第32話
プレゼント選び開始。
女子寮、エミリアの部屋
現在、エミリアは下見の結果からプレゼントを吟味していた。
「結婚記念日の方は、あまり手間のかからない物が良いわね。アロマとか鏡とか。ユフィの方はどうしよう。ぬいぐるみ?いや、子供っぽいかなぁ?それともペンダント?うーん…」
「結構悩んでるわね」
「そりゃそうよ。それぞれの大切な日ですもの」
「まぁそっかぁ。あまり考え過ぎない様にね」
「分かってるわよ、それくらい」
考えを中断したエミリアは、夕飯の支度をするのだった。
翌日、アルテミシア学園、1年1組教室
エミリアは、皆にプレゼントに関する相談をしていた。
「と言う訳で、独りで考えてたら頭悩ませちゃって。参考意見が欲しくて」
「うーん、僕は思いつかないなぁ」
「俺達もシェーラ先生がそこら辺気にしない人だから」
「私も教会暮らしの都合上、そんなに物欲無いし」
「アタシは気の利いた物なら、何でも良さそうだと思うけどな」
「まぁ、そうよね。うーん…」
「…あっ、そうだ。丁度2組に参考意見に使えそうな奴らがいるじゃねぇか。レン・ファミリーが」
昼休み、屋上の一角
エミリアは皆を連れて、そこで談笑しているレン・ファミリーの下を訪れる。
「今、時間取って大丈夫かしら?」
「エミリア様?どうしましたか?」
「実は貴方達に相談したい事が…」
と、エミリアは相談内容をレン・ファミリー一同に話す。
「成程。今の学生の立場を使って、ユーフィリア様の誕生日プレゼントと、国王夫妻の結婚記念日のプレゼントを送ろうとしてるけど、頭を悩ませてしまっていると。分かりました。俺達で良ければ、相談に乗ります」
「ありがとう」
「いえ、俺も彼女達へのプレゼントを考えなくちゃならない時が来る事に変わりありませんし、何より、俺も皆を幸せにすると誓った以上、絶対に妥協したくないので」
レンの言葉に、11人の彼女達もキュンとときめくのだった。
「こいつ一体、何人女作るつもりだ?」
「じゃあ早速、1人ずつ意見をお願い」
1人目、ピンクのセミロングのムチムチボディの巨乳少女、マイ・セクロス。
「そうですね。私としては、愛情が伝わらなければ意味がありません。自分は貴方達の事をこんなに大切に思ってるんだと言う意思を示す事が重要です。ですので、先ずは気持ちを込める所から始めてみては如何でしょうか?」
「その通りね。大切な意見をどうもありがとう」
「いえいえ、お気になさらず。私もいずれはレン君とあんな事やこんな事を…。ウフフ…」
「何かピンクのオーラ放ってる…」
「滅茶苦茶盛ってるなぁ…」
2人目、金髪ツインテールのスレンダーギャル、ピアー・ニルド。
「アタシとしては、自分の気持ちをガツンとぶつけたい所ね。こう言うのは、ちゃんと伝わらなきゃ意味ないのよ。だから照れ隠しでも良いから、伝えたい事ははっきりと伝えなさい」
「ピアーさん、ツンデレでいっつも照れ隠ししてますもんね~」
「うっさいわ、このピンク脳が!」
と、ピアーがマイにアイアンクロウを掛けて黙らせる。
「何か骨がミシミシ言ってない?彼女大丈夫なの?」
3人目、青髪ウェーブロングの小動物の様な少女、シー・サイレ。
<我の出番か>
と、彼女は手元の水晶から声を出す。
「えっ、これ読み上げ用水晶よね?何で?」
「あっ、実はシーちゃん、喋るの苦手で、いつも好きな小説の文章で代弁しているんです。そこを俺が気を利かせて、読み上げ用水晶をプレゼントしたんですよ」
「そうなの。ごめんなさい、気を悪くしたなら謝るわ」
<いえいえ、お気になさらず。して、贈り物の案が欲しいのであったな。私としては、本を贈るのがよろしいかと。自分の好きな物語の中で、夢を見させるのも手であるぞ>
「小説…、夢…、ありがとう。喋るの苦手なのに、頑張って意見を出してくれてありがとう」
その感謝に、シーは顔を赤くさせて、身体をもじもじさせて縮こまる。
「フフッ、本当に小動物みたいに可愛いわね」
「でしょう!?こう言う所が彼女の魅力で、俺も本当に好きなんですよ!」
レンの言葉に、シーは更に頭から湯気を出す。
「そこら辺にしておけ。そいつのぼせるから」
4人目、銀髪ストレートロングとスレンダー巨乳の少女、ナノ・メカニカ。
「プレゼントなんて、物の数や種類の多さで非効率的。時間をかけるくらいなら、プレゼントを選ばす、日頃の感謝だけを書いた手紙を贈るのが効率的」
「ナノさん、これは効率の話じゃなくて、誠意の話だから」
「確か彼女、姉さんに匹敵するレベルの学力の持ち主だって話だけど、此処までの効率主義だったなんて」
「けど彼女、最初の頃と比べて、結構丸くなってるって話だよ。レン君達のお陰かな?」
5人目、3年3組、8歳児の見た目と赤いくせ毛とアホ毛の少女、メディ・ドラグ。
「メディなら、ユーフィリア様に一時的に獣人になる薬、国王様達に磁石人間になる薬を贈るのだ!何ならエミリア様の分も含めて、メディが全身性感帯になる薬を作るのだ!」
「メディ先輩、貴方の薬も色々やばそうなので、不採用ですよ」
「何だこのお子ちゃま博士。頭の中までガキみてぇじゃねぇか」
「確か聞いた話によると、元々はグラマラスな肢体の眼鏡美女だけど、若返りの薬を使ってるって話で、その影響で思考回路の方も、子供になってるって話だよ」
「薬漬け処か、薬に人生蝕まれてねぇか?」
6人目、現学園長にしてマイの母、ピンクのウェーブロングを纏めているダイナマイトボディの美女、マミ・セクロス。
「そうねぇ。私だったら、ユーフィリア様に愛情たっぷりのハグやキスをしてあげられるわ。結婚記念日についてはごめんなさい。私、実は13歳の時に亡くなった彼の遺伝子を使ってマイを産んだから、結婚とか言った話は未経験で、参考意見は出せそうにないわ」
「いえ、意見を出して貰えるだけで十分です。ありがとうございます、学園長」
「13歳で出産ってどう言う事?」
「確かセクロス家はアルテミシア王国でトップクラスの資産家で、あらゆる方面での技術や分野を有しているって話で、現当主の学園長も経営者としての手腕もずば抜けているって話だよ」
「まぁそれよりもエミリアちゃん、折角だから私のハグを受けていかない?実は私、貴方の事も娘だったらって思ってたのよ。だから貴方もユーフィリアちゃんも、ママにいっぱい甘えて来て頂戴!」
と、マミが赤面で涎を垂らしながらエミリアに飛びつこうとしたのを、マイとピアーが押さえつける。
「お母様、これは本当に私も娘として恥ずかしいです!その行き過ぎた母性と性欲、少しは自重して下さい!」
「いや、性欲はアンタもでしょうが!」
「…この人をユフィに会わせない様にしよう」
7人目、黒髪ショートヘアーでフードを被っている少女、イート・グーラ。
「アタシなら、手作りのパンとかお菓子なら良いかな。ほら、食べ物って、食ったら直ぐ無くなるけど、手作りなら、そこに込められた思いは一緒に腹に入るし、丁度良いだろ?」
「料理なら、私も出来る方よ。参考意見としてはちょっとためになったわ」
「いや、アタシも大した事は…ちょっとために…ちょっと…チョコ…!」
と、そこにイートが腹を鳴らした為、メディがチョコを食べさせる。
「実はイート、食べ物を連想させる単語を聞いたり、それらしい物を見たり、気になる食べ物が出る話やフィクションを聞くと、直ぐにお腹すかしちゃうんです」
「それ、燃費が悪いで済ませられる話?」
8人目、マミ専属メイドにして、黒髪ロングを纏めた糸目メイド、メイ・サーヴァ。
「私としては、何も必要ありません。私は、私を必要として下さる方が居れば、それだけで十分です」
「何かこの人、無欲と言うか、悟りを開いていると言うか…」
「言っとくけどそいつ、主に尽くす事に心血を注ぎ過ぎてる、忠犬ワンコのメイドよ」
「それ、無欲処の話じゃなくない?人としての尊厳要らないのこの人?」
「マミ様とレン様は私の全てですので」
「何か忠誠心が行き過ぎて神格化してませんかこの人?後、何か犬耳と犬尻尾が生えてる様に見えるんですけど?」
9人目、ベージュのショートヘアーの少女、アム・ギリー。
「僕としては、一緒に外を過ごせる時間があっても良いと思うな。僕としてはスポーツ全般かな。セフィラ王国の大会進出とまでは行かなくても、一緒に風を感じたり、汗を流したり出来るのもOKだよ」
「確かに外出の時間も良さそうね。スケジュール調整をしておこうかしら」
「所でエミリア様、僕からのお願いなんだけど、一緒にスポーツしてみない?交流会でのエミリア様達を見て思ったんだ。この人達なら、一緒に汗水を流せられるって。だから僕と一緒にスポーツやろうよ!大丈夫!最初はキツイだろうけど、段々気持ち良くなってくるから!」
「何この人!?とんでもない圧なんですけど!?」
「実はアム、ストイックが過ぎて痛みやキツさに快感を覚えてしまったんですよ」
「ドMじゃねぇか!」
「勿論、冒険者としての戦闘だって、タンクを担当する事に快感を覚える様になる!さぁ、僕と一緒に痛みに快感を覚えて行こう!」
「遠慮します。痛みについては、常識的な認識を捨てたくないので」
10人目、2年4組、金髪ウェーブロングの身長170cm代の長身美女、ローラ・クレセント。
「この美しい私のアドバイスなら、ユーフィリア様も国王様達も、美しく記念日を飾れる事でしょう!」
「何かこの人、美しいと言う事に対する意識が強すぎる様な…」
「私でしたら先ず、美容に関する講義と共に、美容用品を用意しておきます。日々の美しさは心と身体、両方をしっかり磨き続けてこそ、その身に宿り続けるものですから、常に健全な精神と肉体によって、その美しい生き様を見せられる様にするのですわ!」
「うーん、言ってる事は分かるけど、ユフィはまだ子供だし、出来るとしたらお父様達だけですね。ありがとうございます。これも候補に入れておきます」
11人目、黒髪ストレートロングで、全体的に目立たない様にしている目隠れ少女、アイ・ハイディ。
「わ、私は、その、編みぐるみが良いと、思います。編みぐるみは、とても、可愛いから、ほっこり、する、し、小さいから、置き場所、にも、困ら、ないし、何より、エミリア様の作った、ものなら、気に入るかと」
「編みぐるみ…、成程、それもありね。ありがとう、アイさん。とても助かったわ」
「あっ、えっと、あの、その…!」
と、その時、突然アイがその場から消え、代わりに編みぐるみが置かれていた。
「しまった!エミリア様のお礼に恥ずかしさが込み上がって耐え切れず、ミスディレクションを!」
「大丈夫。ちゃんと探知魔法で掴めているから」
と、エミリアが視線を向ける度、アイもミスディレクションを乱発し、アイの息が上がった所で、2人は止まった。
「フフッ、貴方が置いた編みぐるみ、本当に可愛いわね。それにそのミスディレクションも、立派な才能よ。ちゃんと誇って良いわ。自分に自信を持って」
「エミリア様、ありがと…」
と、その時、アイの胸の辺りで何かが千切れる音が聞こえ、そしてアイの胸が膨らむ。
「きゃあ!動き過ぎたせいで、胸が小さく見えるブラが~!」
「デカッ!?エミリアとスバルに匹敵するレベル!?」
「目立ちたくないなら、そんな下着付けててもおかしくないか!」
「あわわわ~!」
そしてアイは恥ずかしさのあまり、ミスディレクションで屋上から姿を消す。
「あっ!?アイさん、大丈夫!私達、本当に気にしないから!後、参考意見ありがとう!」
と、エミリアも探知した先へお礼を叫ぶのだった。
放課後、1年1組教室
生徒達は皆、帰り支度を始め、次々帰宅していく。
「姉さん、プレゼント何にするか、考え纏まった?」
「うん。だからこれから街へ見に行くわ。じゃあ、また明日」
と、エミリアは早速街へ買い物に向かう。
「…ユフィの誕生日プレゼント、あの子なら、テディベアが良さそうね。可愛い物好きだし。お父様とお母様の結婚記念日は、アロマオイルで疲れが取れる様にしておきましょう。後、私とアルベルトお兄様の分も合わせて、フォトフレームを揃えても良いわね。…本物のエミリアじゃなくても、私の事を家族として受け入れてくれた皆との思い出、これからもずっと大事に出来る様に」
と、エミリアは街でプレゼントを品定めし、当日に届く様配送手配を済ませる。
エミリアは昔の家族も今の家族も大事に思い続けるのだった。
大事な家族だからこそ。




