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第64話

ダブリス編第2話。

 早速エミリア達は、手分けしてダブリスの調査を行う事となった。

 カイト、シャーリー、ネムは、街の人達の様子を見て回っていた。

 公園では、大人に見守られながら遊ぶ子供、逆に子供に見守られながら遊ぶ大人、子供も大人も一緒くたになって遊んだり、談笑している姿が見られた。


「わーい、楽しい!」


「あんまりはしゃぎ過ぎては駄目だぞよ~!」


「パパ、遅いよ~!こっちこっち~!」


「こっちは子供の身体だぞよ。パパと妹の事を考えてよ」


「え~!僕もママも元気いっぱいなんだよ~!」


「本当、手の掛かるお兄ちゃんとママだね…」


「イエーイ、一番!」


「もう、そっちは大人の身体だからずる~い!」


「僕とお姉ちゃんの勝ち~!」


「えぇ、こっちも子供の身体だから、本当に軽くて」


「あらあら、羨ましいですわだ」


 商店街の方でも同様であった。


「ママパパ~、あれ買って~!」


「我慢しなさい」


「私が荷物持ってあげる~!」


「やっぱ大人の身体はいいね。この子供の身体じゃあ、重い物は持てないから」


「どうする?買っていく?」


「う~ん、息子としては欲しいけど、ママとしては手を出さない…!」


 そしてカイト達も、カフェで得た情報を整理していた。


「やっぱり此処は、外の街と大差ない生活が送られてるみたいだ」


「本当、この街のあちこちは、住んでる人以外は普通ですね」


「お金や物流についても、聞いた話じゃあ、リザロッテちゃんの言ってた貿易によって外の世界と回してるみたい。それによって暮らしに必要な物資や食料は確保出来ているし、お金にも困っていないみたい」


「軽く聞いてみたけど、この街にも農業や牧場とかもあるから、輸入品とかもそれで賄っているみたい」


「しかも、街の人達は、自分達の身体の事、あっさり受け入れてるみたいで、誰も気にしてません。ハルトマリーさんの言ってた認識の操作の影響でしょうか?」


「まぁ、取り敢えず、もうちょっと見てみる?」


「そうだね。もう少し見ておこう」


 そしてカイト達もカフェを出て、散策を再開した。




 ハルトマリーとスバルは、街の結界と出入口の調査をやっていた。


「やっぱり此処の結界は、向こうの指定した人物のみ認識が書き換えられる仕様になっていて、人の出入りに対する制限は設けられていないみたい」


「出入口って、私達が入って来た所以外にもあるんだよね?」


「うん。あそこはあくまで、玄関あるいは勝手口として作られた物。外交や貿易の為の物は、別口で作ってあるワープゲートを通ってるみたい。当然、そこもリザロッテ達、此処の貴族達の監視も入ってる」


「となると、当然それを見るには、リザロッテを初めとする貴族達の許可も必要って事か」


「次は結界の発生源を探りましょう。結界の規模からして、核だってちゃんとある筈だから」


 と、ハルトマリーとスバルも、直ぐにその場を駆けるのだった。




 レオニーは、街の警備や防衛を担当している貴族の屋敷の下へ向かっていた。


「…此処が例の貴族の屋敷か。門番すらいないってどういう事だ?まぁいいや、お邪魔させて貰うか…」


 そしてレオニーが屋敷に入ると、メイドがハンマーを振り下ろして来た為、レオニーも反射で避ける。


「危ねぇ!って言うか、何でメイドがそんな物騒な物振り回してんだよ!?」


「ヒャッハー!このバルンティーザの屋敷に侵入とは、良い度胸だなですわ!野郎メイド共!この方を血祭りにしてもてなして差し上げなさいだぜ!」


 と、レオニーは一気に武装したメイド達に囲まれ、そのメイド達も山賊じみていた。


「…成程。そりゃあ門番の必要は無ぇか。こんな血の気の多いメイドがわんさかいるんじゃあな。見たところ、山賊とメイドが混ざってるみてぇだな。仕方ねぇ、先ずはこいつらの無力化…」


「お止めなさい!」


 と、何処かから声が響いたと思うと、メイド達は構えを解いて、すぐさま階段の両端に並び、その階段の中央から、豪華絢爛なドレスを着た、金髪縦ロールの貴族令嬢が降りてきた。


「メイド達の非礼をお詫びいたします。貴方方の事はリザロッテから聞いております。俺私様は、この街の警備や防衛を担当する、ベラドンナ・バルンティーザですわ」


「レオニー・ブランシェーダだ。こっちもアンタがちゃんと止めてくれる奴で助かったよ」


「当然ですわ。俺私様は、元はこの屋敷の主にして、山賊団の頭ですのよ。山賊としての在り方を、貴族のノブレスオブリージュに組み込んでおりますわ」


「成程。貴族の部分が山賊の部分を抑え込んでいる訳か」


「そう言う事です。ですので、貴方達もメイドとしての仕事に戻りなさい」


『はっ!』


 と、メイド達もすぐさま散って、それぞれの仕事に戻って行った。

 そしてレオニーも、ベラドンナの部屋に案内される。


「それで、今日はどういった御用でいやがりますの?」


「いや、何、この街の治安担当について把握しておきたくてな」


「成程。そう言う事でいやがりましたの。なら説明致します。此処の警備を担当するバルンティーザ家は、山賊を初めとする荒くれ者達を混ぜ込まれたメイドや女性騎士達が、その高貴なる精神を以て、その力を振るって治安を守っていやがりますの。それにより、この街は安泰となっておりますの」


「成程。見たところ、お前もあのメイド達もちゃんと抑制が効いてるみたいだし、信用しても良さそうだな」


「えぇ。でもって今回は、エミリア王女と言うVIPが来日してらっしゃる。上手く行けば、うちの待遇が良くなるチャンス!我が家の株を上げ、褒美や女を貰えるチャンスでありやがりますわ!」


 と、ベラドンナはスカートの前部分を盛り上げ、涎を垂らした微笑みを浮かべる。


「…お前もそうなんじゃねぇか。山賊と貴族の駄目な部分が同時に出てるぞ」


「おっと失礼。ついはしたない真似をしてしまいましたわ」




 エミリアとアラタは、住民の管理を担っている貴族の屋敷に向かっていた。

 事前にリザロッテから紹介状を書いて貰った事で、すんなりと屋敷の中に入れた。

 そして担当である、ベージュ色のウェーブ巻きの髪の貴族令嬢が現れた。


「初めまして、私が住民管理を担当している、オリアナ・マリアージュと申します」


「エミリア・フォン・アルテミシアよ」


「アラタ・ホシミヤだ」


「よろしくお願いします。そして今回は、どの様なご用件でしょうか?」


「えぇ、この街での住民の数の変動等を聞かせて欲しいのだけど」


「畏まりました。先ず、この街の住民については、既に聞き及んでおりますね?融合した人間達は、基本的に1ヶ月に1回のペースで生み出され、そしてこの街に流れ着きます。そしてこの街の環境に馴染んだ末に、外の人間達と同じ生活が出来るのです」


「それで、流れ着いた人間達の国籍や出身については?」


「さぁ?向こうもあらゆる国のスラムや貧民街等、国に対して影響の無い場所から人間を集めているって話ですので、そこら辺バラバラで…」


(確か12月の時に、アルベルトお兄様もスラムや路地裏で大量失踪事件が起きてたって言ってた。成程。やっぱり"天の笛"が関わってたのね。こうして実験材料を得る為に)


「それで、一体誰が此処の住民を増やしているんだ?」


「それでしたら、融合体を生み出した大本の判断で決まります。確か週に1度、そこの者がこの街に査察に来るので、その方に尋ねればよろしいかと」


「分かったわ。話を聞かせてくれてありがとう」


「いえいえ、こちらもお力になれて良かったです」


 そして話終えた2人は、屋敷を出る。


「この話、鍵となるのは、査察官になりそうだな」


「えぇ、早速リザロッテに頼んでみましょう」


「そうだな。なるべく、怪しまれない様にな」


 と、2人はリザロッテの屋敷へ戻る事にした。

 エミリア達は皆、手掛かりを逃す真似はしない。

 "天の笛"の情報を多く得る為に。

初期段階の話です。

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