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第122話

ハロウィンの夜だから出来る事。

 10月末、アルテミシア王国は今年もハロウィンの夜を迎えていた。

 エミリア達は現在、街中の警備に加わっている最中であった。


「今年のハロウィンは警備として参加する事になっちゃったか…」


「仕方ないよ。最近はゴミのポイ捨てや路上飲酒等言った、迷惑行為やマナー違反が増加傾向にあって、そのせいで行動の規制や警備の強化等を実施する羽目になっちゃったんだから」


「それで衛兵だけでなく、ギルドの方でも警備の要請が出る事になっちゃったんだよね」


「エミリア達も生徒会の仕事だってある筈なのに、何か悪いな」


「ううん、気にしないで。そっちの方も粗方終わっているから」


「それじゃあ、僕達の方も見回りを始めておこう」


「そうね。フィーナ、貴方も空からお願い」


「はいはい。本当、妖精使いが荒いんだから」


「後でお菓子買ってあげるから」


 そう言って一同は手分けして街の中の見回りをしていくのだった。




 "天の笛"本部、大広間

 メノウはジルティナに屋敷を抑えられた件を問い詰められていた。


「…それで、屋敷で行わていた事が発覚した事で壊滅したと?」


「あぁ、そうだよ。薬の成分とゴーレムのパーツに入っていたロゴで全部バレた。お陰で屋敷を抑えられただけでなく、マーティン達も捕まった。そのせいで商売も畳む事になっちまったし、あそこでの研究も出来なくなった」


「研究については、こちらでも引き続き出来ますが、アルテミシアの貴族の立場を失い、あちらの動向を探る事が出来なくなったのは痛手ですね」


「そうだな。7年前の本物のエミリア王女の暗殺に手を貸してた大臣、アイツにも爵位の昇格の推薦や当時の城の警備の情報等、こっちも賄賂を渡したり、国家転覆を唆したりしたってのにな」


「メノウ、貴方にも今回の件の責任を取って貰う事にもなりますよ?」


「分かってるよ、それくらい。こっちもどうせバレないと胡坐をかいた結果でしかない以上は。で、俺も他の人間を更に取り込んで強化しておくのか?それとも合成獣(キメラ)になっておくのか?」


「いえ、屋敷から出来るだけ多くの研究データを持ち出した事を考慮して、貴方には異動を命じておきます」


「まぁ、一応マシな方か…」


「では、次の部署での仕事で、汚名返上に努めて下さいね」




 アルテミシア王国、展望台

 エミリアは此処のベンチで腰を落ち着かせて休んでいた。


「ふぅ、疲れた~。やっぱりあちこちで羽目を外してる人達が結構いるわね。…此処から見える王都の景色、何処か幻想的ね…」


<えぇ、そうね。皆楽しそうで何よりだわ>


「えぇ、そのせいで迷惑行為やマナー違反が増えて…って、ん?」


 エミリアがその声で隣に振り向くと、そこには少女姿のエミリアの幽霊が座っていた。


<こんばんは、スレイ。久しぶりだね>


「貴方、もしかしてエミリア…!?一体どうして…!?」


<ハロウィンの夜だもん。だから私もそれに乗って、こうして姿を見せたって訳。私以外にも、姿を見せてる幽霊だっている筈よ>


「あぁ、そうなの…。でも、どうして急に私の前に顔を見せに来たの?」


<貴方に今の生活について、ちゃんと話をしておきたいなって思ったから。ほら、王族としての生活って、色々と窮屈に感じちゃう筈でしょ?幼い頃から厳しい習い事の毎日。人の顔色を伺ってばっかりの社交界。生活する度に見えてくる大人の汚い側面等々。こう言うのを幼い頃から経験させられるから、私も毎日が嫌に感じちゃって。だから私も死んだ日からずっと思ってたのよ。こんな窮屈で息苦しい毎日、押し付ける様な真似をして悪かったかなって。そう言う訳だから今の内に聞かせて欲しいのよ、そこら辺の事>


「…それは私だって最初の頃はそこら辺苦労してきたわよ。王族って思ってたより息苦しいんだなって思ってた。でも、後悔はしていない。私が自分で決めた事だから。お陰で温かい家族に巡り会えたし、力になりたいと思った。自分の剣の新たな可能性を見出せた。素敵な縁に巡り合う事も出来た。前の家とも復縁も出来た。そして、女の子として恋をする事も出来た。むしろ今の生活には感謝しているくらいよ。今の私は、こんなにも幸せなんだから!」


<…そっか。どうやら私の心配も杞憂に終わったみたいね。安心したわ。…スレイ・ワーグナー、貴方に私のお姫様としての人生を押し付ける事になった事を、心より謝罪します。そして、私の分まで、王族としての責務に努めてくれて、お父様とお母様、アルベルトお兄様とユフィと家族になってくれて、私の分まで国を愛し、尽くしてくれて、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします>


 そう言ったエミリア(真)もエミリアの前に立って頭を下げて、謝罪と感謝の意を表すのであった。

 その意思を受け取ったエミリアは立ち上がり、エミリア(真)の頭を撫でながら暖かい笑みを浮かべる。


「勿論、そのつもりよ。これからも私の事、見守って頂戴ね」


<むぅ…。何か子供扱いされてるみたいでムカつく…。私の顔でそう言う態度を取るから尚更…>


「仕方ないでしょう?貴方10歳で死んでいるし、この姿も貴方の容姿を引き継いだんだから」


<そこよ!本来ならその姿、私がそうなる筈だったのに、まさか子供の身で殺されるだなんて!しかもスレイ、何か私が想像したものよりもめっちゃ可愛くてスタイルも良過ぎるし!本来の私よりも上回る超絶美少女だなんてず~る~い~!>


「まぁ私だって王女としての品位を勉強しただけでなく、美容にも気を遣ってたし、何より、冒険者として剣と魔法を振るい続けてもいたからね。それで私もこんな風に育っちゃったんだと思う」


<何よそれ~!?同じ姿でも育ち方にこんなに差が出るだなんて~!>


「まぁまぁ…」


 こうしてエミリアとエミリア(真)の他愛ない会話が繰り広げられ、しばらく言いたい事を言って満足したエミリア(真)もその場から消えていくのだった。




 11月頭、アルテミシア学園、生徒会室

 エミリアとカイトは生徒会の業務を行っていた。


「そう言えば、あれから"天の笛"に関する情報入ってこないね?」


「そりゃあ、ウィスブール家の事が私達にバレた上に、取り潰されちゃったからね。この国に関する情報源と研究所、そして資金源が潰れた以上、向こうも大人しくせざるを得ないわ」


「でも、連中だってまだこの国の事、諦めている訳じゃないよね?」


「えぇ、まだ此処の貴族階級に精通しているメノウが残っているし、他の場所にも内通者はいる筈。それに、彼女みたいな人間は、他の国にもまだ存在している。だから、そっちにも情報を流している筈だし末端がいくら潰されても、向こうにとっても痛くも痒くもない。そう時間を掛ける事なく、すぐに体勢を立て直すでしょう」


「そうだよね。僕達も油断せずに色々やっておかないと」


「そうなのよね。向こうの戦力の底が分からない以上、こっちも戦力の当てが欲しいのよね。まぁ、ない物をねだってもしょうがないし、今ある物で何とかやっていきましょう」


 そう言いながら2人は業務を淡々とこなしておくのだった。




 "天の笛"本部、ジルティナの部屋

 メノウはジルティナと、本部に逃げてから今に至るまでの話をしていた。


「うちでやってた研究、此処で引き継ぐ事が出来て良かったぜ」


「いえ、貴方方の研究は我々にとっても有意義な上に、なるべく多くの研究員とデータを逃せてましたからね。これくらい、当然の対応と待遇ですよ」


「で、俺の異動先、マジであそこにするのか?」


「えぇ。貴方の研究者としての頭脳と商人や交渉人としての手腕、そして戦闘能力を活かせる部署ですので、問題ないかと」


「まぁ、そりゃそうだが、エーミアの奴はどうなる?アルテミシア王国の情報源がまだ残ってるとは言え、アイツだって正体がバレたらマズい事に変わりはないだろう?」


「その時はその時です。彼には私だってそれ程期待していませんから」


「まぁそうか。アイツ、詰めが甘い所あるし。んじゃあ、俺もそろそろ行くわ」


 そう言ってメノウは部屋を退室していく。

 "天の笛"の方も、段々と立て直されていくのであった。

小休止、終了。

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