下ろされ、俺を直撃する。
今まで、闇属性ってなんだ? と思っていた。今ならわかる。自分を包む闇。絶望。怖い、怖い、恐い。
なあ神様、お前はそんなに適当なのか? お前はそんなに理不尽なのか?
おい、神様ーー、お前はそんなことして、楽しいか?
だが、俺は知っていたはずだ。研究したはずだ。
予期せぬところにしか、幸運は舞い降りないと。
舐めてた。異世界をなめてた。異世界に近道なんてない。地道な作業を一から積み重ねなければならない。
異世界じゃなくたって同じだ。
ーーこれがこの世界の現実。
神様を侮っていた。俺は神様に見捨てられたのか?
嫌だ、消えたくない。
闇が深くなる。
ーーアイ……
もし、やり直せるならーー
俺はーー
目の前が真っ暗になった。
Game over
第4章 辿り着くは理想郷か 完




