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女工場の建設

いよいよ、工場制手工業が始まります

蝦夷地の発展は、更に進みます

女工場の第一号は、小樽に作ることとなった


一之進の要請から始まった話なので、

最初に女工場を小樽に作るのは順当な所だった

一之進としても、上手く女工場が行けば、小樽に更に増やして欲しい所である


島本屋としては、小樽がうまくいけば次は箱館に建てるつもりではあった

それぞれの思惑に、微妙な違いはあった

なんにせよ、最初が肝心なのは同じだった


女工場に勤める女性は、大きく分けて二通りになる


一方は、従来から小樽で賃仕事を請け負っていたもの

こちらは、通いと呼ばれた


もう一方は、一之進や島本屋・小樽の問屋連合の伝手で集めた奥州の娘達

彼女達は、工場と一緒に建てられた寮に住むこととなった

その事から、彼女達は寮生と呼ばれる事となった


初の女工場の支配人に選ばれたのは、

石工の金吉の弟子三吉だった


彼は骨惜しみせず働き、後輩の面倒見も良い事を見込まれた

そして、何より既婚者である事が評価された

三吉夫婦は、二人で寮に住み込むことになった

支配人兼寮長・寮母である


三吉は、女房から今毛糸編みの手解きを受ける事にした

毛糸編みの要領を覚えるためだった

毛糸編みを寮生に教える役目は、三吉の女房小春が担当する事になった

小春にとっても、手順を教える練習になった


工場兼寮になる煉瓦建の建築を行っている金吉の手伝いをしながら、三吉は尋ねた


三吉

「棟梁、本当にあっしに女工場の支配人なんて務まりますかね?」

「毛糸編みってのは、なんだか不器用なあっしには向かない気がしやす。」


金吉

「棟梁はよせ、これからお前さんは独り立ちするんだから。」

「俺が、お前さんを推薦したのは、器用だからじゃない。」

「現場でよく周りに気を配って、後輩の扱いも上手い。」


「それに、お前が一番の編み手になる必要はない。」

「後輩の職人にやったように、女工達に気を配れるかが大事だ。」


三吉

「でも、あっしに若い娘の気持ちはよくわかりません。」


金吉

「そんな時には、女房の小春にきけ。」

「正直いうと、お前さんだけじゃ心許なかった。」

「お前さんの、女房が小春だから推薦したんだ。」

「二人で力を合わせれば、何とかやっていけるだろう。」


開所からしばらくは、通いと寮生の間の反目

(それは、寮生だけ昼食が出るなど小さな不満の重なりだった)


寮生同士の諍い、仕事の巧拙などの不満などが三吉夫婦を悩ませた

(仕事の遅い者でも、速い者でも同じ給金など)


しかし、三吉は持ち前の粘り強さと、気配り、

そして女房の適切な助言で乗り切る事ができた


一年ほど経って、女工場がうまく回り始めた

その頃には、女工同士から自然と仕切り役も生まれ

職場の決まり事も固まっていた


金吉の見立ては正しかったようだ


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