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古川さん達のバンドの演奏が終わった。私達はこれの次の次だから……まだもう少し時間はある。
とはいえ裏で準備整えないといけない。私と高橋さん以外は既に裏の方に待機して、準備に向かっている。私も……と思ったけど、「同高なんだか労いの言葉言ってあげな」って言って高橋さんと一緒に、古川さん達を迎える事になった。
……私、古川さん以外とはそんなに親しくないんだけど!? って思ったけど折角の親切心を断れるはずもなく……こうして高橋さんと一緒に待ってる次第な訳よ。
「おつっ、おつか──」
「中谷様! お疲れ様です! 素晴らしい演奏でしたわ!! ……他の方達もお疲れ様ですわ」
「健司以外が雑だね高橋さん!?」
ああー私の声かき消されたー。いやいいんだけどさ、私声小さいし動きもその、ショボいし。
にしても演奏終わってからすぐに駆け寄るの、最初から無かったけど全く隠す気ないな高橋さん。態度の差も激しい……! 普通と熱愛の差が、ほらぁー他の男性陣苦笑いしてるじゃん!!
仕方ない。私の方で労わって……いたわ、労わう? 私が?
「あっ、あのっ、あのあのあのっ……」
「大丈夫永井さん!? 緊張ですんごい震えてるけど!?」
「……使う?」
「淳さあ、すっとエチケット袋出すのやめなよ」
淳さん、だっけか……とりあえず差し出されたエチケット袋を受け取っておく。いざって時はここにぶちまけないといけないからね! もう自分で携帯しておいた方が良いんじゃないかなって思わなくはないけど、まあうん……そうね……。
「で永井さん、私達の演奏どうだった?」
健司さん、だっけか……の方に迫りまくってる高橋さんを置いて、古川さんが私にそう話を向けてきた。
どうだった……ってことは、感想を求められてるってことだよね。
うぅん、どう答えるべきか……ここは素直に言った方が良いか。
「きっ、とても、キラキラしてました……歌詞とか、古川さんの歌声とか……」
「本当!? ありがとう永井さん!!」
「うわえいっ」
だっ、抱き着いてきた!? なんかこう、JKってのは嬉しくなるとすぐ抱き着いてくる気がするなあ……あれっ、私はJKじゃなかった……? 前世の記憶引きずりまくってるから中身はそうだね。
でも実際、本当にキラキラしてるというか……青春! って部分だけを凝縮したようなのを見せられた感じがしたんだよね。明るい、あまりにも……世界が、世界が違いすぎる……。
古川さんの後ろで男達が私の感想を待っているのが露骨にわかる。なんでみんな私からの感想が欲しいの!? 私、自分のギター以外てんで駄目な人間よ!?
「あっ、えっと……とても、き、聞いていて……詰まるところも無かったし、よかっよかったと……思います……あの、上手かった、です……目立つミスもな、無かった、ですし……」
「ハッ、ったりめぇだ」
「おっ、淳嬉しそう!」
「……当然」
私の言葉に男三人も嬉しそうな様子。
ちょっと緊張してるのが目立ったけど、許容範囲。場数を踏んでいけばこのハコでも十分やっていけるくらいではあると思う。何より時間通りに来て時間通りに演奏終えたし。ここ本当重要、バンドマンとしてマジで重要。時間を守らないバンドマンが一体何人いることか……!!
……高橋さん、何その目。すっごい怖い目で睨みつけてくるんだけど!?
「……私も健司様を褒めましたのに」
「あ、あはは……」
高橋さんの視線に曖昧な笑みで返すしかない。いやね、多分だけどそういう目とは別だと思うよ中谷さんが私に向けてるのは。だから私に嫉妬しないでほしいな高橋さん。
プロとアマとかそういう感じだと思うよ、私からの感想は。まあ今の私はアマチュアだけど。
ただ、掛け値なしにもう少し練習量増やしたら一気に化けそうな気配はしている。私より二時間少ないくらいの量練習したらグングンと上達すると思うんだよなあ。
っと、一曲目終わろうとしてるな!? そろそろ準備に取り掛からないと不味い……!!
「たっ、高橋さん……そろ、そろそろ準備を……!!」
「あっ、そうですわね……では健司様、ごきげんよう。私達の演奏も、ぜひ見て行ってくださいませ!!」
「……ああ。絶対目を離さねえよ」
「あっ、まっ、まままま……!! ええ、す、すっごい演奏をしますので、絶対! ご期待に添える演奏をしてみせますわ!!」
中谷さんの言葉に高橋さんがバグった! 私みたいな口調になった……へぇ、珍しい。こうなるんだ高橋さん。
もう少し眺めていたい気持ちもあるけど、急がなきゃ三人に迷惑がかかっちゃう!
高橋さん……悪いけど引っ張って連れて行くよ!!
「い、行きますよ……!!」
「え、ええ……」
「永井さん!!」
高橋さんの手を引っ張って楽屋へと急ぐ私の足を、古川さんが止めた。
「……楽しみにしてるから!」
「はっ、はい!!」
古川さんの声に頷いて答えて、急ぎ足で楽屋へと向かう。もう一曲目が終わってMCしはじめた……!!
ほぼほぼ転がり込むように楽屋へと入る私と高橋さん。みんなもう準備終わってるっぽい……あわわ、早く、早く準備進めなきゃ……!!
「おっ、遅れてしまい申し訳ありません!!」
「すぐに準備いたしますわ!!」
「焦らなくていいよーみちるん、まだもうちょい余裕はあるし」
「連続でトラに入っても大丈夫だから、時間は全然余裕ある。ひとみの方はこっちで終わらせておいたし」
高橋さんのギターに刺さったシールドを抜きながら、谷野さんがグーサインをする。
谷野さんナイス!
チューニングは好みがあって、個人によってはあえて外すよう調整することもあるけど……最初は教科書通りのやり方が一番。クセを出すのはもっと慣れてからでいいからね。勝手にしておいても演奏に支障はない。
「あっ、ありがとうございます谷野さん……谷野さん、ギターの方も詳しいんですのね……」
高橋さんが驚いた様子で谷野さんからギターを受け取りながら言った。
確かに出す音はギターと全然違うけど、ベースもまたギターの一種。基本的なチューニング方法は一致する部分も多い。というか元々エレキギターやってたのに、ベースやる人がいなくて仕方なくベースやってるって人も割といるからね。
……やっぱみんな、花形であるギターをやりたいからねぇ。
最初からベース行くのはかなりの変わり者だからね。
っと、私は自分でやらなきゃいけないから準備しないと……。
「エフェクターよし、シールドよし、電源タップとケーブルよし、予備の電源と電池よし。……チューニングもすぐ終わらせます」
「永井さんって毎回指差し確認してますわよね」
「ああやると確認の取りこぼしが無いからねー……ついつい面倒くさくてやらないけど」
よし、必要なものは全部持ってきてるね。まあ無くてもレンタルは出来るけど、やっぱ使い慣れたものが一番だからね。
……って、なんでこっちのほうじっと見てるんだろりんさんと高橋さん?
「毎回やる生真面目さ持ってる人は普通バンドマンやらない」
「それはものすごい偏見だと思いますわよ!?」




