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第27話

夏休みイベントもちゃんとやります。

 シェーラの家

 エミリア達はフィルビアでの件を報告するついでに、掃除を手伝っていた。


「シェーラさん、この本の山何処に置きます?」


「あ、それはそこの本棚の前に置いといて」


「この何か難しそうな事が書いてある紙は?」


「それは魔法の研究レポート。そこのファイルに日付、種類順にまとめといて」


「うんしょ、うんしょ、…とっとっと、うわぁ!」


「うおっ?!大丈夫かアリア?!」


「いたたた…。ありがとうございます、レオニーさん」


「フィーナ、貴方もさぼらない」


「いいでしょう?アタシ小さいんだから」


「ちょっと見ない間に、貴方達随分賑やかになったわね」


「こっちも色々あったからね。…ん?」


 と、エミリアは奥にあった保管庫の札が立て掛けられた扉に気付く。


「シェーラ、此処何を保管しているの?」


「あ、そこは取り扱い注意の自作の魔法薬や発明、契約者達から対価として支払わせた物が保管されているわ」


「って事は、私の元の胴体も?」


「当然、そこに保管されているわ。…そう言えば貴方、ハルトマリーに聞いたけど、彼との好感度が上がって、素顔の方も更にお淑やかになって、女言葉のままになったんですって?思ってたより早かったわね」


「うっ!もう、その話持ち出さないでよ~!」


「でも、満更じゃないのは本当でしょ?当然の結果じゃない。このままなら、卒業と同時にゴールインね」


「うぅ~、恥ずかしい!」


 エミリアが恥ずかしがってる所に、玄関の扉が開き、リーベル達が入って来た。


「シェーラ、お久しぶり~。…ってあれ?王女様達も来てたの?」


 それからエミリアもスバル達を、シェーラもリーベル達の事を紹介し、席に座る。


「人間に化けてる魔族ねぇ~。アタシらも実感湧かねぇな」


「私達も、転移者と転生者、それに妖精なんて初めて会ったわ。実感湧かないのはこっちもよ」


「でもって、3人共カワイ子ちゃんだし、俺とどっか遊びに…」


『遠慮します。何か嫌なので』


「まぁそれよりも、王女様。貴方星空の勇者(ナイト・ブレイブ)と恋仲なんですって?ギルドでも噂になってるわよ」


「だからアラタとはそこまで行ってないし、貴方達も揶揄わないで!」


「良いじゃない。女としての幸せを手に入れるくらいは」


「所でリリン、貴方達が私の家を訪ねてきた理由は?」


「あ、そうだった。実はここ近年、異世界との干渉が多くなってきているんだけど、何か知らない?」


「異世界との干渉?」


「えぇ。異世界との干渉は、500年前の勇者の件以来、全然起きなくなってたじゃない?それが50年位前から、こちらの人間が異世界に干渉しようとしていた形跡が発見されたのよ。それによって、時を経る事で段々と異世界との干渉が次第に多くなって来ていて、そこの転移者や転生者の様な事例も現れてくる様になってきたって訳」


「…シェーラ」


「えぇ、そうね」


「その事なんですけど、実は…」


 と、エミリアも組織の事をリーベル達に話す。


「成程。それなら納得だわ。こちらでも魔王様に話を通しておく」


「それに、魔王城にいる転移者にも聞かせてやらないと」


「そっちにも転移者がいるんですか?」


「あぁ。そいつはニホンと言う国の人間で、仕事の都合で海外を渡り歩いていた駐在員のサラリーマンだそうだ。黒髪と顎髭に身長170cm代の筋肉も付きすぎてない位の30代位の男。でも、人事や交渉等の非戦闘系の部署で、あちこちで成果を上げてるとの事だ」


「頼りなさそうな見た目だけど、部下や同僚からの評判も良くて、魔王様も褒める時は褒めて、叱る時は叱ってくれて、それで魔王様から色々褒賞等を貰っているにゃ。流石入っていきなり魔王軍幹部に指名されただけはあるにゃ」


「その人、魔王軍幹部やってるんですか!?元はサラリーマンなのに、同じ日本人として尊敬します!」


「あら、貴方元は彼と同じ国の人間だったの?今度紹介しましょうか?」


「良いんですか!?ありがとうございます!」


「いえいえ、お安い御用よ。じゃあ、私達はこれで」


 と、そう言ってリーベル達は退散していくのだった。


「それじゃあ、私達も掃除の続きをしましょうか」


 と、エミリア達も掃除を再開するのだった。




 アルテミシア王国、城下町

 この日は、夏祭りであり、あちこち屋台で賑わっていた。


「やって来ました、夏祭り!」


「掃除が早く終わって良かった~」


「私もこの日の為に、書類仕事を片付けといたからね」


「それじゃあ、私達も屋台を回りましょう!」


 アリアの掛け声と共に、一同は屋台巡りに勤しんでいく。

 食べ物系、ゲーム系、アトラクション系と色々巡り、野外テーブルで一息入れる事に。


「いや~、食べ物も色々食べちゃうよね~」


「射的に輪投げに金魚すくい。これも屋台の醍醐味ですよね~」


「お化け屋敷の方も確かなクオリティだった。元海賊のアタシでも好評の評価だ」


「そうだね~。…ん?」


 と、そこに1人泣いている少女がいたので、スバルが駆け寄って目線を合わせて笑顔を見せる。


「どうしたの、お嬢ちゃん。」


「あのね…お母さんと…はぐれちゃって…」


「そうなの。大丈夫、お姉ちゃんも一緒に探すから。ごめん皆!私、この子の親探してくる!」


「あ、だったら俺も!」


 と、スバルとハルトマリーは女の子の親を探しに向かった。

 すると別方向から騒ぎが起きる。


「何だ、喧嘩か?すまん、アタシ止めてくる!」


「あ、私も一緒に!」


 と、レオニーとアリアも騒ぎを止めに向かった。

 そして2りきりになったエミリアとカイトの下に1人の少年がやって来る。


「あの~、すみませ~ん。実は道に迷っちゃったんですけど~」


「この国広いし、こんな人混みだものね。何処に行きたいの?」


「え~とですねぇ…。」


 と、その白髪の中性的な少年を、2人は中央噴水まで連れていく。


「お、やっと来ましたか」


「もう~遅いですよ!」


「ごめんごめん、道に迷って!」


 と、少年は金髪ポニーテールのエルフの少女と、ピンクのボブカットの少女の下へ駆け寄る。


「あ、お2人も、此処まで道案内してくれてありがとう!また会ったらよろしく!」


「こっちこそ、また会う時まで!」


 と、お互い別れていく事になった。


「…あの女性、まさかエミリア王女か?」


「えっ!?この国の第1王女様ですか?!」


「噓!?僕そんな人に付き合って貰ってたの!?」


「取り敢えず、私達だって9月にはアルテミシア学園に通う事になるんです。その時に改めて挨拶に向かえばよろしいでしょう」


「そうだね。9月に学校を楽しもう、セラ、カンナ」


「はい、トウヤ様!」




 城下町、展望台

 4人と合流したエミリアとカイトは、花火を見上げていた。


「綺麗~」


「この世界の花火も素敵ですね~」


「まさかこの世界に来て、こうして花火を見れるだなんて思わなかったな」


「…ねぇ、レオニー、アリア。この世界は楽しい?」


「ん?そうだな。最初来た時は、正直気分は悪かったけど、お前らのお陰で楽しく出来てる」


「私も、ファンタジー世界を十分満喫出来てます!」


「そう、良かった。やっぱり私、この世界の人達だけでなく、別世界の人達にも楽しく過ごして貰いたい。だから私、いずれ異世界間交流を迎える時が来た時、この世界を楽しく過ごして貰いたい。レオニー、アリア、貴方達も世界間の言語翻訳や勉強とかも手伝って貰える?」


「はい!勿論です!」


「へへっ、悪くねぇな。良いぜ、付き合ってやるよ」


「ありがとう」


 と、そこに空一面に大きな花火が舞い上がり、人々の心を魅了していく。

 王宮でも、王族達が花火を見上げて、感心していく。

 冒険者達も、次からの仕事への意気込みを強くする。

 空に上がる花火は、アルテミシア王国中を明るく照らしていくのだった。




 フィルビア城、地下監獄

 その1室に、鎖に繋がれ、手枷をはめられてるパチュアと、それを見下ろすゼシカとデュークがいた。


「では、パチュア・グレーシー。貴方方の組織は何を企んでいるのですか?」


「企むって、アタシは別に暴れられる機会欲しさに手を貸してやってただけ。奴らに対して忠誠心なんざ持ってねぇ、金で雇われただけの身だ」


「…姫様、こいつからは対して情報を得られる見込みは…」


「待ちなさいデューク。だったら、情報提供してくれたら、我が城で雇い直してあげますよ?」


「ほう。良いのか?金で動く奴は直ぐ裏切るとか考えないのか?」


「勿論。ですので、その保険となる魔道具の装着を義務付けさせて貰います」


「綺麗な顔して、腹黒い事を言う女だなお前は。…下手するとこのまま氷漬けにされちまいそうだ。仕方ねえ、話してやるよ。と言っても、奴らもアタシを信用して無かったんで、大した事しか話してねぇけどな。奴ら、この世界と別の世界を繋げて、自由に行き来出来る様にしてるみたいだ。だから、言語を始めとする前情報を得る為に、転移者や転生者を探している。その世界の技術を手に入れ、取り入れる為に」


「何の為にそんな事を?」


「決まってるだろ?この世界の価値観を根底から作り直す為だ。もう既に始まってるんだよ。世界間混流(パラレル・シフト)は直ぐそこに。」


 別世界との交流がもたらすものは福音か、又は破滅か。

 その行く末は、未だに誰にも分からない。

平行世界の概念は存在する。

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