さようなら現世!こんにちは現代
こんにちは。
ネコミミ好き之助と申します。
つたない文章ですがどうぞよろしく。
男は鈍い銀色の光を放つ刃を自らに突きつける。
畳がひかれたアパートの一室。傍から見たらこの男は人生に疲れ、絶望した自殺志願者に見えるだろう。それもかなり時代錯誤な。
だが男のいでたちには若干違和感を覚えざるを得ない点がいくつかある。
まず小柄な背中には不相応な大きめのリュックサック。リュックを背負っての切腹なんて前代未聞である。
サイドポケットには小型の水筒や保存食のカンパンなどが押し込められている。
ともすればこれから楽しい楽しいピクニックにでも出かけるような、そんなほほえましい印象さえ受ける。
次に男が膝の上にのせている生き物。茶色がかったフサフサの毛並みにつぶらな瞳。口元からは長いおひげが数本。
そうネコである。
そしてこのネコは突きつけられる刃と男の体のちょうど中間に居座っている。
これから起こることを理解しているように小刀の方をじっと見つめる。
ここまでの2点ですでに意味不明だが、最後の謎が彼の服装。
上から下まで暗めの藍色で統一されており、口元は同色のマスクのようなもので隠されている。
上半身は羽織、下半身は袴。さらに両の腕には手甲が装着された、まるで潜入や戦闘などを想定したようなその恰好。
そう。忍者装束であった。
「おい半蔵・・・。本当にいくんだな・・・。」
男の背後に立つ介錯人であり同じく忍者の男が語り掛ける。
「もう決心はついたでござる。サスケよ、お主とは長い付き合いであったが最期に嫌な役割をさせてしまうでござるな・・・。」
これから腹を切る半蔵という男は無機質なダウナー系の目に少しだけ申し訳なさそうな色をたたえて答えた。
「ハァ・・・。全くだよ。お前のトンデモ計画のために友人の切腹を間近で見届けた挙句その首を落とさなきゃならないなんてな。」
「で?成功するんだろうな。その異世界転生の儀とやらは。」
「・・・正直それは確実とは言えないでござる。」
「・・・それ失敗したら俺ただ友人斬っただけなんだけど・・・。そこまでして行く必要ある?」
「太古から伝わる儀でござる。我が師もそれで旅立った。拙者は先人たちを信じるでござるよ。それに・・・。」
半蔵の目が少しだけ遠くを見つめる。
「もうこれからの時代に忍者は必要ない。いや、忍者が必要な世であってはならんと思うのでござるよ。」
時は2056年。
数年前に日本で起きた小さな紛争を最後に表立ったすべての争いごとは静まり、人々は平和な日本を謳歌していた。
こんな時代がいつまでも続けばいいなと、暗殺や密偵を生業とする忍者でさえもそう思う。
「世が平和をとり戻した今、拙者たちの役目は成ったでござる。」
言うと半蔵は手元にある小瓶からドス黒い謎の液体を飲み、膝元のネコにも一口飲ませた。
ネコは若干顔をしかめるが、また何事もなかったように小刀に視線を移す。
「ミィも連れてくのか?」
「大事なパートナーでござる。一応本人(?)にも確認はしたでござるよ。」
半蔵の膝に乗る猫ミィはただのペットではない。
あらゆる生物とコミュニケーションをとることができる「心通の術」によりあらゆる忍術を仕込んだスーパーにゃんこであり、これまで数多くの任務を共にした相棒である。
「薬を飲んでからあまり時間を空けてはいかんでござる。そろそろ始めるでござるよ。」
小刀に込める力が強まる。
「分かったよもう止めねえからな。達者でやれよ。」
「ありがとうでござる。・・・いざッ!!」
ブシュウウッ!
小刀はミィそして半蔵の胴に突き刺さり、室内になんとも言えない臭いが立ち込める。
刀を立てる手からは血液とその他の体液が入り混じったような液体が垂れている。
ミィも半蔵も呻き声こそ上げないが壮絶な表情になっている。
「・・・サ・・・スケ・・・。」
「ッ!・・・もう無理して喋るなよ!!」
そうは言ってもこの世界での死を前に彼が遺す最期の言葉だ。
友人として聞き届けてあげるべきではないのだろうか。
「い・・せかいッ・・には・・・・・・・・きょにゅッ・・・・・きょにゅ・・う・・のッ・・エル・・フ・・・とかッ・・・」
・・・だめだこいつはやく介錯してあげないと。
サスケは構えた刀を勢いよく振り下ろし、半蔵とミィの意識を刈り取った。
次回から厳しい異世界サバイバルが幕を上げたり上げなかったり・・・。
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