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第7話:リリース記念イベント

本日の新キャラ

レオン:剣士

スキル:【エッジショット】 剣を振った風圧で、剣の大きさに比例して「目に見えない斬撃」を放つ。


レイ:魔術師

スキル:【指向性シフトコントロール】放った非追跡系魔法の飛行ルートを、飛んでいる最中に1回だけ、任意の角度(90度直角、180度反転、斜めなど)に急旋回させる。

【発射前】 空間に「迂回して戻ってくる」といった複雑な弾道をあらかじめ仕込むことができ、発射前ならリアルタイムにそのルートを修正・上書きできる(※追跡系魔法には使用不可)。

【発射後】 弾道の座標修正はできず、その場で「一度だけ向きを自由な角度に変える」ことしかできない。


ニトロ:錬金術師

スキル:【瞬間調合クイッククラフト】 作業台を使わずにメニューから調合できる。(自動調合も可)


ギア:鍛冶屋

スキル:【質量変化ウェイトコントロール】手に持っている武器、または装備している防具の「重量」を一時的に極端に増減させる。

重くする(武器):【衝撃インパクト[中]】または【耐衝撃アンチインパクト[中]】を付与。

重くする(防具):【耐衝撃アンチインパクト[中]】を付与。

軽くする(武器・防具):特に追加効果はナシ。 ただし物理的な質量が激減するため、大槌ハンマーなどを短剣並みの「あり得ない超高速」で振り回したり、重装のままシーフ顔負けの「超軽量高速ステップ」を踏むことができる物理ハックスキル。

 ◇◇◇運営チーム◇◇◇


「江口さん、速報です」


「まさかアインがログインして「ません」


(ほっとする)


「ちなみに3階層が攻略されました」


(静寂)


「え?今攻略っていった?」


「はい」


「まだ初日だよね?」


「まだ6時間しか経ってません」


「5階層攻略予想は3ヶ月ほどだったよな?」


「そうです」


「ハァァァーーーッ!? サービス開始してまだ数時間だぞ!? なんでもう攻略されてんだよ!!」


「いやぁ、世の中には自分たちの想定を超える『猛者』がいるんですねぇ」


「しかも正攻法です」


「パーティメンバーは【エッジショット】のレオン、【指向性(シフトコントロール)】のレイ、【瞬間調合(クイッククラフト)】のニトロ、【質量変化(ウエイトコントロール)】のギアの4人組です」


「しかしまだ想定内です」


「何がだ」


「5階層は絶対に攻略できませんから」


「そういえばそんなこと言ってたな」


「あと、しれっと液体胃薬を半ガロン(1ガロンは約3.785リットル)飲まないでください」


「美味しいからな」


「僕には美味しくなかったんですが」


「ちなみに例のボスはどうなってる?」


「はい、完璧にできました。かなり良くできたので討伐されるのは少し残念なんですが」


「どんなボスなんだ?」


「一部の攻撃に結晶化というデバフを与えたり、様々な魔法を放ったり、レーザーをぶっ放したりします」


「強くね?」


「まあ、数千から数万人対1体ですからかなり強くしないといけません。ちなみにシュミレーターではなんとかボスが勝利するぐらいですがAIなのでプレイヤーが勝つ可能性が高いです」


「なるほど(わかってない)」


「そのクリアパーティが今、GCAで祝勝会やってるみたいですよ。ちょっと自分たちもログインして、どんな奴らか視察しに行きません?」


「いいですね。行きましょう」



「マジ?」


 ◇◇◇GCAグランドコンコースアセンプリ内◇◇◇



「着きました」


「「おー」」


 メンバーは魔術師の『ノクターン(佐藤)』《スキル:暗視(ナイトビジョン)》と錬金術師の『ポリゴン(加藤)』《投擲(スローイング)》そして、剣士の『ガストリック()』《スキル:不屈の精神(アイアンウィル)》でパーティ名は【ナイトワーカー】全部佐藤が用意した。ちなみにガストリックってなんだろって調べたらなんか美味しそうな画像が出てきた。


「なんか前よりお祭りっぽくないか?」


「リリース記念イベント中ですからね」


「肉串うまっ」


「あのマフィアっぽい人か?」


「「違います」」


「なんかめっちゃ強そうなんだけどな」


「なんなら会場はあっちです」


「てか、何食ってんの?」


「イベント専用屋台の肉串です。美味いですよ」


「いつの間に」


「俺にも一本くれ」


 加藤から肉串を一本受け取り、豪快に口へ放り込む。


「うまっ!?仮想現実の肉のクオリティじゃないぞ!」


「ですよね。イベント用にデータ作りに1ヶ月かけた力作ですから」


「モグモグ、すげーな(わかってない)」


「ガストリックさん、肉食ってないで前見てください、前。あの人だかり、全部彼らのファンですよ」


 佐藤が呆れたように、噴水広場を指さす。そこには、文字通り黒山の人だかりができていた。中央にいるのは、ひときわ目立つ装備をした4人組だ。


「あれが[ノーネーム]のレオン、レイ、ニトロ、ギアか…」


「はい。リーダーのレオン、ただのイケメンかと思いきや、信じられない神速の剣撃でした。動画見ましたけど、ボスの予備動作を完全に読み切ってますね」


「ニトロの『瞬間調合(クイッククラフト)』もエグいな。ボスの即死級攻撃の瞬間に、耐性ポーションを全員の足元に投げつけて相殺してやがる。あんなのテストプレイでも想定してねえよ……」


「ハハッ、仕様の穴を突くのがゲーマーの特権ですから。僕たちの負けです」


「なんかアバターなのに胃が痛くなってきた」


「諦めてください、ここはゲーム内です。でもガストリックさん、彼らがどれだけ凄くても、例のボスは突破できませんよ」


「おいノクターン、お前さっきから自信満々だけど、どんな仕掛けなんだよ。結晶化と、魔法と、レーザーだろ?」


「何万人で囲んでボコろうとしても、全員に等しく塵と化します」


「えげつな。お前ほんと性格悪いな」


「褒め言葉として受け取っておきます」


「ちょっと待って。静かに」


 ポリゴンが突然、2人の肩を叩いて身を潜めた。


「なんだよ加藤、あ、いやポリゴンか」


「レオンが、こっち見てます」


「「は?」」


 噴水広場の中心。大歓声に手を振っていたはずのレオンが、ふと動きを止め、まっすぐにガストリックたちの方向を睨みつけていた。


「おい、まさか運営だってバレたんじゃないだろうな」


「まさか、一般プレイヤーと同じ装備ですよ。目立つ要素なんて」


「あ、歩いてくる。こっち来ますよ」


「マジかよ! 逃げるか!?」


「ダメだ、今逃げたら逆に怪しい!」


 群衆が割れ、3階層を最速突破したレオンが、ゆっくりと歩を進めてくる。数千人のプレイヤーの視線が、レオンの動きを追って、そのままガストリックたち3人に集中した。


(やばいやばいやばい、運営ってバレたら大騒ぎだぞ!)


 レオンが目の前で立ち止まる。至近距離で見るその装備は、初日とは思えないほど禍々しく、そして強者特有の威圧感を放っている気がする。


「すみません、そこの3人」


 レオンが低く、よく通る声で話しかけてきた。


「「「は、はいっ! 何でしょうか!」」」


 裏返った声で答える3人。緊張が最高潮に達し、静寂が広場を支配する。レオンは江口の顔をじっと見つめ、それから、その手元に視線を落とした。


「その肉串、どこで売ってんだ?」


「「「は?」」」


「いや、めっちゃ美味そうな匂いさせてるからさ。俺らさっきから攻略ばっかで何も食ってなくて。それ、どこの屋台?」


 3人は、完璧にフリーズした。


「あ、あっちの……東通りの、イベント限定屋台、です……」


「マジ? ありがとう!東通りに美味い肉あるってよ! 行こうぜ!」


 レオンが後ろのメンバーに手を振ると、数千人のプレイヤーが「おおーっ!」と地鳴りのような歓声を上げて移動を始めた。嵐のように去っていくプレイヤーたち。静まり返った広場で、江口は深く長いため息をついた。


「胃薬。やっぱり現実に戻ったら、もう1ガロン飲むわ」


「僕も一口もらおうかな、胃薬」


「自分も飲みます」



 ◇◇◇ ネット掲示板:アルカディア・プロジェクトについて◇◇◇



 150 :名無しの開拓者

 お前ら速報wwww

 3階層最速突破の[ノーネーム]がグランドコンコース(GCA)で祝勝会やってたぞwwww


 151 :アイン(※久々の登場)

 マジかよ見たかったわやっぱり最強ギルドの風格漂ってた?


 152 :名無しの開拓者

 いやそれがさ……レオンが血相変えて一般プレイヤー3人組に突撃していったから、「うお!PKか!?」「まさか初日から揉め事か!?」って会場の数千人が息を呑んで見守ったわけよ。


 153 :クッキー

 で、何が起きたんだ?


 154 :名無しの開拓者

 レオン「その肉串、どこで売ってんだ?」

 一同「「「は?」」」


 155 :ソードマスターを目指す

 wwwwwwwwwwwwwwwwww


 156 :自称魔法使い

 緊張感返せww

 命がけの攻略直後で腹減ってたんかいww


 157 :名無しの開拓者

 でもあの肉串、ただの飯じゃねえぞ。

 イベント限定屋台のメニューで「30分間最大HP5%上昇」のバフ付き。おまけに今は経験値2倍イベント中だ。

 つまりレオンたちは、4階層のレベリング効率を最大化するために肉の匂いを嗅ぎつけたってわけ。


 158 :名無し

 さすがトップ走る効率厨は嗅覚が違うな……。

 てか、その絡まれた3人組はどうなったの?


 159 :名無しの開拓者

 なんか[ナイトワーカー]ってパーティ名の3人組。

 メンバーが『ガストリック』『ノクターン』『ポリゴン』。

 レオンに場所教えてあげた後、魂が抜けたみたいに放心状態になっててワロタ。


 160 :歩く辞書

 ガストリックってwwwww

 胃炎とか胃薬の意味じゃねえか。なんでそんな名前にしたんだよwww

 調味料の方が出てきたんかwwww


 161 :自称有識者

 [ナイトワーカー](夜勤)

 ガストリック(胃)

 ノクターン(夜想曲)

 ポリゴン(多角形)

 パーティ名の統一感ゼロで草。適当につけたろこれ。


 162 :名無しの開拓者

 そのあとレオンの「東通りに美味い肉あるってよ!」の一言で、数千人のプレイヤーが地鳴り上げて東通りに大移動してたぞ。あの3人組、完全に嵐に巻き込まれた一般人だったわ。


 163 :アイン

 草


 164 :名無しの開拓者

 その頃、[ノーネーム]の連中は東通りで肉串をアホほど買い占めて4階層へ消えていきました。

 イベントの経験値2倍とHPバフの組み合わせはエグいな。

 あの効率だと、マジで今日中に4階層も終わるんじゃね?

【おまけ】

仕様書にないアルカディア 〜斜め上どころか垂直に埋もれた奴ら救済所〜


作者:始まりました!本編の裏話コーナーです!プレイヤーの行動がトチ狂っているせいで、出オチしたり設定が濃すぎて埋もれた不憫なキャラやボスなどを、解説して救済します!


作者:第1回は、江口さんが目撃したあのマフィア風の男。名前は『レイズ』です。効率無視で「ファンタジーにマフィアがいたら面白そうだから!」というロマンだけでこだわり抜いたスタイルですね。黒のトレンチコートに中折れ帽子を合わせ、防具はすべて「非表示」にする徹底ぶり。手元の純白の手袋は「指のポーズ認識の精度を100%にする」というVRならではのメタな実用性でハメています。


作者:レイズのスキル【ギャンブル】の仕様は以下の通り。


 A.チャージ:1秒ごとに「チャリン」とコインを投げる。当たりでバフがインフレ。ハズレでデバフ蓄積。超低確率で全リセット。

 B.リロール:5分に1回、全チャージを消費してデバフを消す「損切り」。

 C.ショット:指で「ハンドガン」や「スナイパー」のポーズを作って撃つ。直撃で確定スタン&大技以外強制キャンセル。さらに3本指の「スナイパー」には【与ダメージ2倍】というバグ同然の隠し超補正がある。ただし撃つと低確率で『ブレイク(銃身破損)』が起き、自分の指が封印される。自分の指なのに(笑)


作者:ここまでガチガチに設定を作ったのですが、出番が思いつかないののとスキルの問題で多分2度と現れません(笑)。


作者:ちなみにあの後、肉串を注文しようとした瞬間、レオンの「東通りに美味い肉あるってよ!」の大号令が響き、数千人の大移動に巻き込まれました。風圧で帽子は吹き飛び、人混みの奥へ消えていきました。本編では一瞬でしたが、いつかは出番が来て欲しい。

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