第58話
バレンタインデーとなりました。
アルテミシア学園女子寮、エミリアの部屋
アルテミシア王国は現在、バレンタインの時期に入っている為、女性陣一同で手作りチョコを作っていた。
そして現在、各々のチョコは冷蔵庫に入れられた状態となっていた。
「さてと、これでチョコの準備は出来た」
「義理チョコに友チョコ、準備は万端」
「後はバレンタイン当日で渡すだけ」
「アタシらはその程度で大丈夫だ。エミリア、お前の本命チョコの方はどうだ?」
「問題ないわ。ちゃんと本命って分かるデザインで作ってあるし、アラタも仕事入ってないって」
「エミリア様も本当に恋に焦がれた乙女となってますね。ロマンで溢れてます」
「アリアも茶化さないでよ」
「それじゃあ、アタシはもうテーブルに出てる奴を…」
「って、フィーナ。貴方もつまみ食いするんじゃありません」
と、エミリアもフィーナを摘まんで、つまみ食いを止める。
「いいじゃん!どうせ渡す分はもう分配し終わってんなら!」
「駄々こねないの。夕飯の後で食べさせてあげるから」
と、エミリアも皆の分の夕飯も作り、そしてデザートのチョコも食べてお開きとなった。
翌朝、アルテミシア学園、生徒会室
今朝の会議は、バレンタインのムードに包まれた校内についてだった。
「皆さん、お察しの通り、今学園はバレンタインのムードに支配されている状態です。男子生徒達の大部分がチョコを貰えないかと言う期待や渇望、女子生徒達の一部の本命チョコを渡す為のタイミングを狙う狩人の眼差し等、これが原因で起こるトラブルの可能性を考慮して、我々も対処しなければなりません。ですので、皆さんの方でも厳重注意をお願いします」
『はい!』
「…まぁ、それとは別に、私もトールとウェイン君へのチョコを用意してありますので、どうぞ」
「あ、私も用意して来ただ。良ければ、貰ってくれ」
「はい、私からの手作りの義理チョコ。よろしければどうぞ」
「うん、頂くよ」
「ありがとうございます。俺も頂きますね」
と、生徒会での女性陣から男性陣へのチョコのプレゼントが行われたのだった。
1年1組教室
此処でも、チョコの受け渡しが始まっていた。
「はい、カイト。私達から義理チョコ」
「ありがとう姉さん達。恩に着るよ」
「どういたしまして。それじゃあ、来月のホワイトデーもよろしく」
「うっ!?…大丈夫、ちゃんとお返しのお菓子、用意しておくよ」
「はい、ソーマ。チョコあげる」
「おっ、サンキュー、ミュリナ!」
「あっ、言っとくけど、義理チョコだからね!?勘違いするんじゃないわよ!」
「ランスロット、私からも」
「ありがとうございます、サーシャ様!一生大事にします!」
「ちゃんと食べて下さいね…」
当然、この甘い空気の裏で一部の男子生徒の妬みや僻みだって存在していた。
「畜生!そりゃあ俺だってチョコ欲しいのに!」
「本当にチョコ貰えてる奴らが妬ましい!」
「俺だってエミリア様のチョコ貰いたいのに!」
女子生徒にも、尻込みしてまだチョコを渡せていない者もいた。
「どうしよう…。チョコ受け取ってくれるかな…?」
「彼も私の事どう思ってるのかな…?このチョコ、本命って思ってくれるかな…?」
「何やってんの?折角作ったんだから、ちゃんと渡さないと!」
「だって~!」
その空気を見かねたエミリアがマジックバックの中から袋を取り出し、その中の一口大のチョコボールを男子生徒達に配っていた。
「はいはい。こんな事だろうと思って、皆の分の友チョコ、作っといたわよ」
「えっ!?良いんですか!?」
「私だって生徒会よ。今後のトラブルになり兼ねないものは、ちゃんと対処しないと」
「うお~!エミリア様からのチョコ、有難く頂きます!」
「王女からチョコ貰ったんだ!ホワイトデーも盛大に返す様にします!」
「いや、そんな事しなくていいから。普通でいいから」
エミリアがチョコを配る様を見た女子生徒達も、各々思い思いにチョコを渡していくのだった。
夕方、街道
アラタは街のあちこちから溢れる甘々ムードをかき分けながら進んでいた。
そして辿り着いたアルテミシア学園校門前、そこにいたエミリアに声を掛ける。
「すまん、待ったか?」
「あ、大丈夫。ついさっき来た所だから。…それじゃあアラタ、はい、これ」
と、エミリアは丁寧に包装されたチョコの包みを差し出し、アラタもそれを受け取る。
「アラタのバレンタインチョコ、貴方の分だけ皆と違う物にしたの」
「そうなのか?それじゃあ、有難く頂く。来月のホワイトデーも、俺もちゃんと考えとくから」
「うふふ、楽しみにしてる」
と、2人は別れ、飯屋で食事を済ませたアラタも、包みを開ける。
「これは…!フフッ、エミリアの奴、洒落た真似するな」
その中身は、太陽と月に挟まれたハートのチョコだった。
「…うん、美味い。やっぱりエミリアの作るものなだけはある」
と、アラタもそのチョコの味に笑みを浮かべるのだった。
夜、女子寮、エミリアの部屋
エミリアも現在、顔を真っ赤にして、テーブルに伏していた。
「ちゃんと渡せた、アラタにチョコを。アラタ、喜んでくれてるかしら?」
「大丈夫じゃないの?アンタ、料理上手いし。何より、好きな子からのチョコだし」
と、エミリアの頭上を浮いてるフィーナも声を掛ける。
「大体、例えどんなチョコだろうと好きな子からのチョコなんだから、誰だって喜んでくれるわよ。ほら、アンタも自信を持ちなさい」
「あぁ、そうね。ありがとう。フィーナに言われたお陰で落ち着いてきたわ」
と、エミリアも立ち上がり、浴室に入る。
「私、シャワーで頭冷やしておくわね」
「そうしなさ~い」
そうしてシャワーを浴びているエミリアの顔は、満面の笑みであった。
「…アラタへのチョコ。私が女として、好きな人にあげたチョコ。それがこんなにも嬉しいだなんて、やっぱり今の私は幸せよ」
そして浴室から出てしばらくすると、シャーリーとネムが部屋に入って来た。
「エミリアちゃ~ん、こんばんは!私達からのチョコ、お届けに来たよ~!」
「2人共、いきなりやって来てそれ?」
「良いでしょ?義理チョコ兼友チョコくらい!」
「ちなみに、もうカイトお兄ちゃんには渡してあります」
「それ、ちゃんと穏便に済ませたの?」
「大丈夫!しっかりカイト君に、私達特製ハートチョコを渡しただけだから!」
「と言う訳で、はい、エミリアお姉ちゃんの分!」
と、2人は特大ハートチョコをテーブルに置く。
「ちょっ!?これ、大き過ぎ!」
「私達からの愛、受け取って!」
「…仕方ない。砕いて何回かに分けるか…」
と、エミリアは早速チョコを細かく砕いて、冷蔵庫に入れ、今回分を口にする。
こうして、女の子達の甘い時間は過ぎていくのだった。
皆に甘酸っぱいひと時を。




