第4章 辿り着くは理想郷か 2
【異世界研究活動記録3】
〈3日目〉
ゲームの世界に転移した。神の手ではなく、人の手によってプログラムされた世界。誰もが一度は夢見る、今まで画面の中だった世界。
俺も子供の頃に、時々思った。ゲームの画面からキャラクターたちが、飛び出してくるのではないか。
逆に、俺が画面の中に、飲み込まれてしまうのではないか。
今となっては、ばかばかしい。ゲームは所詮、ゲームだ。行動がプログラムされている。迷ったときはヘルプを開ける。行き詰まったら攻略情報をみれる。
戦闘だって、ボタン1つで技が出せる。
ーー死んでもリトライできる。
しかし、この世界は違う。
何もかも自由だ。攻略は自力だ。戦闘は自動ではない。
疲れを自分の体で感じる。限界を自己の体で感じる。ストレスを自らの脳で感じる。快感を、全身で感じる。そして、何より、
ーー死んだら終わりだ。
ゲームオーバー。
死んだらどうなる? また転生できるのか? アイに会えるのか? この世界でやすやすと死んで、神は俺を認めるのか?
神様は俺に何を期待する?やはり、ゲームクリアしかないだろう。栄誉のあるゲームクリア。そのあとに、名誉の死を遂げてやろう。
ただ、この世界はゲームであって、ゲームでない。
VRMMO。バーチャル・リアリティ。仮想"現実"。
また、現実だ。まだ、現実だ。結局、どの世界に行こうと、"現実"がつきまとう。現実からは逃れられない。
いろんな世界を見てきた、林さんと恵さんはこのゲームを、『ディストピア・オンライン』と名付けた。
もっと前向きなかっこいい言葉にしたら、売れるだろうに。
ーーディストピア。暗黒郷。地獄郷。
それは、この現実のことをいうのだろう。結局、どこの世界に行ってもユートピアなんて存在しない。
似て非なる桃源郷だってない。
あるのは、リアル。むしろ、非現実なんてこの世に存在するのだろうか。もし、そこに非現実があるのだとしたら、それは逃げだ。文字通り現実逃避でしかないのだろう。必死に、現実から目をそらし、目のやり場が無くなれば目を閉じる。
俺は、どうなのだろう。
ーー俺は、目の前の世界を見ているだろうか。




