第28話
こう言うキャラも出します。
城下町、路上広場
アリシア・フォーゲイトは、とある少年を陰から見つめていた。
「カイト・ワーグナー…。貴方が私の運命の相手かどうか、見定めさせて頂きますわ」
アリシアは、常日頃から占い屋に通ったり、恋愛の運気を上げたりして、運命の相手を探している。
そして同時に、自身が見定めた男なら、どんな手段を使ってでも手に入れようとするヤンデレでもある。
そんな彼女の熱烈な視線に、カイトも身体が震えるのだった。
それからカイトは、街の図書館でエミリア達と待ち合わせ、夏の課題を一緒にやるのだった。
「えっ、姉さんもう課題終わらせたの?」
「これでも学年主席だからね。あれくらい直ぐに終わらせられるわ」
「え~、私まだ残ってるよ~」
「俺も魔法関連以外のペースは普通くらいでしかないわ」
「それでもボチボチやってくしかねぇな」
「ですね~。どの世界でも、長い休みの宿題は憂鬱です~」
「ほらほら、良いから早くテキストを…ん?」
と、エミリアは本棚の陰からこちらを見つめているアリシアに気付く。
「…あれ、アリシアさん?」
「本当だ。何でこっちを見てるんだろう?」
「一緒に課題をやりたいから?」
「いや、とてもそんな風には見えねぇぞ」
「何か1つの獲物に狙いを定めている猛禽類みたいな目をしてる」
「まぁ取り敢えず、何も害が無い様なら、このままやっちゃおうか」
一同はアリシアの事を気に留めず、そのまま課題に取り組む。
「…あの方の周りには、常に女性が着いて周っている様ですわね。特に何故かエミリア王女とは距離が近すぎる。まるで家族の一員であるかの様に。他の方々もあの方にあんなに馴れ馴れしく寄ってたかって…。彼が運命の相手だった場合、確実にあの女共は邪魔になる!卑しい雌豚共め!あの方が運命の相手だった時、彼女達との関係を断っておかなくては!」
と、アリシアは嫉妬の炎を燃やして、強硬手段を画策するのだった。
城下町、街道
課題を終わらせた一同は、街中を歩いていた。
「ふぅ~。終わった~」
「皆でやったお陰で、残りの休み期間にもかなりの余裕が出来ました」
「お陰でクエストをやるも良し、悠々自適に過ごすも良しになったからね」
「所で…」
と、レオニーは背後の尾行しているアリシアを指摘する。
「アイツ、何時までついて来るんだ?」
「さっきから何か黒いオーラまで放っているんだけど?」
「あの人、基本誰とでも礼節を弁えた振る舞いをしますけど、機嫌が悪くなると、機嫌を悪くした相手を物理的に排除しようとする人でもありますからね」
「それ、明らかに殺人だよな?完全に犯罪者予備軍だよな?」
「大丈夫ですよ。魔物を殺した事はあっても、人は恐怖心或いは戦意喪失で済んでますので」
「人殺しに手を染めて無くても、やってる事は人としてアウトな範囲に入ってるからな」
「って言うか彼女、そんな事してクラスで孤立してるんじゃあ…」
「あっ、大丈夫ですよ。うちのクラス、奇人変人のオンパレードで、アリシアさんも浮いたりしてませんから」
「何その情報?私達初めて聞いたんだけど?」
「アリシアさんやティティアさん以外にも色々いますよ?何股も掛けているけど、全員平等の愛情を注いでいる愛情モンスターの少年に、色気もあざとさも何もかも計算でやってる巨乳お嬢様に、ゴリラ並みのパワーの持ち主のツンデレギャルに、小動物系の文系少女に、効率重視の理系女子に、カロリーを直ぐ消費する大食い女子に、ストイックが過ぎるドMに、ミスディレクションをする目隠れ少女に…」
「もういい!頭が許容オーバーになるから!頭痛が起きるから!」
「うちのクラス、結構まともな方だったんだね。僕達も今のクラスで良かったって思ってるよ」
「取り敢えず、この後どうする?」
「適当な場所でお昼を取って、その辺散歩でもします?」
そして曲がり角を曲がって大通りに出た途端、カイトはアリシアに引きずり込まれる。
「それも良いけど、カイトはどう思…カイト?」
エミリア達もまた、カイトの姿が消えている事に気付いた。
城下町、裏通り
カイトは現在、簀巻きにされた状態でアリシアに担がれていた。
「あの~、アリシアさん。僕を何処へ連れて行こうとしているのでしょうか?」
「勿論、2人で愛を育める場所ですわ」
「傍から見たらこれ誘拐ですよね?僕、訴えても良いんですよね?」
「さて、これからどの様にして2人で愛を育みましょうか?」
「この人、僕の話全く聞いてない!完全に自分の世界に入っちゃってる!」
そうして2人は空き家に入り、カイトも椅子に縛り付けられる。
「では、これから食事を作りますので、貴方様はそこでお待ち下さい」
そう言ってアリシアは厨房の方へと消えていく。
「…マズい事になった。彼女のあの様子、機嫌を損ねたらどんな目にあわされるか分かんない。かと言って縛られて身動きが取れない上に、荷物も取り上げられている。一体どうすれば…?」
その時、窓からフィーナとレオニーが入って来た。
「フィーナ、レオニーさん?一体どうして此処に?」
「アタシらは直ぐに目撃情報を辿って、お前とアリシアの痕跡を追ったんだよ」
「で、アタシも空を飛んで、この場所を突き止めた訳」
「ほら、あの女が戻って来る前にとっとと逃げるぞ」
そう言ってレオニーはカイトの縄を斬り、カイトもアリシアに見つからない様にバッグを回収、そして3人が窓から脱出した直後、急に壁が破壊され、家の中から斧を持ったアリシアが出て来た。
「泥棒猫共、私とその方の逢瀬を邪魔するおつもりなら、排除致しますわ」
「逃げろカイト!此処はアタシ達が食い止める!」
カイトが逃げ出したのを合図に、アリシアは距離を詰めてレオニーに斧を振り被り、レオニーもそれをサーベルで受け止める。
「ぐっ!?何だこの馬鹿力!?フルパワーを出してるアタシと互角だと!?」
「まだまだこんなものじゃありませんわ。このまま一気に押し潰して…っ!」
その時、フィーナが幻影魔法を放った事でアリシアの動きは止まり、現実に戻って来た時には、既に誰もいなくなっていた。
「…逃げられましたか。まぁいいでしょう。さて、もう一度運命の相手を占い直して貰いますか」
そう言ってアリシアはその場を去り、占い屋へと足を運ぶのだった。
レストラン
カイトは席に着くと直ぐにテーブルにうつ伏せになった。
「危なかった…」
「大変だったわね、カイト。何か食べて気を取り直して」
「あぁ~、姉さんの優しさが身に染みる~」
「あの女、一応諦めてくれたのか?」
「大丈夫だと思いますよ。あの人、惚れても良いかどうか、ちゃんと吟味する方ですし、しばらくは安全だと思いますよ?」
「しかし、あの女のあのパワー、奴もまだジャブ程度だったとは言え、アタシもついフルパワーを出しちまった。本気になってたら、破壊の規模がどれ程だったか」
「取り敢えず、彼女も一旦引いたって事は、ちゃんと安全は保障されたって事でしょ?今はご飯を食べて、その後ゆっくり過ごしましょう」
それから一同は、レストランで食事をした後、のんびりとした時間を過ごしておくのだった。
そして路地裏の占い屋台
「では、私の運命の相手についてお願いします」
「いつも贔屓にしてくれるお陰で、こっちも良い修練になってますよ、アリシアさん。では…」
アリシアはこれからも、自分の運命の相手を探し続ける日々を送るのであった。
これも、夏のホラーにもなる。




