第102話
ファルマータ編第5話。
ファルマータ共和国、市街地
エミリア達は現在、森林公園で一息付いていた。
「それじゃあ、改めて堂々と街中を歩いてみたけど、感想については?」
「はい。この国の人達も活気づいていて、皆生き生きしていますわ」
「そうね。そうやって民達の自由や尊厳を尊重させてあげる事で、その心を成長させてあげる事が出来る。だからこそ、私達の方でも、民達の気持ちも考えられる様にしなくちゃいけないのよ」
「エミリア~。お腹空いた~。お弁当~」
と、フィーナがエミリアの胸元から飛び出してくる。
ちなみに、リーゼロッテがエミリアの揺れる胸元を見て、自身の胸元に視線を落としたが、ご愛嬌である。
「もう、仕方ない子ね。それじゃあ、お弁当にしましょうか」
「そう言えばエミリアちゃん、お料理出来る様になってたのですね?」
「えっ?あ、あぁ~、冒険者やってるとね、現地の食材で自炊する必要が出てくるのよ。それに、潜入捜査をする時にも役立つから、家事スキル全般だって磨いているわ」
「まぁ、そうなのですね!素晴らしいですわ!私も見習いませんと!」
(まぁエミリアの言ってる事は、あながち間違いじゃない。俺もそうしてるくらいだし)
と、アラタも思案しながら2人を見ていた。
「エミリア~、早く~!」
「あぁ、ごめん!すぐ準備するわね!」
と、一同は芝生にシートを敷いて、お弁当箱を取り出して開けた。
「わーい、やったー!それじゃあ、いっただき…!」
と、その時、フィーナが横から網に囚われる。
エミリア達も何かと思って視線を向けると、そこに虫取り網を持った長身美女がいた。
「よっしゃー!珍しい虫ゲット~!」
「ちょっと!私は虫じゃなくて妖精よ~!」
「あの、ちょっ、その子私達の仲間なんで、放して貰えませんか!?」
「え~?分かった~」
と、彼女も渋々ながらフィーナを放し、フィーナもすぐさま警戒モードに入る。
そこに2人の人影が慌てて駆けつけて来る。
「ミオちゃ~ん!勝手にどっかに行かないで~!」
「あっ、お姉ちゃん達!」
「全く、アンタは…!目を離すとすぐこれだ!…って、エミリア王女一行…!?こんな時に…!?」
「あの…貴方方は?」
「やべっ!…コホン。私達は観光でこの国に来た3姉妹でしてね。勝手に何処かに行った妹を探してた所だったんですよ。あっ、申し遅れました。私、長女のレーナ。こっちの水色の子は次女のベアトリス。そしてこの虫取り網を持ってるのが、三女のミオです」
「改めまして、ベアトリスと申します」
「ミオだよ~!よろしくね~!」
「…?次女はともかく、長女と三女、見た目逆じゃないの?」
「そ、そうなんですよ~!よく言われるんです~!私、26歳なのに身体の成長が遅くてよく子供と間違われて、ミオも身体の成長が早くて、10歳ながらこんな見た目になっちゃって!」
「10歳!?こんな色々と立派な身体付きなのに!?」
「えへへ~、凄いでしょ~!」
ベアトリスの方もコッソリとレーナに耳打ちをする。
「どうするの、姉さん?エミリア王女一行に出くわしちゃったわよ?」
「仕方ない。こうなったら自然な感じで離れるしかない」
そしてレーナとベアトリスはエミリア達に向き直って話を続ける。
「此度は私達の妹がご迷惑をお掛けしました。では、私達はこれで…」
そうして3人がその場を去ろうとした所に、アラタが呼び止める。
「ちょっと待て!さっきエミリア王女一行と言ってなかったか!?俺達はまだ名乗っていない筈だぞ!?」
アラタの言葉で冷や汗ダラダラのレーナは、アラタの方を向いて言葉を絞り出す。
「…いやですね~。アルテミシア王国第1王女、陽光の姫君エミリア・フォン・アルテミシアと、その恋人の勇者の末裔、星空の勇者アラタ・ホシミヤは有名人ではありませんか~。貴方方の事を知らぬ者なんて、いる筈ないでしょう~。おほほほほ…。では、これにて失礼しま~す…」
と、レーナは3人は離れていき、アラタもその背を怪しみ続けるのだった。
路地裏
レーナはミオに説教していた。
「アンタねぇ、勝手な事するんじゃないって言ったわよね?」
「ごめんなさ~い…」
「それで姉さん、これからどうするの?」
「大丈夫。さっき冷や汗かいたけど、上手く誤魔化せた。だから支障はない。このまま宮殿へ向かうよ」
「了解よ」
「は~い!」
「ミオ、アンタも勝手に何処かへうろつかない事。後、間違ってスポンサーを襲わない事」
「やだな~、レーナお姉ちゃん。ミオの事、そんなに信用ない~?」
「してないから言ってるのよ」
「何だよ~!ぶぅぶぅ~!」
「何やってんだよ、お前ら」
急に聞こえた男の声に3人が振り返ると、そこにヴァーリ(ファムと合体中)がいた。
「あら、ヴァーリ君。貴方も来てたの?」
「隊長からの命令でな」
「ヴァーリ君がファムちゃんの体を動かしているって事は、ファムちゃん寝てるな」
「そうだよ。僕らの融合は片方が寝ている間、もう片方が相方の体を動かす形で交代出来る様にもなってる仕様だからな」
「ホント便利だね~。ミオもお姉ちゃん達とやってみた~い!」
「私は良い。大人の身体は疲れやすいし」
「ミオちゃん、そうやってだらけようったってそうはいかないわよ。ちゃんと自分で身体を動かす」
「ちぇ~。いいじゃん、別に~」
「そんじゃあ、僕らは先に行くから、お前らもちゃんと来いよ」
そう言ってヴァーリは高く跳んで、屋根伝いにその場を去っていった。
そうして宮殿の正面玄関に降り立ったヴァーリは、頭に手を添える。
「ほら、姉さん。宮殿に着いたから、起きて分離」
「ふぁ~い」
と、起きたファムも首を出してヴァーリと分離。
音を鳴らしながら首を振る。
「ふぁ~、よく寝た~」
「ほら、姉さん。とっとと仕事を終わらせちゃおうよ」
「そうだね~。ダブリスの件で隊長からも怒られたし、アタシらもちゃんとやっとかないと~」
2人が足を進めようとしたその時、目の前からリオンが走ってくる。
「エミリア様~!そんな酷いです~、私の事を放置だなんて~!…って、あれ?貴方方、此処は宮殿ですよ?見た所、関係者ではない様ですが?」
「…ちっ!面倒なのに見つかった…!仕方ない、黙ってて貰うか!」
と、ヴァーリが腕を振るって風の刃を飛ばすが、リオンはスカートの下の太もものホルスターからナイフを取り出し、風の刃を斬り裂いてその場で霧散させた。
「いきなり人様に向けて魔法を放つだなんて、いささか礼儀知らずではありませんか?」
「クソ!エミリア王女一行がいない内に王達を殺そうと思ったが、とんだ伏兵がいた!」
「成程、暗殺者でしたか。でしたら私も、相応のもてなしをさせて頂きます」
ヴァーリとファムも、運悪くリオンと戦闘を繰り広げる事となった。
市街地
ベアトリスと一緒に走っているレーナは、何処かに行ったミオを探している最中だった。
「あのガキ…!勝手な事するなって言った矢先に…!」
「姉さん、悪態ついてないで早く見つける!」
「分かってる!急がないと…!」
「あら、レーナさんにベアトリス?」
と、声のした方へ振り返ると、そこにエミリアとアラタがいた。
「2人だけなの?ミオは?」
(マズい…!この2人は勘が良い方だからな…!ここは正直に言っておこう…!)
「あの子、目を離した隙にまたどっかに行っちゃって、急いで探している最中なんです」
「そうなのか。俺達も一緒に探そうか?」
「いえ、結構です…。所で、他の皆さんは?」
「あぁ、リゼが私達に気を遣って、2人切りのデートを楽しんできて下さいって言ったので」
「それで彼女の事をアイツらに任せて、俺達は別行動を取っているんだ」
「へぇー、リーゼロッテ様も粋な計らいをする方なんですね~」
「そう言う事でしたら、どうぞお2人で楽しんできて下さい。あっ、ミオちゃんを見つけたらよろしくお願いしますね」
「あぁ、分かった」
「お2人もミオが見つかるといいわね」
「はい、ではまた」
そう言ってエミリアとアラタは背を向けて歩いて行く。
(…しめた!これは組織にとっての邪魔者2人を潰せるチャンス…!先ずは星空の勇者から…!)
そしてレーナがナイフを取り出し、アラタの背中目掛けて走る。
「あっ、そうそう」
と、アラタが振り返った拍子にアラタの足がレーナを躓かせて転ばす。
その拍子に手放したナイフがレーナに当たりそうになるが…。
「危ないな、ナイフを持って走るだなんて。うっかり大怪我したらどうするつもりだ?」
(野郎…!)
運良くナイフはレーナに当たらず、地面に突き刺さった。
「今、リーゼロッテ様って言ったか?エミリアはリゼとしか呼んでない筈だが?例え細かい事でも気になり出したら、夜も気になって眠れない性分でな」
「い、いやですね~。先程貴方方と一緒にいたのを見たではないですか~」
「おかしいな?確かにリゼと言う呼び方は女性の物だが、あの場には女は大勢いた。その中からピンポイントでリーゼロッテ・フォン・リリネットの愛称だと特定出来るのは、事前に俺達の近辺調査でもしてない限り、不可能な筈だぞ?」
『っ!まさか…!』
「お前が俺とエミリアの名前を口にしていた時点で、俺達はずっと怪しんでいた。だからカイト達に頼んでリゼを安全な場所へ移動させ、こうしてお前らを探しに来た」
「あの子には悪いけど、本名からの愛称を使って鎌をかけてみたらビンゴ。見事に引っかかってくれたわ」
「大方、お前らは"天の笛"の双性者だろ?長女の子供の成りと、三女の大人の成りも、融合によるものなら話が早い」
「どうせこの国に来たのも、会議場の襲撃でしょう?そんな事させないわよ」
そして速攻でエミリアはベアトリスを魔力ブーストで蹴り飛ばし、アラタもレーナを魔力ブーストで投げ飛ばす。
2人は人気の無い空き地に墜落し、飛行魔法で追ってきたエミリアとアラタも着地する。
「それじゃあ、俺達も始めるとしようか」
「えぇ。手早く終わらせましょう」
「仕方ない…!ベアトリス、やるしかないよ!」
「分かってる!」
ミオについては、森林地帯で虫取りをしている最中に襲ってきた男達を返り討ちにした直後だった。
「む~、おじさん達弱すぎ~!ミオ遊び足りないよ~!」
「なら、アタシが遊んでやるよ」
と、声のした方を振り返ると、レオニーが歩み寄って来ていた。
「ガキ相手は気が引けるが、仕方ねぇ。相手してやるよ」
「わーい!お姉さん、ミオと遊んでくれるの~?嬉しい~!」
レオニーの方も、ミオとの会敵を済ませていた。
こうして、ファルマータでの戦いの火蓋が切って落とされた。
この国での戦闘が始まる!




