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第72話

今回、ミルザが新たな動きを見せる。

 アルテミシア城、エミリアの執務室

 街での騒動から2日、エミリア達もあの人形に関する情報を集めていた。

 そして現在、調査の結果を共有し合う事となった。


「こっちでも現場に残ってた魔力を調べた所、あれは何かを媒体にして精製されたゴーレムの1種だと言う事が分かったよ」


「こちらもギルドや図書館の文献を漁ってみたが、該当する情報が見つからなかった。恐らく何者かが独自のやり方で精製したゴーレムだろう」


「そう、分かったわ。犯人の方も正体も目的も判明していない以上、警戒を続けるべきよ。そう言う訳だから、これから調査に向かうわよ」


 そうして、エミリア達は街へ調査に向かう事になった。




 そしてエミリア達も、現場周辺から得た情報から調査を行っていた。


「…やっぱり有益な情報は無しか」


「目撃者によると、何もない所から急に現れたって話だからね」


「この魔力の名残、大方遠くから精製と召喚を行ったんだろう」


「一体誰が何の為に?」


「考えられるとすれば、何かの実験の最中だったか、ただの愉快犯か、あるいは…」


 と、思案中のエミリアは、路地裏からこちらを見ている人影に気付き、人影もまた、その場を去っていく。


「ごめん、ちょっと待ってて!」


「姉さん!?」


 と、エミリアも路地裏に入り、人影を追っていく。


「待って!私は貴方と話がしたいだけなの!私もこの国の王女として、貴方に危害を加えないと約束する!だから…!」


「…本当に?僕の事、助けてくれるの?」


 と、立ち止まった人物がローブをはだけさせると、活発な少年の顔が色気漂う女体に乗ってる姿が現れた。


「貴方は…?」


「急に変な人形に襲われたと思ったら、こんな身体になっちゃって。顔は僕のままなのに、身体はこんなだから、家にも帰れなくて。こうして誰にも見つからない様に隠れるしかなくて…」


「そう。泣きそうになるくらい、怖い思いをしたのね。大丈夫、私の方でも家に帰れる様にするから。…貴方、名前は?」


「…ジグ」




 そして、ジグに女性服を与えた後、彼が被害にあった裏通りに向かっていた。


「それでジグ、襲われた時の事、聞かせて貰える?」


「はい、この場所を探検していた時、赤い女の人の形をした人形が出て来たと思ったら、急に僕に向かって来て、それで僕の身体の中に入ったと思ったら、僕の身体がこんなになっちゃったんです。これ、あの人形の形のままみたいですけど、脚が勝手に内側に向いちゃって、それで僕もアレが挟まれて、本当に窮屈で仕方なくて…」


「俺の方でも確認したけど、どうやら身体の形だけこうなっただけで、性器とかはそのままみたいなのよ」


「つまり女の見た目になったが、中身は元の少年のままと言う事か…」


「おっぱいの方も動く度に揺れて気になってたし、先っちょも擦れて変に感じてたし、これも今は付けて貰った下着のお陰で気にならなくなりましたけど」


 この言葉に女性陣も思う所があると言いたげな表情を浮かべる。


「で、ジグ、そろそろ例の場所に着きそう?」


「あっ、そうですね。もうすぐ…」


「へぇー、エミリア王女達、もう来たんだ~」


 と、目の前にミルザが赤と青の人形を引き連れて現れる。


「ミルザ!今回のゴーレム騒ぎ、貴方の仕業だったのね!」


「そう言う事~。ほら、前にアタシが男の要素を奪った事があったでしょ?実はあれを上手く活用出来ないかなぁって思って、ゴーレムを作ってみたの。ダブリスが廃棄された事で融合実験もしばらく出来なくなっちゃったし、廃棄予定の実験材料を使って、両方の性の要素をごっそり取っちゃったの!で、稼働実験してる時に、ゴーレムの内の1体がそこの坊やの身体の中に入ったと思ったら、坊やの身体が変わったじゃない!で、他にも試してみたんだよね、これが~!」


 と、ミルザは他のゴーレムに捕縛されている人達を見せつける。


「青のゴーレムを入れると男の形になり、筋力増強。赤のゴーレムを入れると女の形になり、しなやかになる。それが同性同士だと、その効果も倍増、更に複数投入も可能と来た!」


「まさかそれを確かめる為に無関係の人達を!?」


「ケイリーがやられて、ケールとヴェルナンデが負けたんだ。アタシだって立場が危うい。だから大人しくアタシの手柄になってよ」


 と、ミルザの身体に赤と青のゴーレムが入っていく。

 そしてミルザの身体は大人の女性へと変貌した。


「倍増された男としての筋力を女の身体の中に凝縮、そして身体のしなやかさも倍増、更に体格が大きくなった事でリーチもぐんと伸びた!これぞ、スーパーレディミルザちゃんだ!」


「随分な自信ね。それで私達に勝てるとでも?」


「それはごもっとも。でも、物量ばかりはどうしようもない筈でしょ!?」


 と、ミルザの後ろのゴーレム達が一斉に襲い掛かって来る。


「皆、ジグ達の身の安全を最優先に…!」


 と、その時、上空から何かが落ちてきて、その衝撃波でゴーレム達が吹き飛んでいく。


「…ギルドでも良い獲物の情報がなく、手頃なチンピラでもサンドバッグにしようかと散歩をしていたら、一昨日の人形がうじゃうじゃといるではありませんか」


「貴様、一体何者だ!?」


「私ですか?私はフェリシア・ヴァンデグド。ただの可憐な貴族令嬢ですよ」


「何者だろうと、アタシの邪魔をする奴は、とっととくたばれ!」


 ミルザの号令によって、ゴーレム達がフェリシアへ向かって突撃していく。


「不味い!幾ら何でもあの数は!」


「私達も早く!」


「待って!」


『えっ?』


「…10倍、いや、3倍速で充分か」


 フェリシアの身体に光が迸ったと思ったら、彼女は超スピードで駆け抜け、ゴーレム達を殴り飛ばし、次々と壁に叩き付けていく。


「そんな、あの数を一瞬で!?」


「彼女は自分の時間を加速させて奴らを殴り飛ばしたのよ」


「さて、次は貴方の番です。貴方なら、気持ち良くスパークリングをやらせて貰えますよね?」


「調子に乗るなよ、お嬢様風情が!」


 ミルザがビームサーベルを振り被るが、フェリシアはフィンガーグローブの甲の鉄板で受け流し、ミルザの腹にストレートを決める。


「がはっ!」


「ふむ。見かけ以上に硬いお肉。これなら思い切り殴っても問題ありませんね」


 そしてそのままミルザを壁に叩き付け追撃をするが、ミルザも直ぐに飛びのいて、オーラを解放させる。


「…成程、それが奥の手ですか。それならこちらも、ギアを上げて行きましょう!」


 そう言ったフェリシアは身体が光に包まれていった。


「そっちこそ、どんな攻撃も当たらなきゃ意味がない!アタシのスピードに着いて来れるか!?」


 そう言ってミルザが縦横無尽に駆け抜けるが、フェリシアも同等のスピードで駆けてミルザに追いつき、そして彼女の顔面を殴って地面に打ち付け、その場にクレーターを作る。


「馬鹿な!?このスピードに着いて来れるなんて!?」


「貴方がどれだけ速くなっても、私も同じくらい加速すればいいだけの話です」


「…だったらスピード比べは止めよ。単純な攻撃速度で勝負すればいい!」


 ミルザはすぐさま起き上がり、フェリシアの頬に左フックを入れる。

 そしてビームサーベルを右下から斬り上げるが、フェリシアは身をよじって避けて、ミルザがビームサーベルを逆手に持って突き刺そうとするが、フェリシアはそれを白刃取り。

 そしてそのまま背負い投げした後に空中のミルザを殴り飛ばす。

 ミルザも体勢を立て直して突進。

 ビームサーベルを振り下ろすが、フェリシアの拳に当たる瞬間に刃が消え、通り過ぎた瞬間に刀身が現れ、フェリシアの胸にその刃が伸びる。


「…10倍速」


 その瞬間、フェリシアが超高速で逃れて、ミルザの顔面にストレートを入れる。


「ではこれより、全体を満遍なく叩いてあげましょう」


 と、フェリシアはミルザの全身にラッシュを叩き込み、そして最後に放物線を描いてミルザは墜落した。


「不味い…!このままじゃあ…!」


 ミルザが手をかざすと、ゴーレム達は粒子になってミルザに吸い込まれ、ジグ達の身体も戻って行った。


「人形に使われていた魔力を戻して、生命維持に当てたか」


「お前の顔、覚えたからな!絶対に借りは返す!」


 そう言ってミルザは転移結晶(テレポートクリスタル)を使って去っていった。


「…さて、エミリア様、何か知ってるならお話して下さい」


 こうして、ジグ達を安全な場所へ送り届けた後、フェリシアに"天の笛"の事を話す。


「…成程。その様な連中がいたのですね。折角です、私も手を貸します。何せ、サンドバ、いえ、その様な輩、貴族として見過ごす事は出来ませんので」


「今、サンドバッグって言いかけた。明らかに殴り放題だから混ざりたいって私情で加わる気だ!」


「気のせいです。では、エミリア様、よろしくお願いします」


「え、えぇ、こちらこそよろしくね」




 "天の笛"本部

 身体を戻したミルザが、足を引きずりながら廊下を進んでいた。


「…ぜぇ、…ぜぇ、あの女、絶対に殺す…!」


「いやぁ、手ひどくやられたね~、ミルザちゃん」


 と、糸目の少年がミルザに声を掛ける。


「何?今、アンタの相手したくないんだけど」


「そう言う事言わないでよ~。これでも心配しているんだよ、僕」


「どの口と顔で言ってんだ。全然そんな感じが出てないっつの」


「まぁまぁ、そんなに怒んないで~。一応、ジルティナさんも上に掛け合って、一旦見送りにしてくれるみたいだしさ~」


「そりゃあ良かった。アタシもこのまま終わるつもりは無いからね」


 そう言ってミルザは自室に入り、ベッドに寝転がって、眠りに着く。


「次こそは必ず…!」


 そうしてミルザは恨みを糧に、向上心を膨れ上がらせるのであった。

追い詰められた者は何をするか分からない。

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